組織や仕事に対して自発的な貢献意欲を持ち、主体的に取り組んでいる心理状態の指標であるエンゲージメント。wevoxは、定期的なサーベイでエンゲージメントを解析し、組織状態を可視化しています。その解析の裏には、wevox開発チームに所属するデータサイエンティストの存在が。日本の民間企業では未だ数少ないデータサイエンティストである彼は、今までwevoxのサーベイで取得してきた膨大なデータを日々解析し、組織改善に役立つ機能を開発しています。

今回は、昨今、社員のほとんどがテレワークを行っている環境下でも、wevoxでエンゲージメントスコアを順調に上げるも「データをフルに活用し、組織をアップデートさせたい」と語る株式会社ブイキューブの高田さんと今村さんが持つデータにまつわる疑問に対して、wevoxチームのデータサイエンティスト杉山が全てお答えしました。wevoxのエンゲージメントスコアが生まれた背景、様々なデータ解析機能のロジック・活用方法など、盛り沢山の内容をお伝えします!

INTERVIEWEE

株式会社ブイキューブ 代表取締役副社長COO 高田雅也氏

慶應義塾大学院理工学研究科出身。株式会社ブイキューブ代表取締役副社長COO。大学4年時に代表の間下と出会い、当時まだ有限会社だったブイキューブにプログラマーとしてジョイン。大学院卒業後、大手電機メーカーに就職するも間下社長に「戻ってこい」と言われ、たった1年半で退職。2006年にブイキューブの副社長及び管理部門長に就任、”管理系のキャリア” をスタートさせる。2017年にCOOに就任。

株式会社ブイキューブ ピープル・サクセス室 室長 今村亮氏

大手精密機器メーカーに新卒入社し、当初より人事部に 配属される。その後サービス業、メーカー物流会社で、人 事全般とマネジメントを経験し、 2016年にブイキューブに 参加。2017年より人事グループマネージャーを経て 2020 年1月1日をもって現職。 現在に至るまで、一貫して人事の道を歩む。

株式会社アトラエ データサイエンティスト 杉山聡氏

東京大学大学院にて博士(数理科学)を取得の後、株式会社アトラエに入社。同社の1人目のデータサイエンティストとして、組織改善プラットフォーム wevox のデータ分析機能開発を手がける。また、ワーク・エンゲイジメントの第一人者である慶應義塾大学の島津教授と、仕事と余暇の関係についての研究を遂行中。

エンゲージメントスコアは組織状態を捉える最適な指標

高田:ブイキューブ副社長の高田です。本日は、直接wevoxのデータサイエンティストの方から、データにまつわるお話を聞かせていただけるということで非常に楽しみにしておりました。よろしくお願いいたします。

今村:ピープル・サクセス室室長の今村です。日々のwevoxの運用で、いまいちデータを使いこなせていないという課題感を持っていましたので、このような機会は非常にありがたいです。いろいろと教えてください。

杉山:wevoxの杉山です。御社はかなりデータを深く分析されていると聞いています。そのような方々とお話できて、非常に嬉しいです。お二人の目的が叶うよう精一杯お話させていただきますので、よろしくお願いします。

高田:まず始めに、我々とwevoxの出会いについてお話しさせてください。私は経営者として、ブイキューブで働く「人」にずっと向き合ってきました。1年半ほど前に今村がwevoxを持って来まして、それ以来wevoxを使って社内のエンゲージメントを上げる取り組みを続けてきたんですが、データを使った様々な分析機能も、正直使いこなせている自信がなく、「いまいちwevoxの本質を理解できていないのではないか」という考えがずっとありました。どうにかこの状況を打破して、組織をさらにアップデートしたく、本日このような場を設定していただきました。

そもそもwevoxはどのようにして生まれたんですか?エンゲージメントという指標に着目された背景を教えていただきたいです。

杉山:我々株式会社アトラエは「世界中の人々を魅了する会社を作る」というビジョンを掲げて、理想の組織づくりというものを創業以来行ってきました。もちろん当初はエンゲージメントという単語すら知らずに、肌感覚で進めていました。会社として「事業」だけではなく「組織・チーム」をずっと大事にしてきたんです。組織に対する想いは社内だけにとどまらず、活き活きと働ける組織を世の中にもっと増やしたいという想いを持って、wevoxが生まれました。

高田:なるほど。組織状態を捉える最適な指標として、学術的に様々な事実が証明されているワーク・エンゲージメントを選ばれたんですね。

杉山:そうです。ワーク・エンゲージメントは、元々ヨーロッパで生まれた概念で、今や世界中で使われています。我々は事業立ち上げ期から、日本におけるワーク・エンゲージメントの研究の第一人者である慶應義塾大学の島津教授に学術顧問として参画していただき、一緒にプロダクトづくりを進めております。ワーク・エンゲージメントが高ければ高いほど、心身の健康など、主観的な幸福度が上がることが証明されているので、「エンゲージメントが高い組織=人々が活き活きと幸せに働いている組織」という解釈ができ、我々の理想を表せる指標なんです。

キードライバーと小項目で「結果と要因の二重構造」を把握する

今村:そうなんですね。回答者がwevox上で30問の質問に答えたら、エンゲージメントスコアという形で、組織状態を数字で見られるのがすごく助かっているんですけど、9つのドライバーと小項目はどのような視点を持って見るべきですか?

杉山:質問にお答えする前に、エンゲージメントスコアの全体構造についてお話をさせてください。先ほど30問っておっしゃったじゃないですか。実はワークエンゲージメントがどれくらい高いかというのは、3問の質問だけで算出できるんです。

高田:3問?

杉山さん:そう、3問なんです。でも実際は30問聞いている。これがどういうことかというと、結果としてエンゲージメントが大事というのはもちろんそうなんですけど、それはある意味売り上げが大事って言っているのと同じです。売上を向上しようと思ったら、売り上げの裏にある「誰が何をやったのか」といった原因の要素まで把握することが必要じゃないですか。エンゲージメントスコアを測る目的は「組織を良くすること」なので、結果と原因の二重構造まで把握する必要があるんです。

今村:結果と原因の二重構造ですか。なるほど。

杉山:そうなんです。エンゲージメントという結果のみならず、原因も合わせて理解することが重要で、その原因を特定しやすいように、30問ある小項目を9つに集約した概念がキードライバーです。これは、「職務」「人間関係」「組織風土」のように、組織の強みや弱み、それに対する打ち手を考えやすいように小項目を分類し、集計されています。

高田:ちょうど9つのキードライバーの話が出てきたのでお聞きしたいんですが、あの9つはどのように決めたんですか?学術理論を現場に合わせてアレンジしたとおっしゃっていましたが、どういうステップを踏まれたのかが気になります。

杉山:大元となっているのは、「仕事の要求度資源モデル」と呼ばれる理論です。これは「エンゲージメントが一番高まるのは、本人にとってちょっと背伸びが必要な難易度の仕事をしている(仕事の要求度がある)のに加えて、同僚や上司からのサポートがある(資源がある)ときである」という理論です。このモデルで必要だとされている要素の中で、実際に組織改善に活かせそうなものを集めたのがキードライバーです。

高田:そうだったんですね。勉強になりました。最初にエンゲージメントが生産性といった様々なアウトカムと相関性があるとおっしゃってじゃないですか。離職率もそのうちの一つに入りますか?

杉山:おっしゃるとおりです。実際、エンゲージメントが低い人のほうが、高い人に比べて、1年以内の離職率は3倍程度も変わってきます。

今村:3倍も変わるんですね。

杉山:ただ、エンゲージメントスコアと離職の相関性はあるんですが、100%とは言えなくて。例えば、寿退社は離職の一つですが、全然エンゲージメントと関係ありません。また、毎日キラキラしている人が競合他社から引き抜きの話を受けているというケースもあります。一方で、スコアが低い人でも「そもそも仕事というのは一定時間の苦痛を経験してお金をもらうもの」だと考えている人もいるじゃないですか。そういう人はエンゲージメントが低くても、離職は決してしない。

高田:たしかにいますね。仕事の価値観は人それぞれですもんね。

杉山:そうなんです。なので、エンゲージメントが低い人を見つけても、「この人辞めるのか?」ではなく、「なにか悩みを抱えていないか?」「手伝えることはないか?」という視点で接することが重要です。

組織改善の質を高めるwevoxの分析機能

高田:なるほど。バランス分析の使い方も教えていただきたいです。

杉山:バランス分析はどちらかというと、今自分の会社はどのような水準にいるのかを把握するための機能です。原因を深掘りにいくというよりは、自分たちのチームの特徴を知ることに向いています。近しい業種と人数規模の企業群の中の「偏差値」がわかるようになっていて、これはどちらかというと、自分たちのチームの特徴を知った上で対話をしてもらうといったことを狙っています。

高田:なるほどですね。たしかに五角形のバランス図があることで、スコア画面を見るより自分たちの組織の特徴を直感的に把握しやすい気がします。

杉山:加えて言えるのは、例えば、どの企業でも「健康」のスコアは低く出やすく、「人間関係」のスコアは高く出やすいんです。そういった項目の種類ごとに違いがあるので、一概に「このスコアが低いから一番最初に着手すべき」とは言えない。周囲を見て、バランスを考えてほしいという意図もありました。

今村:なるほど。影響度分析についてもお聞きしていいですか?

杉山:組織によって、どの要素がエンゲージメントに大きく起因するかは異なります。先ほど「仕事の要求度資源モデル」のお話をしました。チャレンジングな環境と十分なサポートの両方があると人は活き活きと働けるんですけど、人によって人間関係を重視したり、裁量権や達成感を大事にしたりと、細かいところを見ると違いがあります。同様に組織によってもエンゲージメントを高める項目に違いがあります。影響度分析というのは、蓄積されたデータを元に、「あなたの組織のエンゲージメントに影響を与える項目はこれですよ」というのを教えてくれる分析機能です。

今村:ということは、チームごとに見るといいということですよね。

杉山:そうですね。全社レベルで見ると、いろんな価値観の人がいて特徴が相殺されてしまうので、人数が大きすぎないグループで見るのに向いていると思います。

今村:ちなみに影響度高い項目というのは、業界による傾向はあるんですか?

杉山:最初は僕もあると思っていたんですけど、正直あまりないです。どちらかというと社風や組織風土が大きな変動要因なのかなと思っています。

今村:ありがとうございます。本日の杉山さんのお話で、wevoxでどのようにデータを活用していけばいいのか詳しく知ることができました。

高田:本当にいい時間でした。私は、エンゲージメントは働く人という最大の経営リソースのアウトプットを最大化させる必要不可欠なものだと思っています。ここをデータ化、可視化してくれるwevoxには本当に感謝していて、ようやく最近組織がいい軌道に乗ってきたのかなと思っています。今後データドリブンの組織マネジメント、タレントマネジメントを本格化させていきたいと思っている中で、本日のようにデータについて詳しくなれる機会は非常に貴重でした。「昭和から令和の会社になる」をテーマに、人を大事にしつつ、データをベースにした組織制度を設計していきます。その基幹となるシステムがwevoxなので、今後ともぜひよろしくお願いします。

杉山:「昭和から令和」、最高ですね(笑)。データの価値というのは、データそのものにはありません。データを集めて、分析して、その後の意思決定の質を上げることにあると思っています。意思決定の質を上げた結果、アウトプットが良くなり、組織が良くなります。

実は僕は wevox はめちゃくちゃ夢があるサービスだと思ってまして。多くの人は、起きて活動している時間の半分を仕事に使ってるじゃないですか。wevoxのデータ解析で、人々の多くの時間を「活き活きと働いている」状態にできたら、人間の幸せの量の総和は大きくなる。データを扱う人間として、僕はそんな世界を実現したいと思っています。

wevoxのデータについて、わからないことやもっと深く知りたいことがありましたら、いつでも話に行きますので、また声かけてください。本日は、現場の人の声を直接聞けて、僕個人としても非常にいい機会になりました。ありがとうございました。

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