INTERVIEWEE

株式会社うるる 人事本部 総務人事部 部長 秋元優喜氏

2010年6月に自社webサービス「入札情報速報サービスNJSS(エヌジェス)」の営業として入社し、その後、NJSS事業部長、経営管理部長を経て、現在は総務人事部長。
経営管理部長時代に、インドネシア共和国バリ島にある子会社PT ULURU BALIの設立も担当。

株式会社揚羽 インナーブランディング研究室 室長 黒田天兵氏

2009年4月に新卒で入社し、現在はコーポレートコミュニケーション事業の立ち上げから推進まで行っている責任者。携わったインナーブランディング実績はおよそ200社で、財閥系大手企業から近年注目されている急成長ベンチャー企業まで幅広く担当し、理念浸透・意識改革などのプロジェクトに携わる。

組織開発における1つの指標として注目を浴びる「エンゲージメント」。日本でも、徐々にこの言葉が広まりつつありますが、まだぼんやりとしかその意味がわかっていないという人も多いはず。エンゲージメントとは、そもそもどういったもので、どういったメリットがあるのか。そして、エンゲージメントを高める上でのポイントや難しさはどこにあるのか。 1年前からエンゲージメントに着目し、様々な向上施策に挑戦している2人の探究者の対談を通じて「本質、メリット、難しさ」をひも解きます。

「会社や社会に必要とされている」と実感できるか?

(秋元)今日はインナーブランディングに精通する黒田さんと一緒に、エンゲージメントの本質やメリット、高める難しさなどについていろいろと話し合いたいと思っています。まずは、自己紹介から。私は、株式会社うるるで人事を担当していて、2018年4月から社内に立ち上がった「エンゲージメント向上委員会」の運営責任者も担当しています。

(黒田)私は企業プロモーションのクリエイティブ&リサーチを行う株式会社揚羽で、インナーブランディング事業を統括しています。今日は揚羽自体のエンゲージメントについてもそうですし、インナーブランディング事業を通じて得た知見についてもお話ししたいと思っています。

(秋元)では、さっそく本題に入りましょう。黒田さんが、エンゲージメントという言葉を意識するようになったのはいつか覚えていますか?

(黒田)あるクライアントから、エンゲージメントスコアを測るために「wevox」を使っているという話を聞いたときから意識し始めました。従業員満足度とかモチベーションとか組織状態を図る指標はいろいろあるじゃないですか。エンゲージメントという言葉も数ある指標の1つぐらいに思っていたのですが、wevoxを知ってから強く意識するようになりましたね。1年ぐらい前の話です。

(秋元)私も同じで、1年ぐらい前にwevoxを導入してからエンゲージメントという言葉をすごく意識し始めました。言葉自体は、経営コンサルティング企業のウイリス・タワーズワトソンのエンゲージメント調査に関する記事を読んで知ったのが最初です。

(黒田)エンゲージメントという言葉、人に説明するの難しくないですか? この言葉の意味について、最近すごく考えているのですが、まだしっくりくる定義が自分の中でもされていなくて。

(秋元)わかります。今は、定義が乱立している状態ですよね。私は人に説明するときは端的に「自社に対する自発的な貢献意欲」と言っています。「自発的な貢献意欲」という部分が従業員満足度やモチベーションとは異なる特徴なのかな、と考えているからです。うるるでは2018年3月まで「働く環境改善活動」というものを運営していて、独自の従業員意識調査アンケートを取っていたんですね。その結果をもとに従業員の悩みを聞いたり、場合によってはドリンクサーバーを増やしたりといろいろなことをしました。しかし、それで従業員満足度が少しは上がったかもしれないけど、従業員と会社の成長や絆につながっているのか、と言ったら深い関連性は自分の中で見出せていなかった。それに比べると、エンゲージメントはもっと自発的な行動を促して、従業員と会社の成長や絆につながるイメージを持っています。

(黒田)確かに「自発的な貢献意欲」という言い方は私もよくするんですけど、それだけだと少し足りないのでは、と最近思っています。「社会に対して価値を提供できているか」と社員が感じられることも大事なのかな、と考えているんですね。一番理想的なのは、「会社に貢献し、その結果社会に価値を提供できている」と社員が実感できる状態。もう少しシンプルに言うと「社会と会社に必要とされている」と実感できる状態です。そうした状態になっているかどうかを測る指標として、エンゲージメントがあるという認識です。なかなか、一言で言うのは難しいですよね。

(秋元)難しいですね。でも、「会社への貢献意欲」を「社会への価値」につなげるのはすごく大事ですよね。その結果、業績にもいい影響を与えますから。エンゲージメントが組織に与えるメリットでもあります。

(黒田)「自社に対する」という視点だけで留まってしまうと、極端な話「オフィスの掃除を一生懸命やって、会社に貢献している」という人もOKになってしまう。もちろんそれはそれで、大切なんですけど、そういう人たちばっかり集まっても業績拡大にはつながりませんからね。

(秋元)すごくわかります。うるるは2018年から新卒採用を始めたんですけど、やっぱり新卒社員はエンゲージメントがすごく高いんですね。「会社のために何かしたい」という強い思いを持って入ってきてくれています。その意欲をきちんと社会への価値、ひいては業績に結びつける必要がある。ただ単にエンゲージメントが高いだけでは業績拡大に影響しづらい、と捉えることもできます。「エンゲージメントの高い社員が、活躍し成長できる環境を整える」ことも大事だと、新卒社員と接しながら実感しているところです。

(黒田)エンゲージメントと業績との関係性はもう少し長い目で判断したいですよね。メリットで言えば、エンゲージメントの向上は離職率の低下にダイレクトに影響しませんか?

(秋元)確かに、離職率の低下には直接的に影響しますね。他社の先行調査結果をみるに明らかです。エンゲージメントスコアを計測する過程で不満や悩みを早い段階でキャッチアップできる、というのは離職率を低下させる対策を早期に打てるという意味でも大きいですよね。

エンゲージメント向上委員会には「え?あなたが立候補するの?」というメンバーも

(黒田)じゃあ、どうすればエンゲージメントを上げることができるのか。うるるさんでは、2018年4月から「エンゲージメント向上委員会」というものを立ち上げたそうですね。

(秋元)はい。社長がトップにいて、各組織の管理職以外から1人ずつ立候補で委員会メンバーになってもらい、私が運営責任者として全体を統括するという体制です。各部署の管理職にはサポートとして入ってもらっています。

(黒田)へえ、メンバーは全員立候補制なんですね。

(秋元)はい、これまでは役員・部長が主体となって組織改善活動に取り組んでいたのですが、スコアが低迷した際の対策案がどうしても役員・部長目線になってしまうんですよね。匿名性ですし、スコアだけから原因分析するしかない場合も多いのでやむを得ないのですが。ただ、結局スコアはメンバーの思いが反映されたものなので、メンバーに直接聞いた方が原因は明らかになる。それに、メンバーが「こうしてほしい」「こうしたい」と思っていることが効果的な対策になると思い、ボトムアップ型で組織改善活動を行う体制に変え、やらされ感があってはうまくいかないと思い立候補制にしました。手をあげてくれるかかなり不安だったのですが、いざ立候補を募ってみたら「おお!まさか彼が!!」という人が手をあげてくれたりしたんです。多くの人が組織を良くすることについてとても真剣に考えてくれていて、本当に嬉しかったですね。組織マネジメントについて学べる、というメリットに惹かれた人もいました。

(黒田)素晴らしいですね。やっぱりみんな、いい組織にしたいという思いはどこかしら持っているんですよね。

(秋元)活動内容として、wevoxを使ったアンケートの実施を月1回行っています。以前は独自アンケートを半年に1回行っていたのですが、頻度を上げました。半年に1回だと、問題が大きくなり過ぎていたり、たまたまそのタイミングの状態がスコアに反映されているだけだったりして、改善自体が難しく、また改善策の効果が見えにくかったんですよ。とはいえ、毎月独自のアンケートを実施するリソースもなかった。手間をかけずに組織状態を計測できるツールを探していた中で、エンゲージメントという指標に興味を持ってwevoxを選びました。

(黒田)組織状態の分析ツールは導入メリットは大きいですよね。時間の短縮にもつながるし、何より客観性を持って組織状態を計測できます。

(秋元)そして、wevoxで計測したエンゲージメントスコアをもとに、私と各部署の委員会メンバーでMTGを行っています。実際のスコアを見ながら、どういった課題があるのか、どうすれば改善できるのか、などを話し合うのです。1回につき30分程度行っていて、その場では私が会話をリードしないように気をつけています。それだと、組織づくりの方法を押し付ることになってしまいますから。「どうして低いと思いますか?」「どうすれば改善されると思いますか?」と、メンバーの意見を吸い上げるような話し方を意識しています。改善策を考え、上長の協力が必要であれば課長や部長、役員にサポートしてもらいます。課長や部長、役員には社長から予めこの委員会の趣旨は説明してもらっているので、みなさん協力的です。

(黒田)そこで社長が出てくるんですね。改善策の中には、管理職の協力が必要なものも当然出てきますもんね。

(秋元)そうです。社長がトップにいる体制ですし、本気で組織を良くすることをいつも考えてくださっているので、管理職や役員に「メンバーからこういう改善策が出てきているから、サポートしてあげてね」と言う話もしやすい。

(黒田)なるほど、すごく参考になります。私はまだメンバー巻き込み型の組織改善プロジェクトはやったことがないんですけど、室長という立場になって役職が上がるに連れて、現場の声って聞きづらくなってきているなと実感していたところです。

(秋元)私もメンバー巻き込み型は初めてだったのですが、新鮮な発見が多いです。これまでは管理職や役員の声を聞く機会が多かったんですけど、委員会メンバーから話を聞くと「え、そうだったの?」と気付くことが多々あります。同じ課題を感じていたとしても、管理職や役員とメンバーでは原因を違うもので捉えていたりしますから。

(黒田)そうですよね。私もやってみようかな…。

優れた組織マネジメント施策のカギは「ネーミング」と「コミュニケーション量」

(秋元)揚羽さんは、何か取り組みはされているのですか?

(黒田)揚羽ではまだエンゲージメントスコアの計測は営業部限定で試験的に行っている段階ですし、ありがたいことにスコアが高い状態なので、まだこれといった改善施策はしていません。ただ、今後に備えてエンゲージメントを高める施策についてはめちゃくちゃ研究しています。今日話そうと思っていたのですが、様々な企業の組織マネジメント施策を調べていく中で、効果が表れている施策に2つの共通点を見つけたんですよ。

(秋元)知りたいです。1つ目は何ですか?

(黒田)1つ目は、優れた施策は「ネーミング」も優れている、ということです。例えば有名どころで言うと、ホンダさんの「ワイガヤ」、京セラさんの「コンパ」なんてまさにそうですよね。内容ももちろん大事ですが、それと同じくらい、ネーミングも重要。ユニークで親しみやすいネーミング、施策の方向性やニュアンスが一発で掴めるネーミングが大切です。

(秋元)わかります! ネーミング、めちゃくちゃ大事ですよね。うるるでは、定期的に行なっている全部署・全メンバーシャッフルして10チームに分けた飲み会のことを「飲みゅーん」と呼んでいます。「飲み」と「コミュニケーション」と「コミューン(共同体)」を掛け合わせた造語で、私がめちゃくちゃ考えて作ったものです(笑)。「定期的に交流会やりましょう(飲みましょう)」と言うより、「飲みゅーん、やります!」と言った方が覚えやすいですし、参加しようかな、という気になってもらいやすい。結果的に「飲みゅーん」は3年以上続いていますし、読売新聞朝刊にも取り上げられました。

(黒田)インナーの施策でも、マーケティング的な視点ってとても大事なんですよね。社員のインサイトをくすぐる言葉を使ったり、課題に合った施策を実行したりしないと効果が出ない。

(秋元)本当にそう思います。もう1つの共通点は何ですか?

(黒田)優れた施策のもう1つの共通点は、「社員間のコミュニケーション量を増やすもの」ということです。ワイガヤもコンパも社員同士のコミュニケーションを生み出すための施策です。飲みゅーんもそうですよね。「思っていることを吐き出せる場がある」企業はエンゲージメントが高いんじゃないか、と感じますね。

(秋元)なるほど、勉強になります。私、この対談をするに当たって、黒田さんに聞きたいことがあったんです。揚羽さんはクリエイティブ制作を行っているので、デザイナーやエンジニアなど専門職の方が多いじゃないですか? そうした人たちって「ビジョン実現に向けて組織みんなで何か(業務以外のことも)やっていこう!」というよりは、「自分の仕事をやりたい!自分の業務に集中したい!」という人も結構いませんか? 気持ちはすごくわかるのですが… そういう人たちを組織としてどうまとめているのか、すごく気になっていたんです。

(黒田)私も一人ひとりのことをすべて把握しきれているわけではないのですが、秋元さんがおっしゃったような「組織よりも自分の業務」という人は1人もいないと自信を持って言えますね。

(秋元)え、どうしてそう言えるんですか?

(黒田)揚羽には、デザイナーや営業といった職種に縛られないで「言いたいことは言う」という文化があるんですね。私は営業ですが、デザインの微細な部分に口を出すこともありますし、逆にデザイナーから「営業のヒヤリング甘いんじゃないの?」と指摘されることもあります。逆に言うと、「自分の業務だけやって後はタッチしない」という人は必要とされていない。採用時にそうした組織風土に合うか適性は見ますし、「自分の役割だけで収まらないように」ということは入社後も伝えています。それは、創業当時から変わらない風土ですね。そういう人たちの集まりなので、「組織よりも自分の業務」という人は1人もいない。

(秋元)会社と、働いているみなさんが、同じ方向を向いているということなんでしょうね。素晴らしいです。実は、私たちが新卒採用を始めたのは会社の企業理念やビジョン、弊社で言うとスピリット(行動指針)に共感を持っている人を増やしていこう、という狙いもあるんです。スキルがいくら高い人を採用しても、企業理念やビジョン、スピリットに共感していなければ、ミスマッチで辞めてしまう。人事としては恥ずかしながら、過去にそのような経験をしたことがあります。だから今の黒田さんの話を聞いて、すごく納得できました。

エンゲージメントの第一歩は企業理念から

(黒田)企業理念・ビジョンへの共感は、エンゲージメントにおいては欠かせない要素ですよね。揚羽が「言いたいことを言い合える」のもみんなが企業理念に納得して、実現しようとしているからだと思います。揚羽の企業理念は「未来の一歩を創り出す」です。この理念をみんな理解しているから「この提案じゃ、クライアントや社会の未来につながらないんじゃない?」といった会話が職種関係なくできる。

(秋元)企業理念・ビジョンをいかに浸透させるか、はとても大切ですよね。企業理念・ビジョンに共感し「この会社だから頑張りたい」という思いがあった上で、エンゲージメントが生まれてくるのだと思います。

(黒田)私も、そう思います。

(秋元)それから、最近の若い世代は仕事に意味合いを求める人が増えていると感じています。昔みたいに、「働いて車や家を買いたいです」という単純な動機で仕事をする人が減ってきている。企業理念・ビジョンに共感して、それを実現するために働きたい、という人が多いんですね。だから、企業理念・ビジョンの重要性はますます高まってきています。でも、企業理念・ビジョンって浸透させるのが難しいんですよね…。

(黒田)揚羽では日めくりカレンダーに、企業理念に基づいた行動指針をプリントしたものをトイレに貼ってます。毎日目にするので、案外効果がありますよ(笑)。

(秋元)それいいですね。ユニークさもありますし。真似しようかな(笑)。

(黒田)いろいろな企業のインナーブランディングをやらせていただいていますけど、企業理念を作るだけで満足しちゃうところが多いんですね。それだと、打ち上げ花火を上げたみたいなものです。打ち上がった瞬間は「うわーいいねー」とみんな喜ぶんですけど、1年経つと忘れちゃう。大事なのは、浸透させる取り組みを続けることなんです。

(秋元)そうですよね。「エンゲージメントを高めるために何をすればいいですか?」って聞かれたら、「まずは企業理念・ビジョンや行動指針を浸透させること」と答えると思います。それぐらい大切です。

(黒田)今後は、「1つの経営指標としてエンゲージメントを高めていきます」みたいな会社も出てくるのではないでしょうか。現にサイボウズさんには、感動課という社員を感動させることをミッションとした課があります。

(秋元)サイバーエージェントさんもカルチャー推進室を設けて、組織づくりに熱心に取り組んでいらっしゃいますよね。エンゲージメントを高めることを目的とした人間やチームの価値が、今後ますます高まるのではないでしょうか。

(黒田)秋元さんはまさに、そういったポジションにいますよね。チーフエンゲージメントオフィサーとか名乗ったらどうですか?

(秋元)いいですね。勝手に役職名つけちゃおうかな…。

(黒田)略すとCEOだからややこしいですけどね(笑)。まだまだエンゲージメントに関する情報は少ないので、今後も意見交換などをしながら探求していきたいですね。

(秋元)エンゲージメント向上委員会もまだ始まったばかりですから、これからもっとエンゲージメントについて考えて、向上施策を実践していきたいです。本日はありがとうございました!

※ 黒田氏が運営しているオウンドメディア「従業員エンゲージメントって、つまり一言でいうと何なの?」も、ぜひお読みください。

ABOUT COMPANY企業情報

株式会社うるる・株式会社揚羽

■株式会社うるる https://www.uluru.biz/
主な事業:CGS事業 「入札情報速報サービス(NJSS)」、 「えんフォト」、 「フレックスコール」、 クラウドソーシング事業「シュフティ」、 BPO事業「データ入力代行サービス」「スキャニングサービス」、等
設立年月日:2001年8月
従業員数:108名
(※2018年3月現在)

■株式会社揚羽 https://www.ageha.tv/
主な事業:インナー&アウターブランディング、採用ブランディング、マーケティング・コミュニケーション、3つの事業領域においてリサーチ〜クリエイティブまで様々なソリューションを提供
設立年月日:2001年8月
従業員数:108名
(※2018年4月現在)

OTHER ACTION の他の実践事例

OTHER STORY のインタビュー

STORY

【特別対談】2人の探究者が語り合う「エンゲージメントの本質、メリット、難しさ」

組織開発における1つの指標として注目を浴びる「エンゲージメント」。日本でも、徐々にこの言葉が広まりつつありますが、まだぼんやりとしかその意味がわかっていないという人も多いはず。エンゲージメントとは、そもそもどういったもので、どういったメリットがある…