INTERVIEWEE

株式会社コロプラ HR本部 人事部 人事企画グループ マネージャー 太田晃義氏

2007年より東証一部上場企業にて人事キャリアをスタートさせ、採用・労務・制度企画等の人事全般を経験。その後も、上場企業にて一貫して人事業務を担当。2015年に株式会社コロプラ入社。現在は、人事企画グル―プのマネージャーとして制度企画を中心とした業務に注力。

株式会社コロプラ HR本部 人事部 人事企画グループ 秋廣尚斗氏

東北大学大学院理学研究科卒。2017年に新卒で株式会社コロプラへ入社。HR本部長付きとして、立ち上げ直後の人事企画グループにて企画業務に従事。wevoxを活用したHRデータ分析、働き方制度、役割等級・評価報酬制度など、全社の人事制度立案・運用に注力。新卒採用担当も兼務。

『白猫プロジェクト』『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』など、数多くのヒットゲームを生み出してきた株式会社コロプラが、2018年2月、労働時間に関する大幅な制度変更を実施。

施策立案からわずか数カ月で導入されたという制度のインデックスには、クリエイティブ業界ではまだまだ珍しい「裁量労働制の廃止」と「残業禁止」の文字が並んでいました。労働時間を減らしながら、会社にも社員にもメリットをもたらす大改革はどのように行われたのか!?

「働き方について悩む、人事やクリエイターの役に立ちたい」というコロプラ人事部の思いから、大変貴重な導入秘話を聞かせていただきました!!

単に労働時間を減らすことが目的ではなく、「ワークライフバランス」を軸に進めたコロプラ流・働き方改革

コロプラは2018年2月に大幅な人事制度改革を行いました。まずは、どのような改革だったか教えてください。

(太田)主に3つの制度変更を行いました。

1.裁量労働制の原則廃止 &フレックスタイム制の導入

2.深夜(22時以降)の残業原則禁止

3.休日出勤の原則禁止

なかでも今日は特にみなさんのご関心が高いであろう、12についてお話しできればと思っています。導入から10カ月以上が経過して、今ではすっかり社内に浸透していますので、ご参考にしていただける部分があるのではと思います。

(秋廣)「働き方を抜本的に変える必要があるのでは」と社内で本格的に議題に挙がったのが2017年の秋でしたよね。改革案が決議されてから数カ月で大幅な制度変更ができたのは、常日頃からスピード感時代の変化に応じて、我々も変化することが求められるコロプラならではのことだったと思います。

 

まずは、改革に至った背景を教えていただけますか。

(太田)弊社は主な事業がゲームプロダクト開発で、社員の8割以上がクリエイター(エンジニア、プランナー、デザイナーなど)という会社です。職種の垣根なく意見を言い合い、みんなで面白いものを作るという共通意識のもとに開発をしているので、会社と言っても日常的にワイワイものづくりしている姿が見られて、それがコロプラらしさではあるのですが……

(秋廣)みんなが制作に夢中になっているので、用事があるときでも定時に帰りづらい雰囲気があるとか、緊急の場合でなくても慢性的に残業してしまうチームがあるとか……「ちょっと直したいよね」というようなところがあったんですね。

(太田)あと、設立からまだ10年という若い会社で、平均年齢も30.9歳という感じなので、これまでは「ガンガン行こうぜ!」というノリで来ていたんですけど、結婚したりお子さんを持ったりする人が増えて、「長く安心して働ける会社にしなくては」という視点も出てきたと思います。

(秋廣)世の中の流れとして、「ワークライフバランス」を意識するようになってきたというのもありましたね。ワーク(仕事)とライフ(人生)の充実が大事という話を耳にしたときに、エンターテインメントを作るクリエイターたちが平日は仕事しかできないという状況でいいのか、もっとインプットしやすい環境を会社側が提供するほうがいいのではないか、と話題に上がるようになっていました。

(太田)だから「コロプラ流・働き方改革」は、単に労働時間を減らすことが目的ではなく、企業理念(『Entertainment in Real Life ~エンターテインメントで日常をより楽しく、より素晴らしく~』)を軸に、会社としてどうあるべきか本気で考えた結果なんです。

(秋廣)「裁量労働制の廃止」とか「深夜残業禁止」といった範囲にとどまらず、『コロプラネット』という社員サポート制度も充実させて、社内のコミュニケーションを活性化させたり、社員のプライベートの時間も支援したりするような形にしないと、コロプラの制度として足りないんじゃないかと思っています。

(太田)制度ではなくても業務時間中に美術館に行ったりするチームもあったりするくらいなので、インプットの重要性は現場でも常に感じていますしね。世の中の流れだからという理由だけで「働き方改革」をするのではなく、経営理念に即した形で推進したのはポイントだったと思います。

 

裁量労働制しか知らないクリエイターには大きな変化「フレックスタイム制って何?」

理想はそうでしょうけれど、「労働時間を減らすことで、生産性が落ちる」リスクもあったわけですよね?

(秋廣)はい、現実的な問題として、労働時間を短くした分の埋め合わせの調整は続けています。コンテンツごとに業務プロセスの見直しをしたのはもちろん、中途採用人数を増やしたり、アウトソーシングの活用もしたりしています。

(太田)実際、新たな制度の導入に加え、埋め合わせ分の調整も必要だったわけですから、当初はゲーム開発の現場にも負担をかけることがありました。でもブレずに改革を進められたのは、目先の生産性ではなく、長期的な視野を持って「いい会社にしたい」という思いがみんなにあったからだと思います。弊社の商品やサービスを作っているのはですから、一人ひとりが心身ともに健康で、長く安心して働ける環境を整えることが最重要です。

 

とはいえ、それまでの「裁量労働制」から「フレックスタイム制」に変わるということは、クリエイターにとって大きな変化だったんじゃないですか。

(秋廣)そう思います。だから人事として、説明の手間は惜しみませんでした。850名以上いる社員に理解してもらうために、説明会を日に23回、1週間くらいかけて実施しました。さらに今回の変更に関する質問は随時受け付け、都度返答し、それらを全社員が閲覧できるように、Googleスプレッドシートにまとめました。同じ質問が来ることは想定されていましたし、社員も確認する手間を省くことができます。

(太田)前職含め、ずっと裁量労働制で働いてきたクリエイターも多いので、「フレックスタイム制って何?」というところから質問されることもありました。「(裁量労働制では認められていた)役所に行ってから会社に来ても遅刻になるの?」という質問に、「はい、なります。でもその代わりに、コアタイム(10:3015:30)以外の時間に行ってはどうですか」などと、一つひとつ回答していきましたね。

 

22時以降の残業については部長許可制に

(秋廣)あと、22時以降の残業については、「部長」の許可を必要とする制度にしましたね。

(太田)これは残業に対する抑止力を効かせるための施策です。残業を許可制にしている企業は多いと思いますが、その多くは直属の上長に申請書を提出しますよね。上長はある程度事情を知っているから、ほとんどの場合許可してしまうんです。だから、あまり意味がない。

(秋廣)部長であれば、個別の事情での判断ではなく、全体を俯瞰してフラットに情報を見てその残業が必要かどうか判断できる。そしてやはり弊社では、多くの部長が残業は不許可としているようで、大きな効果を発揮しています。

 

もうすぐ導入から1年近く経ちますが、全体的な感触はいかがですか。

(太田)労働時間は劇的に減りましたし、社員からの問い合わせもしばらくするとほとんど来なくなりました。導入から3カ月後に実施したアンケートを見ても「変えてもらってよかった」という意見が大半です。

(秋廣)「インプットをする機会が増えた」という声もあります。平日の夕方からスポーツ観戦に行ったり、映画を観たりといった時間を過ごせるようになったそうで、我々の意図した効果は出ています。コロプラの社員はみんな真面目なので、メリハリをつけてインプットをしたら、より良いアウトプットをしようという気持ちになるという、本当にいい循環が生まれています。

(太田)それから「wevox」のエンゲージメントスコアも全体的に上がりました。これは、嬉しかったですね。エンゲージメントが上がるということは、単純に「早く帰れるからいい」ということだけでなく、「この会社で働きたい」という思いにまでつながっているということでしょうから。

 

ー 多くの企業は労働時間に課題を感じつつも、改革を実行できないで足踏みをしています。

(太田)まずは、「やってみる」に尽きると思います。それしかないですね。初めから100点を目指すのではなく、まず実行して、その中で制度をブラッシュアップしていけばいい。そういう感覚を持つことが重要ではないでしょうか。

(秋廣)何か新しい制度を導入すると改善点は必ず出るものなので、常に社員の声を聞きながらアップデートする意識を持ちつつ、進めるしかないと思います。

(太田)最近も、社員からのニーズを受けて1時間単位で有休を取得できるように制度変更をしたばかりです。そうした継続的なアップデートも含めて、とにかくやってみる。我々も現状に満足しないで、もっと社員にとって働きやすい会社になるよう頑張っていきたいと思っています。

 

「まずはやってみる、そして改善し続ける」とは、クリエイティブ業界に限らず、共感できそうな言葉ですね。今日は大変貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!