INTERVIEWEE

and factory株式会社 代表取締役社長
小原崇幹氏

東洋大学出身。在学中に1社目を起業。その後、複数社の経営経験を経て2014年にand factoryを設立。

 

株式会社アトラエ 代表取締役
新居佳英氏

上智大学理工学部出身。草創期のインテリジェンスに入社後。同グループ子会社の社長を経験。その後、現在のアトラエを設立。『世界中の人々を魅了する会社を創る』をビジョンに掲げ、全ての社員が誇りを持てる組織の創造にこだわり続けている。

 

2018年、創業からわずか4年という圧倒的スピードでマザーズ上場を果たした、スマートフォンアプリ事業とIoT事業を手掛けるand factory株式会社。wevoxを導入し、エンゲージメント経営にも注力する同社は、年間売上を前年比2.5倍に伸ばす(2017年7月と2018年7月時点の比較)など急激な成長を続けています。同じく2018年に約40人という少人数での東証1部上場を果たした株式会社アトラエ。エンゲージメントを重視し、目覚ましい活躍を続ける2社の代表が、エンゲージメント経営への思い、会社の成長の本質、現代の経営者に求められる姿勢などを語り合います。今回はその前編をどうぞ!

人事施策への投資は目に見えてメリットのあるコスト

新居今日は4年というスピードでマザーズ上場を果たしたand factoryの社長の小原崇幹さんと、エンゲージメントを重視した経営を中心に話していきたいと思います。

小原よろしくお願いします。この対談を通じて、私も色々と勉強させてもらえればと思います。

新居こちらこそ、よろしくお願いします。まず、and factoryがどういう成り立ちの会社なのか、教えてもらえるでしょうか。

小原創業は2014年で、スマートフォンアプリの開発事業を手掛ける会社としてスタートしました。私が「一緒に会社をやりたい」と思う仲間に声を掛けて、10人くらいで起業しています。だから、創業メンバーはみんな友人。もともと、起業に対する思いが「信頼できる仲間と会社を作って、チャレンジしたい」というところから始まっているんです。

新居そうなんですね。じゃあ、必然的に最初から結束力はある組織だった。

小原そうですね。だから最初の1年は、特に組織づくりとかエンゲージメントといったものは気にしていませんでした。しかし、事業が伸び始め人数が増えていく段階で、組織運営の仕組みも整えていく必要が出てきた。

新居友人じゃない人たちが増えていく中で、どう組織としてまとめていくかを考えるようになったんですね。

小原新しく入る人からすれば、創業メンバーの輪が強すぎると入りづらいと感じることもあります。だから、その輪にすっと入れて、居心地のいい会社だと思ってもらえるにはどうすればいいのか、すごく考えました。

新居「wevox」を導入していただいていますが、他にも色々な人事施策を行っていますよね?

小原昼食が毎日タダ、つまり会社の経費で食べられる制度や経営陣とランダムでランチに行く「シャッフル1on1」など色々とやってますね。そのあたりは創業メンバーでもあり人事担当の執行役員の梅谷雄紀がwevoxを活かして社員の声を拾いながら、企画、実行に尽力してくれています。wevoxは2017年から導入して、今では組織づくりにおいては欠かせない重要なツールとなっています。

新居ありがとうございます。

小原ベンチャー企業は、wevoxをみんな導入した方がいいんじゃないかと思っているぐらいです。ベンチャーは人数が少ない分、経営陣と社員の距離感が近い良さがある。でも、逆に近すぎると言いづらいってことも多いじゃないですか。それが、こうしたツールを使うと、ストレートに言いにくいことも言える。ツールを通すと1.5倍くらいの強さで、言いたいことを言ってくれるので、経営者にとっては逆にありがたいんです。

新居対面で話すより、こうしたツールを介した方が言いやすいことはあります。

小原 ベンチャーのように、変化のスピードが早い環境にいると、いろんなイベントが起こるんですよね。マザーズ上場もその1つでしょうし、新たなサービスのスタート、新規チームの創設いろんなことが起こります。そうした中で、社員がどう考え、何を思っているか、定点観測しながらコミュニケーションを取っていかないと、会社は成長しづらいのかな、と思います。コミュニケーションが足りないと、離職率にも影響して、結果的に経営資源のダメージになって、採用、教育コストが増えたりする。だから、wevoxのようなツールは経営側は投資コストだと考えて、絶対に入れた方がいいと思うんです。

新居採用コストはたくさんかけるのに、退職者を防止するコストをかけない会社が多いのは事実です。

小原人事施策の多くはメリットが目に見えづらいコストなので、投資したがらない経営者が多いのだとは思います。でも、実際はちゃんと目に見える形でメリットが生まれるコストなはずなんですよね。事実、弊社はwevoxや様々な人事施策の積み重ねによって、離職率は1.5%という結果になっています。その分、採用や教育のコストをかけずに済んでいる。これって、まさに目に見える形でメリットがあるコストですよね。

新居おっしゃる通りです。

小原だから、本当にもったいないと思うんですよね。採用、教育コストにばかりお金を使っている会社を見ていると

新居:「辞める人は辞めるから、努力しても仕方がない」と考えている経営者が多いのかもしれません。最初から諦めてしまっている。実際は、1人優秀な人を採用するよりも、社内の優秀な人が1人抜ける方がダメージがでかいですからね。社内の情報、業務への知見を持っている人が抜けて、外から同じ能力の人を採用したとする。能力は同じだったとしても、組織に馴染み、信頼関係を作ってパフォーマンスを発揮するまでは時間がかかります。そうしたコストを考えないといけない。

小原やっぱり経営者はPLに描かれている数字を一番気にするじゃないですか。そこに書かれているコストだけを見て、経営判断をしてしまう。我々からすれば、wevoxにかかるコストはPLには書かれてないけど、すごくやる意味があると声高らかに言えます。

福利厚生より大切なのは「社員を大切にする」経営者の思い

新居1つ気を付けてほしい点は、wevoxは導入しただけで組織が良くなるというものではないんです。あくまでも診断をするツール。人間ドックを受けたからといって、いきなり健康になるわけじゃないですよね。検査をきっかけに、食事制限をしたり、運動をしたり、というアクションに繋げていく。wevoxも近くて、エンゲージメントスコアを見て、組織状態を把握した上で、じゃあどうしようかと話し合って、アクションを起こすことがとても大事なんです。

小原「スコアだけを見ても意味がない」というのは我々も最初から考えていました。スコアを見て、色々な課題が出てくるのですが、簡単に解決できるものもあれば、すぐにはできないものもある。何を優先して解決して、どういうアクションを起こすか。その判断のスピード感は経営層も持っておいたほうがいいとは思いますね。

それから、何か1つの人事施策で全てが解決できるわけではない、というのも最近感じます。様々なアクションが積み重なって、and factoryの居心地の良さに繋がっている。常にアクションを検討し、継続して運用できる体制づくり、環境を用意することが、経営者の役目として重要なのでないでしょうか。

新居その考え方は、すごく大事だと思います。社食制度、シャッフルランチなどは詰まるところ方法論です。大切なのは、経営者が社員を仲間だと思って信頼したり、社員が経営者からの愛情を感じて、頑張ろうと思えたりという関係性がベースにあるかどうか。社食だって、大企業の資本があればいくらでもできるはずですし、実際やっているところもあります。じゃあ、そういう企業が総じてエンゲージメントが高いかと言えば、そうではない。

小原福利厚生がいい会社だったら、いっぱいありますからね。でも、離職率は我々より高いところもあります。

新居だから、方法論よりも大切なのは、どういう組織にしたいかというコンセプト。アトラエの場合は「世界中を魅了する会社」というコンセプトがあって、それを具現化するための手段として、色々な制度があります。

小原ちなみに、新居さんはアトラエのような会社を作ろうと思ったきっかけってなんだったんですか?

新居:就職活動をしていた頃、その当時の僕はどの会社にもワクワクしなかったし、とてもつまらなそうに見えていました。それなら楽しく働ける会社を自分で作っちゃおうという思いからです。スポーツチームやアーティストの集団にいる人たちはすごく楽しそうじゃないですか。それが、会社という枠組みになった途端、労使の関係になって満員電車に暗い顔をして乗っているなんて状態になっちゃう。もっと楽しく働ける会社って作れないのだろうかと、ずっと考えていました。だから、チームでビジネスをやりたかった、という思いが背景としてあります。

小原アトラエの創業当時は今みたいにGoogleのような先進的な働き方がフィーチャーされることもないですよね。

新居ないです。いい会社といえば、商社、銀行、証券会社、コンサルみたいな時代です。どこ行っても、サラリーマンはみんな目が死んでる。そういう世界に、自分が理想とするチームを作ろうと思ったんです。分かりやすく言うと、スラムダンクの湘北高校みたいなチームをどうやったらビジネスの世界で作れるのかという発想です。

小原チームとしてのビジネスというのは、私も共通しているかもしれないですね。そもそも友人同士で会社を作ったのもそうですし、居心地のいい関係の中で、やりたいことにチャレンジしようっていうのが根本にありました。

労使関係で捉える組織構造は、限界にきている?

新居最近はエンゲージメントという概念の重要性を色々なところで語っているのですが、小原さんは経営的なメリットとしてはどのような点があると考えていますか。

小原我々の事業は、AIを駆使していたりはしないので、その分人の熱量がそのまま結果に繋がりやすいと思っています。アプリ開発や運用など人の力で行っている。そういう事業をやっている中で、従来の労使の関係性で働かされていると社員が思っていてはパフォーマンスは落ちてしまう。上から頑張れと言って、伸びるような事業ではないんです。高い売り上げ目標があって、それぞれの社員がなんとかしよう、頑張ってクリアしようと自分なりにチャレンジできるかが、会社の成長に繋がっていく。そういう思いを生み出すものが、エンゲージメントなんだと思っています。だから、エンゲージメントを重視することは生産性に直結するし、経営的なメリットはすごく大きいと私は考えています。

新居実際、and factoryはすごい勢いで売り上げを伸ばしています。それは、個々の社員が自分の思いで達成しようと、必死に動いた結果だということですよね。決して、経営側がやらせたわけではない。

小原はい。そうでないと、この成長率は達成できないと思うんです。本当に、みんなが一生懸命取り組んでくれたからこそのこの結果です。私が何かオペレーションの仕組みを作って、その中で働いてもらった結果では決してない。

新居小原さんは、社員との関係性を労使関係で考えてない。チームとして考えているベースがあります。そういう経営者は、まだまだ少なくて労使関係の概念をベースにしている経営者が多いのが事実です。

小原そう思います。

新居しかし、個人的にはこの労使の構造は限界に来ていると思っています。そもそも労使関係って、労働者と経営者の利益が不整合なんですよ。労働者側は、労働の対価にサラリーをもらいますよね。ということは、労働を最小にして、対価を最大化するのが合理的。3時間で100万円か30日間で100万円だったら、当然前者の方がいい。

小原すごい、分かりやすい。

新居でも、経営者は逆です。安い賃金で、たくさん働いてもらった方がいい。「60日間で100万円にできないか」っていう観点で物事を考えている。

小原すごく相反していますよね。

新居その相反しているものを、どう騙し騙しやっていくかがこれまでの労使関係。だから、経営側は労働者を管理したがるわけですよね。ノルマだなんだとか、何時から何時までは会社にいなさい、とかプレッシャーをかける。そんな環境で、生産性が上がるはずがないんですよ。決まり切ったオペレーションを必要としない知識産業である、我々のようなIT企業は特に気を付けなければいけません。

だから、経営者、社員は使役関係じゃなくて、同じ目標に向かってチャレンジする仲間なんだ、1つのチームなんだという発想の転換が必要です。経営者は社員が生き生きと楽しく働いて、最大のパフォーマンスを発揮できる環境を用意する役割なんだ。このような組織運営の発想が必要で、どれくらい実現できているかどうかを測る指標がエンゲージメントなんです。

小原本当に、そうだと思います。今までは、労使の関係でも、労働者側が我慢することが圧倒的に多かった。でも、今はネットがあるから、労働者側も意見を言いやすくなったし、さらにwevoxのようなツールがあれば、どんどん経営側に意見を言える。

新居まさに、時代が急速に変化していく中で、今お話ししたような資本主義の行き過ぎた局面が表面化してきているように感じます。そもそも会社を作る目的って、「売り上げを上げよう」とか「利益を最大化しよう」ということだけじゃないと思うんですよ。それだけを目的に会社を作った人って、本来いないはずなんです。

小原確かに、そうですね。

新居私はよく売り上げ、利益っていうのは会社にとっての血液のようなものだと例えているんです。自分たちが実現したいビジョンのためには、血液、つまりキャッシュが必要。でも、血液を最大化するためだけに会社を運営するのは違う。社員やお客様、株主など会社に関わる人たちの幸せを最大化するために、血液を調達するっていう意識が大事です。

小原調達がゴールじゃなくて、そこから何をするかが大事っていうことですよね。

新居どれだけ輸血パックを持っていても、社員、お客様、株主、誰かが不幸だったら意味がない。もちろん、誰か特定の人の幸せだけを追求してもダメ。

会社は、全ての関わる人を幸せにするための仕組みですから。

(後編に続く)

ABOUT COMPANY企業情報

and factory 株式会社

主な事業: SmartPhone App Division / IoT Division
設立年月日: 2014年09月
従業員数:76名(2019年2月現在)

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