GoogleやFacebookが導入していることで注目集めている目標管理手法「OKR」。メルカリをはじめとして、国内でも導入企業が増えてきている中で、それぞれどのようにOKRを活用しているのでしょうか? そんな疑問に答えるべく、導入企業にOKRの運用方法や効果など“リアルなハナシ”を聞く本シリーズ。今回は社食サービスを筆頭に、「働く人のライフスタイルを豊かにする」をミッションに、
その解決に取り組む株式会社OKANの人事担当中村 星斗さんと手塚ちひろさんに話を伺いました。
非連続の成長を実現するために
株式会社OKANでは、2018年11月からOKRを導入しています。実はその前に試験的にOKRを取り入れたことがあったのですが、徐々に形骸化してしまい、うまく運用できなかった経験をしていました。ですので、今回の導入では全社、グループ、個人それぞれのOKRの結びつきをしっかりと行い、日常業務の中にOKRが活かされるように改善を行いました。具体的に目的、導入、運用方法に分けて弊社のOKRがどのようなものか説明したいと思います。
目的
弊社がOKRを導入したのは、「非連続の成長を実現するため」です。オフィスおかんの提供価値を再定義し、「=食事補助サービス」のイメージを払拭する。そのためにOKRを活用し、定常業務だけでなく、非定常的な業務にも個々のメンバーがチャンレンジできる環境を作ることを目的に導入しました。
導入フロー
1.全社OKRの策定
導入にあたって、まずは役員で全社の通期OKRを決めました。Objectiveには「チャレンジ」を意識してもらう言葉を、KRには具体的な定量の目標を設定しました。
2.グループごとのOKRの策定
その後、各グルーブのまとめ役である「リード」が集まり(弊社はフラットな組織体制を敷いているため、マネージャー職は存在しません)、各グループのOKRを設定します。この集まりは1日じっくり時間を取って行いました。各リードが考えたグループごとのOKRを共有しあいながら「本当に全社OKRに結びついているか」「もう少し具体的なKRの方がいいんじゃないか」などお互いにチェックしあいながら丁寧に設定をしたのです。1日かけて行ったことで、全社OKRへの理解が深まり、各グループのOKRもより納得感のあるものにできたと思います。
3.個人のOKRの策定
最後に、個人のOKRの策定です。各グループのMTGで、リードから全社OKR、グループOKRについて説明をしてもらい、個人のOKRを考えてもらいました。リードからの説明方法は各人にまかせていますが、OKRの目的、OKRがどのように日常の業務に関わってくるか、非定常業務に積極的に挑戦してほしいといったことを伝えてもらっています。個人が設定したOKRは役員も確認し、極端な内容になっていないか、結びつきができているかをチェックしています。KRの設定においては、達成可能難度に応じ、優しめのKRから実現は困難だけどできたら高い成果を生み出すものまで5段階のKRを設定しました。
運用方法
運用においては、日常的にOKRと接する機会を増やすことを特に意識しました。
1.週1回のグループMTGでOKRの振り返りを行う
各グループの週1回の定例MTGでは、必ずOKRを議題に振り返りを行う時間を設けています。こうすることで、毎週OKRを意識することになりますし、振り返りの際にその週でOKRに対してどういった行動を起こしたか、自発的な内省を促すことができます。
2.月1回の全社MTGでグループごとの振り返りを行う
月1回の全社MTG「家族会議」では、グループごとのOKRの進捗を確認しています。リードから個々人がOKRを元にどのような行動をしているか、そしてグループとしてのOKRがどれくらい達成されているかを共有します。
3.OKR運用メンバーをアサインし、1on1などを行う
導入にあたり、OKRの運用を行うメンバーを2名アサインしました。他業務との掛け持ちではありますが、専任のメンバーがいることでより実行力をもたせたいと考えました。
4.1QごとにOKRを見直す
個人のOKRは1Qごとに見直すことを前提にし、自発的な達成意欲を醸成するようにしています。非定常的な働きの活性化を狙っていますので、1年間同じ目標を持つよりも、Qごとにその時々の状況に応じ、自分が目指したい目標を持ってもらうのがいいのではないかという考えからです。
5.OKRは全社で共有
グループ、個人のOKRは全て全社員にスプレッドシートを使って共有しています。グループの垣根を越えて全社OKRの達成に向けて取り組んでほしいという思いからです。自分のOKRだけを達成しようとしても、グループ、全社のOKRは達成できません。他のメンバー、グループのOKRの支援を促す意味でも、共有する効果は高いと思っています。
6.評価には直接結びつけない
評価には直接結びつけない、ということは導入時にメンバーに対して説明をしました。OKRは査定のためのものではなく、個人そして組織の成長を促すものです。ただ、OKRを実直に達成しようと努力するメンバーは自然と評価も高くなる傾向にはあるでしょう。それから、OKRの達成進捗で著しい成果を上げたメンバーにはアワードを授与するなど、奨励する仕組みは取り入れようと考えています。
このように、運用においてはOKRへのコミット感を生み出す仕組みを取り入れています。設定して終わり、ではなくいかに日常業務の中にOKRを浸透させるか、が活用のポイントになってくるのではないでしょうか。
こうしてOKRを導入したことで、個々のメンバーの動きは確実に変化してきています。続いて、現場のメンバーにバトンタッチをしてOKRをどう受け止め、日頃の業務に活かしているのかを話してもらいます。
「挑戦するきっかけになる」――メンバーが感じたOKRのメリット
私はHR・EXグループに所属しており、主に採用業務や人事制度の運用・管理業務などを行っています。コーポレート業務が中心だったこともあり、最初にOKRの話を聞いたとき、少し戸惑いがありました。非連続の成長を会社が目指していく中で、管理業務が主な私に何ができるのだろう?という疑問があったのです。
特に良かったのが「日常業務ではない、非定常業務でのチャレンジをしてほしい。失敗しても大丈夫」という話をリードからされたことです。こうした声かけがあったことで、チャレンジングなOKRを設定することができました。
私はObjectiveとして、「人事の仕事の経営上における効果測定を可能にする」というものを設定しました。KRにはそのために、各種人事ツールの仕組みを理解したり、経営的なメリットとの関連性の分析したりといった内容を設定しています。
具体的には自社サービスである、離職につながる衛生要因を見える化するサービス「ハイジ」、組織改善プラットフォーム「wevox」を対象にそれぞれのスコアがどのように経営メリットに繋がるかを研究しています。人事関連の仕事は効果測定が難しく、予算の確保がしづらいのが現実です。そうした課題を解決すべく、それぞれのツールを活用しながら、人事の仕事の価値をわかりやすくしようという目標です。
最終的にはその成果をオープンにしていくことで、社会全体での人事職の価値向上、ハイジの利用促進や情報発信を通じた株式会社OKANの価値向上など様々な効果を狙えるのではと考えています。
こうした考えはぼんやりと頭にはあったのですが、日常業務がある中でなかなか取り組む機会を見出せずにいました。個人OKRを決める作業がきっかけとなって、挑戦する機会を得られたのです。
今はそれぞれのツールのスコアとにらめっこしながら、どのような施策を行えばスコアが上がるのか、トライアンドエラーを繰り返しています。例えばハイジのスコアを元に改善を進めている1つとして、心身の健康を維持する上で重要な生活習慣の改善と向上の為、”食・睡眠・運動”の支援をする「すこやかパック」をスタートさせました。心身の健康ともに害してしまうリスク(離職の原因にもなりかねない)のある、睡眠障害(まくら購入補助)・食の乱れ(オフィスおかん)・運動不足(歩行の推奨)による疾病罹患を、安定した生活習慣の実現により予防しています。この結果、ハイジのスコアがどう推移し、そしてそれが売り上げにどう繋がるか、時間をかけて分析していくつもりです。
いきなり成果が出るものではないので、週1回のグループMTGでOKRについて振り返るときは、明確な進捗成果が話せないこともあります。本来であればそうした報告はしづらいものですが、OKRは挑戦すること自体に価値を置いているので、うまくいっていないことがあっても気にすることなく共有できます。
他のメンバーとも、OKRをきっかけに会話をすることが増えました。日常業務では接点がない人でも、自分自身のOKRを達成するために色々なアイデアを聞いたり、相談をしたりとコミュニケーションが活性化されています。私以外のメンバーもOKRをきっかけに会話が広がっている場面を良く見かけるようになったので、かなり浸透しているようです。
このように、私個人としてはOKRによって、日常業務以外の目標に挑戦できるようになったり、メンバーとのコミュニケーションが活性化されたり、日頃の働き方が変わったように感じます。OKRの目的やメリットは会社によってそれぞれだとは思いますが、メンバーの新たな挑戦へのきっかけを生み出したい場合はとても有効な手段なのではなでしょうか。私自身はこれからも、OKRを少しでも達成できるように研究分析に励んでいきたいです。