INTERVIEWEE

株式会社ソニックガーデン 代表取締役副社長 COO Co-Founder 藤原士朗氏

プログラミングに出会ったのは高校生。すぐにプログラミングに傾倒し、その流れで情報系の大学へ。2004年度にTIS株式会社に入社。アジャイル開発のプロジェクトを経験した後、2005年12月に社内SNS:SKIPを自社向けにリリース。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」に参画、このタイミングでプログラマからマーケティング・営業へとジョブチェンジ。2011年、TISからのMBO(経営陣買収)を行い、ソニックガーデンを創業。代表取締役副社長(COO)に就任し、現在に至る。

ソフトウェア開発を手掛ける株式会社ソニックガーデンは、2016年から全社員完全フルリモートでの働き方を続けている、まさにwith/afterコロナ以降の「ニューノーマル」の先駆け的な企業。社員数44人、全国18都道府県に社員が点在するユニークなこの会社はどのような組織運営の哲学を持っているのでしょうか。代表取締役副社長/COOを務め、社内業務の仕組み化を推進する藤原士朗さんに、ニューノーマル時代を生き抜くための組織づくりの秘訣について伺いました。

社長自らが率先してリモートワーカーに

―マイク完備に、カメラ映りを計算した壁紙の構図…さすがフルリモート企業で働くだけあって気の配り方のレベルが違います。

この壁紙はお気に入りで(笑)、ちゃんと見えるようにカメラをセットしているんですよ。マイクも、相手が声を聞き取りやすいように使っています。あと、長時間のテレビ会議ではイヤホンやヘッドセットは疲れてしまうので、体に負担がない形を探してこうなりました。

実際に音質はすごくクリアで、とても声が聞き取りやすかった 

―2016年にフルリモートになったソニックガーデンでは、日本全国各地に社員が点在しながら、仕事を行っていますね。クライアントとのコミュニケーションも全てオンラインですか?

はい、そうです。ソニックガーデンはソフトウェア開発によって、企業の新規事業の立ち上げや社内業務の効率化などを支援しています。営業から商談、プロジェクト進行中のやり取りも含めて全てオンラインで行っていて、お客様と会うのは年に1回、「祝勝会」と称し打ち上げのタイミングのみです。

―クライアントとのやり取りもフルリモートとは…。そもそも、どうしてフルリモートに切り替えたのですか?

順を追って話しましょう。まず、創業して7人目に採用したメンバーが兵庫県在住で、初めてのリモートワーカーになりました。そのときから6人は渋谷のオフィスで、1人は兵庫県からスカイプで繋ぎっぱなしにして仕事をする、というスタイルを取っていたんです。間もなくして、岡山県在住者が入社してリモートワーカーが2人になった。ただ、そこで少しコミュニケーション面での課題が発生したんです。

―どういう課題ですか?

例えば、2人がスカイプで繋ぎっぱなしにしている状態で、そのどちらかがオフィスにいる誰かに話しかけたとしますよね。すると、誰に話しかけたか分からなくて、コミュニケーションが混乱することが良くあったんです。スカイプの2人同士で話そうとしたのに、オフィスにいる人間が入っちゃったり…。

―リモートワーク黎明期の雰囲気が伝わるエピソードです。

それで、チャットツールを導入したり、コミュニケーションの方法をいろいろと試行錯誤をしているうちに、「あの会社はリモートワークに理解がある」という認知が広まったのか、徐々にリモートワーカーが増えていきました。今だったら「Slack」や「Chatwork」、「Zoom」など様々なオンラインコミュニケーションツールがありますが、当時は数が少なく完全に手探りでしたね。

―そう思うと、今は数年前よりリモートワークへの移行はしやすいのかもしれません。

ただ、やはりオフライン同士でのコミュニケーションには勝てない部分がどうしても出てくるんですよね。例えば、オフィスのラウンジでの何気ない会話で意思決定がされて、リモートのメンバーに共有されないなんてことが頻発したんです。僕らがオフィスにいて自然にできていることが、リモートワーカーにはできない。情報格差が生まれるし、不満も出ますよね。リモートワーカーが5割ぐらいに増えたころ、社長の倉貫義人が「これではチームとして機能しない。俺もリモートワークにする」と、自らリモートワークに切り替えたんです。

―すごい、社長自ら。

そうすると、リモートワーカーのやりづらさや不満に、社長も気付くんですよ。「昼休みに話して決められても、こっちは分かんないよ」「オフィスで決めたことこっちに伝わんないよ」なんてことを当時は良く言っていましたね。この経験を機に、リモートを前提とした情報共有、コミュニケーションの方法に会社全体を変えていき、2016年にフルリモートに切り替えたんです。フルリモートとはいえ、社員合宿や年に一度大集合する家族会で集まる機会があるので、一度も直接顔を合わせたことがないメンバーはいません。

自社製品である仮想オフィスツール「remotty」を使い、リモートでも何気ない雑談や軽い声かけが生まれるようにしている

―まさに「フルリモートは1日にしてならず」ですね。様々な課題を乗り越えながら、リモートワークに適応していった。

今回のコロナ禍がきっかけとなり、我々のもとに多くの問い合わせや相談をいただいています。ただ、我々も最初から綺麗にリモートワークができていたわけではなくて、多くのつまずきと気付きを経ながら、今のスタイルを確立したんです。

フルリモートの鍵を握るプラットフォーム型組織

―リモートワークへの適応に課題感を抱えている企業にとって励みになる話ですね。徐々にリモートワーク前提の組織体制に変えていったということですが、現在はどのような体制なのでしょうか?

チームとしては大きく2つに分かれていて、1つがプログラマーチーム。プログラマーはスキルによってさらに細分化されるのですが、社員数でいうと9割を占めるソニックガーデンの主体チームです。

プログラマーは基本的に1人が1社のクライアントを担当して、数名がサポートで入るというスタイルを取っています。各々がプロフェッショナリズムを持ち、クライアントに成果を果たしていく。何か問題が発生したり、リソースがほしいときなどに、他社を担当しているメンバーがチームとしてサポートに入る、といった形です。それぞれが顧問として企業に価値を提供しているプログラマー集団と言えば分かりやすいと思います。

もう1つがプログラマーの働き方を支えるプラットフォームチーム。主に経営陣で構成されているのですが、法的な人事制度を整えたり、働きやすい仕組みを作ったりするチームです。その他に若干名、営業職や管理業務を担当する社員がいます。

―プラットフォームチーム、という名前は初めて聞きました。

このプラットフォームという考え方が、実はソニックガーデンの組織づくりの核となっています。この図を見てください。

左側は一般的なヒエラルキー型の組織構造です。マネージャーの下にメンバーがいる。マネージャーは進捗管理と情報収集・管理が主な役割で、そのためにメンバーには「報連相」を徹底させます。マネージャーが情報を管理しているので、透明性は低い。こうしたヒエラルキー型で働くメンバーの感情は、言われたからやるので「受動的」ですし、やらなきゃいけない「プレッシャー」を感じます。そして、マネージャーに対してはどんどん「不満」が溜まっていきます。

―多くの日本企業が抱えているマネジメントの課題ですね。「部下が報連相しない」、「マネージャーから情報が降りてこない」など、どれも良く聞く話です。

一方、ソニックガーデンは右側のプラットフォーム型マネジメントを実践しています。マネージャーの役割はプラットフォームを整備し、メンバーが使いやすいものにすること。情報はプラットフォームで全て共有・可視化されていて、オープン化されています。こうしたプラットフォーム型で働くメンバーは「自発的」に行動するし、プレッシャーが少なく「気軽」に働ける。そして、組織や働くメンバーに対して自然と「感謝」の念を抱くようになります。

―プラットフォームというのは具体的にどのようなシステムを意味するのですか?何か特別なシステムを構築しているとか…?

いえいえ。「Slack」や「チャットワーク」などのコミュニケーションツール、「kintone」「Salesforce」などのビジネス支援ツールなどをイメージしてもらえば大丈夫です。我々も自社で開発したシステムとチャットワークやkintoneなどの外部ツールを組み合わせながら運用しています。何か1つのプラットフォーム、というよりは様々なツール、システムを組み合わせるイメージです。

―なるほど。そのプラットフォームがきちんと機能するように動くのが、プラットフォームチームの役割ということですね。

そうです。例えば、メンバーとクライアントとのやり取りが不透明だったとします。ヒエラルキー型であれば「ちゃんと報告して」と指示をしますが、プラットフォーム型ではクライアントとのコミュニケーションが可視化できる掲示板システムを用意します。その掲示板上でクライアントとやり取りをしてもらえば、「炎上しているな」とか、「褒められているな」とかいちいち報告してもらわなくても分かるんです。

このコミュニケーションはログとして残るので、それがそのまま日報にもなります。だから、「日報を入力して」といちいちリマインドする必要がない。それに、他のメンバーの働き具合が可視化されていることによって、「俺ももっとがんばろう」とか「あのいいやり方真似してみよう」といった形で、自然と成長意欲や相互支援が生まれます。

あと、地味ながらもメンバーの業務の阻害要因となる請求書の発行ですね。月末になると「請求書発行してください」とリマインドするマネージャーが多いとは思いますが、弊社では全て自動化しています。プラットフォーム上のデータをもとに、下書きが自動で入力されて、担当メンバーが各自で確認をして「確認済み」ボタンを押せば、あとは月末に自動でPDFが先方に送付されます。これは、自分たちでシステムを作りました。

―すごい…徹底してますね。

今お話ししたのはほんの一部ですが、こうしてプラットフォーム上で仕事もマネジメントも完結させるのが我々のスタイルです。このような組織運営を行っていることもあり、ソニックガーデンに管理職は存在しません。

ただ、完全にフラットなわけではなく、組織構造をひっくり返したような形で、経営陣が下からプラットフォームによってメンバーを支え、メンバーはプラットフォームを活用しながら仕事をする。これが、プラットフォーム型組織の考え方です。極端な話、経営陣がメンバーをお客様だと思っているところもあるんですよ。

―メンバーがお客様…既存の組織構造とは全く違う発想ですね。業務支援を行う様々なツールを導入している企業は多いですが、うまく機能しない企業というのは…。

それは、ヒエラルキー型の真ん中にプラットフォームを置いてしまっているからです。そうすると、マネージャーが楽をしたり、得するためのツール活用になってしまって、メンバーのための活用にはならないんですよ。だから、「ちゃんと入力しろ」と指示したり、「いちいち入力するのがめんどくさい…」といったネガティブな感情が生まれ、システム不全が発生してしまう。

―ツールがどれだけ優れていても、組織構造やマネジメントがボトルネックとなってしまう。

そうなんです。ただ、こういう話をすると「今さら変えられない」と思う人もいるでしょう。

でも、変えるのではなく「ひっくり返す」ことならできるはずです。従来のヒエラルキー型の組織構造をひっくり返しちゃえば、プラットフォーム型の組織の形はできる。あとは、マネージャーのマインドセットや行動を変えていけばいい。

時間はかかると思いますが、どの組織でも適応可能な組織構造なんです。そして、この組織構造は在宅勤務者の増加やさらなるICTの活用など今後必要とされる「ニューノーマル」な働き方において、最適な選択肢の1つになるはずです。

リモートでも「この会社にいたい」と思う理由

―プラットフォーム型組織/マネジメントによって、ソニックガーデンがフルリモートでも成果を出し続けていることが良く分かりました。もう少し具体的な組織運営についても聞いていきたいです。まず気になるのが、フルリモートで働くメンバーの会社への帰属意識、組織へのエンゲージメントをどう高めていくのか、という点です。

会社への帰属意識は、突き詰めて考えると「その会社にいたいと思う理由」です。自分にとって価値があるから、その会社に所属して、貢献したいと思う。だから、「ソニックガーデンにいる価値」をどう生み出すか、しか我々は考えていません。

そのために我々が何よりも重視しているのが、メンバーにとっての「やりがい」や「成長支援」をどのように提供するか、です。

ソニックガーデンでは「納品のない受託開発」と銘打ち、長期的にクライアントと関係性を築きながらソフトウェア開発で価値を提供するビジネスモデルを敷いています。だから、個々のメンバーを業務時間で管理したり、細かな要件に縛り付けたりはしていません。メンバーが主体性を持って考え、動き、クライアントに提供した価値に応じて、報酬を支払います。

だから、自分の腕が上がれば、今までよりも短い時間で同じ価値を提供できるようになります。残った時間は自分の時間として自由に使ってもいいですし、他の案件を手掛けてもいい。そうやって主体性を持って働けることが、メンバーにとってのやりがいに繋がります。

もちろん、腕を上げるための成長機会もしっかりと用意しています。メンバーが腕を上げれば上げるほど当然生産性も高まるので、結果的に弊社のビジネスモデルもいいサイクルを生み出す。会社とメンバー両者の喜びが一致しているんです。

こうしたサイクルを通じて、メンバーが「あ、この体験はソニックガーデンでなければできないな」と感じてもらえれば、ここにずっといてくれるし、より貢献しようと動いてくれる。エンゲージメントが高いとは、まさにこういう状態を指すのではないでしょうか。

ーはい、エンゲージメントの1つの理想像だと思います。それを実現するための、成長機会についても、詳しく知りたいです。

まずスキルアップという意味では、オンラインハッカソンを毎月開催しています。チームを横断して、エンジニアがみんなで自社サービスとして作りたいものを作るイベントです。他のエンジニアのスキルから学んだり、刺激を受けたりする機会にもなり、まさにお互い磨き合う関係性がこのイベントでは生まれています。業務時間中に成果と直結しないイベントを催すことがマネージャーの役割なのは、ヒエラルキー型とは大きく異なる点ですね。

それから、セルフマネジメントスキルの向上や、キャリア構築の観点で3つの1on1を軸に成長支援を行っています。

ー3つの1on1ですか?

「朝会」「週1の振り返り」「3カ月に1度のYWT」という3つの軸の1on1です。1つずつ説明していきましょう。

まず「朝会」は主に経験の浅いメンバーや社歴の短いメンバーなど、入社したばかりの人たちを対象にしたものです。頻度は人それぞれなのですが、最も高頻度だと毎朝、少なくとも週に2〜3回、朝15分ほどOJT担当と話をします。

話す内容は主に相談で、日々の業務の中での困った点を細かく確認し、なるべく早く解決します。よく上司が「問題があったらいつでも相談して」というのですが、忙しくて、もしくは忙しそうに見えて相談できないことがよくありますよね。そんな時、朝会という定例の場を用意しておけば、相談する側は勇気を持って声をかけなくてよいので、気軽に相談できます。徐々に知っていることが増えて、誰に何を聞けば問題が解決するのか理解できれば、朝会の頻度を減らし、最終的にはなくなります。

その次に行うのが週1の振り返りです。これは全メンバーが行っており、その週毎の取り組みに対して、続けるべきよい習慣と、課題やモヤモヤすることについて話し合います。ここでは言語化が大事です。自分の仕事や状況について話すことで、言語化スキルを身に着けることで、物事を客観的に捉えることができるようになります。この週1の振り返りをそつなく行えるようになると、セルフマネジメントスキルはかなり高まったと言えますね。この週1の振り返りはメンバーの経験値によって、隔週で行ったり、プラットフォームチームは関わらずにメンバー同士で行ってもらったりとやり方は適宜調整しています。

―自分自身で1週間の仕事を振り返って話すことは、確かに高いセルフマネジメントスキルが求められるますよね。そのために、朝会を重ねてスキルを高めていくと。

その通りです。そして、3カ月に一度のYWTで大きな枠組みでの振り返りをします。YWTとは「やったこと、分かったこと、次にやること」の略で、キャリア面談の機能も兼ねているんです。

このYWTには、必ずプラットフォームチームが関与しています。というのも、やはりどれだけセルフマネジメントスキルが高くても、定期的に一定の「圧」をかけないと成長は得られにくくなってしまいます。経験豊富なメンバーのさらなる成長を促す圧をかけるためにも、このYWTは重要なんです。

失敗は個人のせいではなくプラットフォームのせい

―非常に参考になる成長設計です。もう一点、リモートワークにおいては「新人のサポート」も大きな課題となり得るのですが、ソニックガーデンは新卒社員の採用は行っているのですか?

毎年行っていて、今年も1名入りました。

―ということは、その新入社員の方は、今まさに朝会を通じてセルフマネジメントスキルを高めているんですね。

毎朝、OJT担当のメンバーと振り返りを行っています。この時期に話す内容はまだ本格的な業務についてではなく「このツールのログインパスワードが分からないんですけど…」とか「カレンダーの共有について知りたいです」といった何気ない困りごとだったりするんです。

でも、実はリモートだとこの手の質問って特に新入社員はしづらかったりするんですよね。こういう小さな困りごとを放置しておくと、後々どんどん聞きづらくなるし、業務の阻害要因になる。だから、まずは会社のシステムに慣れてもらいながら、困りごとを周りに聞ける土壌を作っていくんです。

―新入社員のオンボーディングとしても非常に重要な要素ですね。新入社員含め、メンバーの心理的安全性の確保ついては、何か工夫はされていますか?

これは、プラットフォーム型組織の考え方に直結するのですが、例えば新入社員が失敗したとしても、それを決して個人のせいにはしません。「失敗が起きるようなプラットフォームに原因がある」という発想を我々は行います。例えばカレンダーの共有ができていなかったら、「そのToDoが漏れてしまう仕組みが悪いね」といった形で話をするんです。

そういうコミュニケーションを重ねていくと、失敗や課題感を気軽に発信しやすくなるし、むしろ発信することで、組織全体のプラットフォームが改善されることに繋がっていく。「自分の失敗が、他の人を助ける糧になる」と思えれば、心理的安全性は高まります。ですから、プラットフォーム型組織には心理的安全性を高めるシステムがもともと備わっていると言ってもいい。毎年新入社員を採用しているのも、思いもかけないところでつまずいたりして、それが逆にプラットフォームの改善にも繋がるからなんです。

―失敗が組織を良くするきっかけの1つとなる発想はいいですね。それから、プラットフォームの改善はずっと続くものだと、今の話から伝わります。

ずっと、毎日続いていますよ。ソフトウェアと同じで、新メンバーの加入や既存メンバーの成長などに合わせ、プラットフォームの形を変えていかなきゃいけない。意外なスキルやキャリアの考え方を持った人が入ってくると、プラットフォームの「器」が足りなくなるんです。だから、新しい人とコミュニケーションを取って、しっかり観察して、その人に合わせて枠を広げていく必要がある。

例えば、最近ソニックガーデンでは新たに「業務ハック」といって、総務や経理などのバックヤード系の業務の効率化、ICT化を進めるソリューションを提供し始めました。これまでは、webアプリやwebサービス開発による新規事業のサポートが主流だったのですが、税理士のご両親を持った子が入ってきて、そういった経理系の業務を改善する仕事をしたいと言ってきたんです。

そのリクエストがきっかけとなり、「業務ハック」という新たな事業が生まれ、プラットフォームの拡張をして、そうした仕事もスムーズに行えることにしました。具体的には、kintoneをベースにJavaScriptによるカスタマイズができて、業務ヒアリングのスキルがあれば顧問型の仕事ができる仕組みを作ったんです。これによって、webアプリスキルが高くない人でも、1つの事業を行えるようになり、働く人の幅が広がりました。

―面白いですね。

あと、心理的安全性や相互理解においては「ソニックガーデンTV」という取り組みも有効的に機能していると思います。タモリさんみたいな司会役とゲスト役が登場して話をする生放送で、毎週金曜日に実施しています。ここでは、経営に関する数字の話もしますし、その週にあったできごとや困りごとを話す雑談&相談もします。

この場を活用して、新しく入る人が自己紹介をしたり、あとミスをしてしまった人が「やっちゃいました」みたいな感じで出てきて、みんなでフォローし合うこともあります。エンジニア同士なので、ミスをしたときの落ち込みはすごく理解できますし、こういう場で温かく消化させてあげることで、切り替えもできるのかなと思います。

ちなみに、何か不具合が起きた場合は、「緊急連絡ボタン」を押して遠隔でもすぐにヘルプを頼めるようになっているので、顧客への対応も迅速に行えますし、緊急時でも孤立はしません。それを経て、落ち着いたところでしっかり消化してあげる機会も作る、といったことが重要なのかと思います。

―聞けば聞くほど、目からウロコの取り組みや考え方ばかりです…。単に「テレワークへの対応どうする」という短期的なビジネスハックだけではなく、根本的な組織づくり、マネジメントの考え方を見直す必要があるのだと痛感しました。

もちろん、我々の組織形態が無条件にいいわけではありません。それぞれの組織に最適な形はありますし、我々にとってはこれが最適解だった、ということでしかない。ただ、今後柔軟な働き方がより加速していく中で、プラットフォーム型組織/マネジメントが役に立つ人たちも多いはずです。

―世界中の誰もが経験していない事態の中、これを機に組織構造や働き方を刷新する動きも生まれてきてほしいです。

リモートワークが増えれば、時間にも余裕ができますから、空いた時間を、組織にいる人同士のコミュニケーションにもっと活かしてほしいと思います。特にマネージャー層の方たちは、メンバーと向き合ういい機会です。振り返りや困りごとを聞いてあげて、チームとしての仕組みを改善していく。これを続けていくだけでも、組織の力はかなりつきます。それに、メンバーもセルフマネジメントスキルが高まり、リモートでも、オフラインの場でも、より主体的に仕事ができるようになります。

個人的には、一人ひとりがしっかりとセルフマネジメントできることが当たり前の世界に、これからは突入していくと考えているんです。そのためには、経験豊富なマネージャー層のフォロー、フィードバックが重要になってきます。本来であれば、マネジメントの「基礎中の基礎」の話ではあるはずなのですが、こうした状況において実は多くの企業がおざなりにしてきたことだったと、浮き彫りになったように感じます。

―リモートがいいかどうかはあくまで一側面でしかなく、セルフマネジメントができるようになる、そのためのマネジメントを着実に行うことがニューノーマルには求められるということですね。それを実現するために、プラットフォーム型組織/マネジメントが有効だと。

そうですね。我々も、こうした事態の中、できる限り自分たちの知見を発信していきたいとは思っています。まだまだお話できていないこともあるので(笑)。

ーまだあるんですね(笑)。ぜひ、また機会を改めてお話聞かせてください。本日はありがとうございました!

取材に協力いただいたソニックガーデンでは、自社サービスとしてリモートワークに最適化された仮想オフィス「Remotty」を提供しています。興味のある方はバナーをクリック!

 

 

(このインタビューは、新型コロナウィルス感染拡大防止のためオンラインで実施しました。)

ABOUT COMPANY企業情報

株式会社ソニックガーデン

主な事業: クラウドで動くウェブアプリケーションの受託開発
オリジナルブランドのソフトウェアの提供
コンサルティング・社員教育および、講演・執筆など
設立年月日:2011年7月1日(創業は2009年5月1日)

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