昨今、新たな目標管理フレームワークとして注目を集めるOKR。日本ではまだ導入事例が少なく、「何から始めればいいの?」「どういう効果があるの?」と疑問に思う人も多いでしょう。

そんな疑問に答えるべく、“OKR1年生企業”である株式会社ミナジン、READYFOR株式会社とOKRの導入、運用サポート事業を手掛けるResily株式会社に集まっていただき、特別鼎談を実施。導入のきっかけ、導入方法、落とし穴、メリットなど、実際に運用をしているからこそわかる「生の声」でたっぷりと語っていただきました。本や記事を読んだだけでは分からない、OKRのリアルをどうぞ。

INTERVIEWEE

株式会社ミナジン 取締役 COO 野崎友邦氏

慶應義塾大大学卒業後、株式会社京都銀行に入行し、約10年間、法人融資営業、新規顧客開拓を中心にを行う。その後、株式会社ミナジン入社。人材サービス営業部マネージャー、営業部部長、管理部部長などを歴任した後、取締役就任。現在はCOOを兼任し、HRクラウドシステム部門、顧問サービス部門の事業部統括を行い、システムと人事のプロとを組み合わせたサービスの構築、事業提携などを推進している。

READYFOR株式会社 代表取締役 COO 樋浦直樹氏

東京大学教育学部卒業。2011年よりボストン・コンサルティング・グループにて小売・消費財業界を中心とした大企業のコンサルティング業務に従事し多岐にわたるプロジェクトを経験。「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」というビジョンに賛同し、2015年1月READYFOR株式会社取締役COOに就任。2017年7月より現職。

Resily株式会社 代表取締役 堀江真弘氏

大学院在学中より1年間のインターンを経てSansan株式会社に入社。 Sansan事業部営業部で、法人向け名刺管理サービス「Sansan」の販売に従事。 うち4ヶ月間、徳島県神山町にあるサテライトオフィスでオンラインでの営業手法を仕組み化する。 その後「Sansan」のスマートフォンアプリ担当プロダクトマネジャーとして、 アプリリニューアルのUX設計をリードする。 2017年6月にSansanを退職し、共同創業者のエンジニアとResily株式会社を創業。

 

従来の目標管理はエネルギーを小さくしているんじゃないか?

本日は、2018年度からOKRを導入した“OKR1年生企業”の2人にお集まりいただきました。2人とも各社でOKRの導入を主導して行い、運用も担当しています。

(樋浦)クラウドファンディング事業を手掛けるREADYFORの代表取締役COO樋浦直樹です。よろしくお願いします。

(野崎)人事業務のアウトソーシング、コンサルティング、クラウドシステムなどを手がけているミナジンで取締役を務める野崎友邦です。OKRをどうすれば効果的に運用できるのか、少しでも皆さんにお伝えできたらと思っています。

 

そして、特別アドバイザーとして、今回の鼎談にはOKRの導入、運用サポート事業を手掛けるResily代表取締役の堀江真弘さんにも参加していただきます。野崎さん、樋浦さんも堀江さんに相談をしている間柄です。

(堀江)今日は2人のお話を伺いながら、他社さんの事例なども交えてOKRの実際のところをいろいろお話できればと思います。

 

お願いします。最初に、OKRとは何なのか、堀江さんからご説明いただけますか?

(堀江)OKRとはObjective & Key Results(目標と主要な結果)の略で、新しい目標管理のフレームワークとして、注目を浴びています。特徴は「全社、チーム、個人のOKRをトップダウンではなく、当事者同士で決める」「すべてのOKRの共有が推奨されている」「月または週単位でチームや個人のOKRを見直す」などがあげられます。

運用面においては、月や週単位のチームMTGでOKRを議論の中心に据え、タスクの優先度付けや進捗の振り返りを行ったり、1on1で個人レベルのOKRについてコミュニケーションを取ったりと、かなり日常的な業務に溶け込ませるのも特徴です。「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」(日経BP社)が参考書としてとても有用です。ResilyのWebサイトにある「OKRとは」という記事もぜひご覧ください。

 

ーありがとうございます。では早速ですが、2社がいつOKRを導入して、どのように運用されているのか、現状のステータスを教えてください。

(野崎)ミナジンでは2018年4月からOKRを導入しました。毎週行う経営陣とマネージャーのMTGと各部門MTGの議論の中心にOKRを置き、個人、チームのKey Resultsがどれくらい進んでいるのか、Objectiveに即した活動ができているか、などを話しています。会社全体のObjectiveとしては「日本唯一の HR トータルソリューションカンパニーとして HR マーケットに驚きを与えると設定し、KRに数値目標を設定しています。

(堀江)ミナジンさんの例のように、Objectiveは数値目標ではなく、目指す姿や社員がワクワクするような言葉を設定します。そして、そうしたObjectiveを目指すための具体的な数値目標などをKey Resultsに設定。全社OKRのObjectiveは会社のミッションやビジョンと紐付いて考えられることが多いです。

(樋浦)READYFORは今年の8月にスタートしたばかりなので、導入してまだ2カ月程度です。同じように、マネージャーMTGや各チームMTGでOKRを活用して話し合いをしていますが、まだはっきりとしたルールは設けていません。私も含め、1回やってみてどうなるか、いろいろと試しているところです。ただ、本やWeb記事を読むだけでは分からなかったことも多々出てきているので、その辺りをお話できればと思います。

ちなみに、会社の大部分を占めるReadyfor事業全体OKRのObjectiveは「継続的な事業とエネルギーの高い組織を作り、日本一信頼されるクラウドファンディングサービスを作る」です。

 

ーなぜOKRを導入しようと決めたのでしょうか? それまでの目標管理の方法も踏まえて、きっかけを教えてください。

(野崎)OKRを導入する前は一般的なMBOを用いていました。会社から数値目標を提示し、それを達成するための自分の行動目標などを考えて提出してもらい、評価指標とするものです。それで、私個人としては、それぞれの社員が考える目標を読みながら「寂しいな…」という気持ちになることがありました。あくまで想像なんですけど「たぶん、提出日の前の晩にパパッとやったんだろな」とか(笑)、そういう印象を受ける目標が見られたんです。

(堀江)それが伝わってくるのは、寂しいですよね。

(野崎)ただ、それは社員個々人の問題というよりも「目標を決めるプロセス」そのものに問題があるんだろうな、というのはずっと頭の片隅にありました。

また、「wevox」でエンゲージメントスコアを計測しているのですが「会社方針への納得感」のスコアが低いままだったんですね。社員の目標に対する向き合い方、そして会社方針への納得感を高めるにはOKRが最適なんじゃないか、と考え導入を決めました。

(樋浦)我々も、似たようなところはあります。READYFORはまだ会社を設立してから5年目と日が浅く、若い社員も多いので、昨年度までは会社としての数値目標があって、それを個人に割り振り管理するやり方でした。一方で、人数も増えてきて、メンバーが3年、4年とこの会社で働く中で、成長もし、クラウドファンディング事業に対する強い思いを持ち始めてきたのも感じていました。

そんな状況の中で、会社の一部分の人たちが決めた数値に向かって働くだけだと、エネルギーが小さくなってしまうと感じたんです。「想像を超えるような成果」が生まれる可能性を自分たちで閉ざしているかもしれない。

(野崎)すごく、共感できます。やっぱり、与えられたものの範囲で目標を考えるとエネルギーは小さくなりますよね。

(樋浦)それで、組織づくりについていろいろ調べているときにOKRの「野心的な目標を立てる」という言葉が目について、すごくいいなあと思ったんです。成長してきたメンバーが、野心的なObjectiveを立てたら、この会社はすごくパワーアップするんじゃないか、と。そこに一番メリットを感じ、OKRの導入を決めました。

 

ーOKRはGoogleやメルカリが導入しているということで、注目度が上がり、ミナジン、READYFORのように実際に導入する企業も増え始めています。どうしてこのタイミングでOKRが注目を浴びているのか、堀江さんはどう思いますか?

(堀江)1つは、働き方改革の流れにより、会社が以前よりも「個人」にフォーカスし始めたのが大きいかと思います。そういう意味でいうと、2社さんの導入のきっかけもまさにそうですよね。トップダウンだけだと個人が考える幅が狭くなってしまう。

企業のミッション、ビジョンに共感して入社して、自分のストーリーとしてその物語を語る、ということが必要だよね、という大きな文脈ができてきている。そうした中で、OKRのように会社、チーム、個人それぞれの目標をより強くつなぐフレームワークが必要になってきているのだと思います。

(野崎)自分の仕事が、会社の成長にどう貢献できているか、本質的に理解できている社員が実は少ない、というのは感じていました。MBOだとそこが見えづらいんですよね。自分の仕事だけを考えがちになりますから。

(樋浦)あとは、環境の変化がすごく早い中で、計画の立て方もどんどん変わってきているのも大きいでしょうね。昔のような5年、10年先の計画なんて、今はほとんど意味がない。1年、いや半年でも計画が通用することなんてほとんどなくなっている中で、年間目標を立てて「みんな頑張りましょう」というのが全然合わなくなってきている。

一方、OKRの考え方は個人レベルであれば月や週単位で“自分で”見直すことができるので、スピード感がすごくマッチしているかな、と。

 

OKR導入のステップとは?

ーなるほど。OKRの中でも、特にObjectiveが持つ効果に2人とも大きなメリットを感じていたということですね。では、実際にどのように導入していったのか教えてください。

(野崎)私はまず、社内の理解を得るために、wevoxのエンゲージメントスコアをベースに資料を作って社長、マネージャー陣に説明をしました。先ほど話した「会社方針への納得感」のスコアが低いことを課題とし、それを解消するためにOKRを導入したい、と説明したのです。「OKRの効果は正直分からないけど、やる価値はあるんじゃないか」と話し、社長やマネージャー層の理解を得ました。

導入にあたっては、最初に経営陣とマネージャーで、外部のファシリテーターを交えて「全社OKR」を設定。そして、また同じ経営陣とマネージャーで集まり、部署ごとのチームOKRを設定しました。

そこまで、進めてから個人OKRを考えるワークショップを行いました。それが3月末で、4月から運用を開始したという形です。以前、DIOの取材でも詳しく語っているので、ぜひそのアクションコンテンツも見ていただければと思います。

 

ー全社OKR、チームOKR、個人OKRという順で決めたんですね。

(野崎)そうです。ポイントとしては、個人OKRを考える時間を長く取ったことです。年に1回行う、2日間の全社集会に合わせてワークショップを開催したのですが、全社、チームのOKRを説明するのは冒頭の2時間だけ。これまでであれば、もっと時間をかけて会社の考え方、マネージャーの考え方を伝えていたのですが、そうした時間を極力減らしました。そして、OKRの内容に関しては原則口出しをしていません。本人が納得のいくOKRを考えてもらうことに重きをおきました。

 

ー樋浦さんはどうでしょうか?

(樋浦)私は期が変わる7月直前、6月後半ぐらいから、先ほどお話しした「目標」をもっと大切にしたいと思って、ガーッと調べたんですね。その時に、先ほど紹介された野崎さんのDIOの記事を見まして、「相談しよう」と思って突然メールをしました(笑)。

(野崎)びっくりしました。誰だ?って(笑)。驚きましたけど、少しでもお役に立てれば、と直接お会いしていろいろとお話しました。

 

ー実は、その出会いがきっかけで、この鼎談が実現したという背景があります。

(樋浦)OKRをどういうステップで決めるのがいいのか、どういう会話が起きていたのか、とかいろいろ知りたかったんです。聞かせていただいて本当に助かりました。結果的に、ミナジンさんのステップを参考にし、まずはマネージャーと私、つまり経営側の人間で会社のOKRを決める会議をしました。そしてその後、マネージャーが自分たちのチームメンバーとチームのOKR、個人のOKRを考える会議をした、という二段構えです。

(野崎)チームOKRはマネージャーとメンバーで考えたんですね。ミナジンは経営陣、マネージャーMTGで考えました。全社OKRはスムーズに決まりましたか?

(樋浦)マネージャー各人、事業部全体の目標を考えるのは初めてなはずなのに「利益とか意識しなくていいんですか?」「1人当たりの生産性大事じゃないですか?」といった発言があってすごく盛り上がりました(笑)。そういう会話をすること自体にすごく意味があるのだと、と思いましたね。そうすることで、今までどこか他人事だった会社の目標に、自分が関わったという経緯が生まれる。それは、チームや個人に目標が落ちていくときの納得感に繋がります。「あ、これがOKRの効果か」と思いました。

(堀江)結果的に高いレベルのKRが設定されたと聞きました。

(樋浦)想定していた1.5倍ぐらいの数値目標がKRに設定されました。基本的にOKRではストレッチ目標を立てることが推奨されているのですが、とはいえ大きいな…という(笑)。ですが、自分たちで決めることによって納得感を持って具体的にこの数値目標をどう達成させるかを話すことができるようになり、こういうプロセスもよかったなと思ってます。

 

ー堀江さんは、こうした導入のステップを聞いていかがですか?

(堀江)私たちが行っている導入の際のワークショップも同じような手順を踏んでいるので、理にかなった進め方だと思います。ポイントをあげるとすれば、「全社OKR」をどう決めるか、になってくると思います。2社さんは本当にボトムアップで、ゼロベースでマネージャー陣と一緒に考えていますが、コアな経営陣だけで叩きを作る、という手順を踏む企業も多いです。たたき台は経営者が作って、マネージャー陣が話し合いをする、というプロセスです。ゼロベースでマネージャー陣から議論を始めた場合、あまりにも意見がバラバラになりそうであれば、こうしたプロセスを取った方がいいですね。これは、会社の規模や、いる人材のキャラクターによって変わってきますので、どちらがいい、悪いというものではありません。

 

OKRはコミュニケーションの手段でもある

ー導入にあたって、人事の方から「OKRを導入したいけど、経営陣の理解を得るのが難しい」という声も聞きます。

(堀江)これに関してはステルスで事例をつくるしかないかな、と思います。限定的に実施してみて、こういう効果があるから、やってみませんか、と説得する。そういう積み重ねをしていくしかないと思いますね。

 

ーもう1つ、人事の方から「ミッション、ビジョンが会社にあるはずなのに、目標にすり替えられて一致団結を図ることがある。ミッション、ビジョンって結局何なのか」という意見もいただいています。

(堀江)はい、そうですね。ビジョン、ミッションって、往々にして抽象度が高くて、遠く感じるものなんです。月とか太陽みたいな。OKRは、その距離を縮めていくためのコミュニケーション手段なんですよね。基本的にOKRは3カ月ごとに、と言われていますけど、別に3年スパンのOKRがあってもいい。そうすると、ビジョン、ミッションが少し近づきますよね。READYFORさんでいえば「3年先のクラウドファンディング事業どうしていきたいか」のOKRを設定しようとすると、なんとなく考えやすいというか。そこから、1年、半年、3カ月、1カ月、と落とし込んでいく。そういうコミュニケーションをすることが大事で、その手段の一つがOKRなんです。

(樋浦)まさに、READYFORもビジョン、ミッションがあって、3年、1年とブレイクダウンしていったものはあって、1年スパンの目標を全社のOKRにしています。ビジョンが一番長期的な会社のObjectiveとしてある、という感覚はありますね。

(野崎)ミッション、ビジョンってそれ自身で独立できちゃうから、1人の人間が、日々仕事をするときにつながりづらいのは確かです。ベンチャーによくあるのが、ミッションやビジョンに共感して自走している社員が一部だけになっていしまっている状況。それ以外の大多数の人にはやはり、ブリッジするものが必要なんだと思います。

 

ーOKRは全社共有を推奨しているのも特徴の一つです。共有するメリットについてはいかがでしょうか?

(堀江)全社OKRを作ったとして、それがやはりだんだんと現場に降りてくると意図や背景が伝わりづらかったりします。なので、全社、チーム、個人という縦関係の情報格差がなくなる、というメリットが一つ。

それから、違う役割のチーム、人がどのようなOKRを立てて、月や週単位で回そうとしているかを確認しながら「じゃあ自分たちは今月はこのOKRで、それを達成するためのタスクの優先度はこうしよう」という話ができるようになります。あるいは「他のチームのOKRをサポートするために、我々のOKRはこう考えよう」というディスカッションが生まれ、横のつながりを強化する効果があります。

(野崎)確かに横のつながりを強くする効果はありますね。実際に始めてみると「実務に追われて、OKRに取り組めていない」という声を聞くともあります。それって、おかしな話で、本来実務の中にOKRが取り込まれてないといけないはずなんです。そうした状況にある人が、他の部署のOKRを見て、「あ、自分の仕事があの部署のOKR達成につながるかも」と感じることができれば、より理解が深まりますし、仕事の中に組み込むことがしやすくなる。

 

 

全部完璧にやろうと思うのは“無理”

ーOKRを設定したところで、日々の仕事とどう結びつけるのか、が難しいということですね。

(野崎)特に管理部門は考えにくいのかもしれません。管理部門の人たちって実務志向が強く、日々のタスクがあらかじめ決まっていることが多いので。でも、他の事業部のOKRを見ながら、その達成をサポートするために何ができるんだろう、と考えやすくなるということはあります。

いきなり個人がOKRを意識して業務に取り組むのはやっぱり難しいんですよね。なかなか、絵に描いたようにはいきません。

(樋浦)仕組みとして綺麗に回ることは最初からうまくいかなくて当然という気持ちで始めるのが大事ですよね。OKRは途中で見直して、変えてもいいという思想なので、むしろそうしたマインドで臨む方がいいのかもしれません。実際、目標設定が難しく何度も見直しを行うチームもありますし、全員が設定したあと効果的に運用できている状況にはまだまだ遠いです。

全て完璧に本などに書いてあることをやろうとしても無理です。私も「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」(日経BP社)を読み参考にしていますが、書かれているタスクの優先度付けもやってみないとわからない。

(堀江)タスクの優先度付けでつまずく企業は多いですね。タスクの粒度ってどれぐらいなのか、議論がなかなかまとまらなかったり、タスクを多くあげすぎてこんがらがっちゃったり。こればっかりは、各社の状況によって原因や解決法が変わってくるので、万能な処方箋はないのが正直なところです。

(樋浦)私はマネージャー陣とのタスクの優先度の会話では「これOKRに関係ないけど、重要なタスクだよね。どうしようか」というざっくばらんな会話をしています。そうやって、会社ごと、フェーズごとにあったやり方を毎週アップデートしながら、メンバーの視座を高めていければいいのではないでしょうか。

(野崎)視座を高めてもらうにはどうすればいいか、という考えは大事ですよね。私が気をつけているのは、極力口を出さないように、ということですね。樋浦さんも先ほど仰ってましたが、KRの設定ってみんなだいたい大きすぎたりするんですよね。でも、そこには口を出さない、と決めています。それをやっちゃうと、自ら取り組もうとする意欲、エンゲージメントを下げちゃうかもしれない。

でも、どうしてもって時は「このObjectiveを掲げているのならこういうKRが必要じゃないか?」などObjectiveベースで「もう少し考えてみたら?」と言うようにしています。それは、結果的にKRにも繋がってきますから。

ミナジン社OKRミーティングの様子

 

視座の高まりを実感、エンゲージメント向上にも効果大

ーまだ導入をして間もないですが、効果としてはどのように実感していますか?

(野崎)「One MINAGINE」という全社OKRとともに設定した言葉をベースにディスカッションをすることがかなり浸透してきています。特にマネージャー陣の中では顕著です。実はつい先日大きな変化があって、マネージャー陣の中で「One MINAGINE」と掲げているのに、チームが事業ごとに分かれている今の組織体制が果たしていいのか? 組織体制を変えたほうがいいんじゃないか?」といった議論が巻き起こったんです。

私がかねて課題意識を持ちつつも、どうしたものかと悩んでいたことなんです。そうしたことを経営者である私が言うのではなく、マネージャー陣が自らたどり着いたのはすごく大きな変化でしたね。OKRを導入していなかったら、こういうディスカッションは起きていないでしょう。

 

ー確かに、かなり大きな変化ですね。

(野崎)ただ、1つ課題も感じていて、「評価」との結びつけをどうするかですね。KRは基本的に達成確率50〜60%程度の高い目標数値にしよう、と伝えて決めてもらっているのですが、人によっては「人事評価としては未達(50~60%の達成率)でもいいんでしょ?」という感覚を持つ人もいる。これまでの数値を軸にした人事評価と、OKRの考え方の違いをもう少し理解してもらう必要があるんでしょうね。

 

ーOKRと人事評価の関連というのはどのように考えるのがいいのでしょうか?そもそも結びつけてもいいものなのか。

(堀江)結びつけてもいいと思っています。というのも、評価をする際の参考情報はMBOに比べて非常にたまりやすいはずなんですよね。OKRをベースに、毎月や毎週、チームや個人の進捗、成果を測っているわけですから。それに、オープンにしている企業であればOKRに対して個人がどう立ち振る舞ったかという情報が周辺からも集めやすい。だから360度評価との相性はすごくいいと思います。

評価との関連性をどうするか、どういう位置付けでこのOKRを運用するのか、といった説明を社員にできるようにしておくといいでしょうね。「OKRは未達がどうかは問わないけど、達成しようとするプロセスは評価する」とかですね。そういうことを突き詰めていく中で、そもそもの組織制度ってこれでいいんだっけ? ということに気づいていく企業は多いです。

 

ー樋浦さんは効果としてはどのように感じていますか?

(樋浦)まず1つは、自分だけだったら考えもしなかった高い目標をみんなで目指せている、というのが大きいですね。それを達成するためにどうすればいいのか、「個人がチーム」、「チームが全体」とそれぞれ1レイヤー上の目標を意識しながら考えることができるようになったのも大きな変化です。まだ短期間ですけど、会話の節々からそうした視座の高さを感じることはあります。

それから、チーム間の助け合いが自然と起きるようになりました。全社のOKRを達成するために、自分たち以外のチームのOKRも達成されないと、という意識がかなり強くなっているからでしょう。

(野崎)まさに、先ほど話した横同士でOKRを共有するメリットですね。素晴らしいです。

(樋浦)それと「採用」が、マネージャーみんなの“自分ごと”になってきていますね。

(堀江)へえ、おもしろい。

(樋浦)「目標を達成するためには、こういう人材が必要なんじゃないか」という会話が起きるようになりました。自分のチームに必要な人材の話だけじゃなくて、他のチームに必要な人材について話す場面も目にします。だから、まずマネージャーの意識がすごく変わった。

(野崎)それから、導入したきっかけでもあった「会社方針への納得感」のエンゲージメントスコアがすごく上がりました。他の項目も全体的に上がっています。エンゲージメントを上げる施策は他にもいろいろ取り組んでいますが、OKRの導入が一番効果的でしたね。OKRとエンゲージメントの親和性はすごく高いと感じています。

 

OKR導入にあたって必要な心構え

ーありがとうございます。では、最後にOKRの導入を検討している経営者や人事の方にアドバイスをお願いします。

(樋浦)まず根本的に「社員のエンゲージメントを高めたい、生き生きと働いてほしい」という思いを経営者、人事が持っているかどうかが大事です。そうした思いを実現するための手法の一つとして、OKRがある。この順番を間違っちゃうと「OKRを導入したのに業績上がらないじゃないか」という話になっちゃいます。OKRは、インストールした瞬間売り上げ爆上げとかそういうシステムではないですから。

「エンゲージメントを高めるために」という観点からOKRを検討している人がいたら、ぜひやってみてください。

(野崎)繰り返しになりますが「完璧なOKRの制度を作ろう」と考えないことが大事ですね。そこは、気にしないでいいです。運用方法含め、ブラッシュアップしていけばいいですし、そうした思想をベースにOKRのフレームワークはできています。

経営者と個々人のコンセンサスを高める、納得感を高めるという意味ではとても効果的だと思います。目標管理のフレームワークではあるのですが、そうしたコンセンサスを取るための、コミュニケーション手段としてもOKRを活用できるといいのではないでしょうか。

(堀江)そうですね。ディスカッションやコミュニケーションをどう整理するか、ということでモヤモヤ感を抱いている人は、試してほしいですね。「どうしてこの会社で働いてるんだ?」というエモーショナルな個人の気持ちと会社の方向性をリンクさせることで、ディスカッションやコミュニケーションを円滑にする機能がOKRにはあると思っています。

ーたっぷりとお話いただき、OKRの導入を検討している人にとって、非常に参考になる鼎談になりました。1年目のOKRがうまくいくことを願っています! 本日はありがとうございました。

ABOUT COMPANY企業情報

株式会社READY FOR 株式会社ミナジン 株式会社Resily

■READYFOR株式会社 https://readyfor.jp/corp#info
主な事業:クラウドファンディング事業
設立年月:2014年7月
従業員数:70名
(※2019年1月現在)


■株式会社ミナジン https://minagine.jp/
主な事業:HR SaaS
設立年月日:1976年10月
従業員数:40人
(※2019年1月現在)

■Resily株式会社 https://resily.com/
主な事業:クラウドOKRサービスの企画・開発・販売
設立年月日:2017年8月8日
従業員数:8名
(※2019年1月現在)

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