11月22日(金)、東京ミッドタウンタワーで【第24回慶應義塾大学 SFC Open Research Forum 2019「働き方改革とワーク・エンゲイジメント」セッション】が行なわれました。今の時代は働き方改革が進み、多様な人材の活用、柔軟な働き方が求められています。どうすれば働く人々が健康で活き活きと働けるか、「ワーク・エンゲージメント」をキーワードに研究者、省庁職員、大企業やベンチャー企業の社員など、様々な領域の実践者でトークセッションを行ないました。トークセッションレポートの最終回では、前回までワーク・エンゲージメントや働き方についてプレゼンをした3人に、アトラエの中村友也さんを加えた4人でのセッションをお届けします!

SPEAKER

島津明人氏

慶應義塾大学 総合政策学部 教授

 

久米隼人氏

厚生労働省 大臣官房人事課 課長補佐

 

東原祥匡氏

日本航空株式会社 人財本部 人財戦略部 ワークスタイル変革推進グループ アシスタントマネジャー

中村友也氏

株式会社アトラエ wevox Customer Engagement

覚悟を持って、退路を断つ

(島津)今日は3人にワークエンゲージメントという観点で、それぞれの立場からお話していただきました。改めていかがでしたか? 立場の違いから何かお気づきになった点などありましたか?

(久米)非常に学びのある時間でした。共通して言えるのは、決められたルールを押し付けるのではなく、社員の自律性や自発性を引き出すことがワークエンゲージメントを上げるためには重要だということですね。

(島津)その通りですね。従業員の幸せややりがいを引き出すことが、国民や株主、社会全体に対していいサービスを提供することに繋がるんだと思いました。東原さんはいかがですか?

(東原)今までは組織の働き方の課題は浮き彫りになってきませんでした。しかし今は時代が変わって、今までは普通だったことが普通じゃなくなったりと速いスピードで世の中が変化していく中で、一人ひとりが活き活きと働けるように、組織に合った形で施策に落とし込むことが重要だということも本日学ぶことができました。

(島津)そういう意味では、アトラエさんは多くの他社事例を持っていると思うのですが、中村さんいかがですか?

(中村)wevoxのようなサーベイを取るときに大事なのは、「なぜ取るのか」というWhyの部分です。従業員のみなさんは日頃の業務で忙しいので、回答時間が短いとは言え、毎月答えてもらっていると、「これなんのためにやっているの?」と疑問に思ってしまいます。組織に合った施策を考える際は、Whyをきちんと考えることが重要ですね。

(島津)非常に大事なことだと思います。施策をいざ実行するときに、ハードルや壁のようなものがあると思います。久米さんのケースでは、若手が立ち上がって提言をしているということですが、正しいことをやるときって抵抗勢力といった壁が必ず出てきますよね。どう突破したらいいんですか?

(久米)退路を断つこと、じゃないですかね。改革を実行するときには、しわ寄せがくる人が必ず出てきます。改革が成功すると組織全体の無駄は減りますが、一部の人の業務時間は一時的に増えてしまう。そういう人たちからはやはり反発が来ますね。そういうときは、改革の必要性を真剣に伝えるようにしています。場合によっては、幹部の名前も出しながら「この人も言ってるんだから、お願いしますよ」という作戦に出ることもあります。ただ、そうやって一方的に伝えるだけではパワハラじみたものになってしまう恐れがあるので、「こっちも退路を断って覚悟を持ってやっている」という熱意も必ず伝えて、突破してきました。

(島津)退路を断つ、ですか。たしかに覚悟は大事ですね。

それではここからは本日お集まりいただいたみなさんからの質問に答えていきたいと思います。本日のプレゼンを聞いて、何か疑問に思ったこと、追加で聞きたいこと、なんでもいいので質問がある方は挙手をお願いします。どうぞ。

変革は、小さな成功体験から始まる

(質問者A)中村さんに質問です。wevoxのようなサーベイを導入する際、マネージャーや従業員から拒否反応が出ることもあると思うんです。人事に知られることに抵抗がある人も一部いると思っていて。実際にネガティブな反応はあったりしますか? またその反応に対して、どのように対応されていますか?

(中村)確かに拒否反応が出る場合もありますので、伝え方が重要だと思っています。特に相手がマネージャーで、部下のエンゲージメントが自分の評価に繋がるケースでは、よく抵抗が見えます。そういうときは「このサーベイはあなたのマネジメントを良くするための武器ですよ」と伝えるようにしています。メンバーでいうと「サーベイを取って何か変わるのか」と最初に思う方もいます。そういうときは、例えば空調を下げるといったように、小さなとこから変えていく。小さな成功体験を積み重ねることで、「サーベイは意味があるもの」という認識を持ってもらいますね。

(島津)小さな成功体験ですか。確かに、「声を上げたら動いてくれるんだ」という実感を持ってもらうことで、後々の大きな変化に繋がってくると思います。質問ありがとうございました。次の方どうぞ。

(質問者B)久米さんにお聞きします。「ワーク・エンゲージメント」という言葉は厚生労働省(以下「厚労省」)内ではどのくらい普及していますか?また、今回の提言の実行結果を今後どのような形で発信していきますか?

(久米)ありがとうございます。まず、言葉について。去年と今年の労働経済白書の中に「ワーク・エンゲイジメント」という言葉は出てきています。今年に関しましては、一章丸々使って「ワーク・エンゲイジメント」について説明しているんですね。

ただ実際は、厚労省内に本日のお話を全て理解できる、自分の言葉で説明できる人は正直そこまでいないと個人的には思います。「働き方改革といえば、労働時間削減」という認識を持つ人はまだまだ多いです。その分、まだまだ変えていける余地はあると思っています。

どうやって発信していくかについては、やっぱり厚労省の広報室を通して資料を出しても、どうしても役所感が出てしまうと思っています。従来のやり方では多くの人に見てもらえない。ですので、FacebookやTwitterといったSNSなどの様々な手段を少しずつ試していって、日頃から発信をしていきたいと個人的には思っています。

ハードとソフトは車の両輪?

(質問者C)ワーク・エンゲージメント向上の打ち手には、先ほどお話にあった空調の調整のようなハード面、そして人間関係といったソフト面があると思っています。本日のお話を聞いて、私個人としてはソフト面のほうがどちらかというと有効だと思うんですけど、みなさんはどう思われますか?

(中村)同感です。でもオフィス環境があまりにもひどすぎると仕事になりませんよね(笑)。そう考えたら一概には言えないですね。しかしおっしゃる通り、例えばテレワークを認めたらエンゲージメントが必ず上がるのかと聞かれると、そんな単純な話じゃないです。我々はよく、働き方改革ではなく働きがい改革と呼んでいるんですが、ハードとソフトの両面でのアプローチが働きがいに繋がると思います。

(久米)ハード面の話でいうと、私たちの職場の廊下は元々ものすごく暗かったんです。照度計で測ったところ、他省庁の廊下の明るさが100ルクスから200ルクスあったんですが、我々が使う廊下は6ルクスしかありませんでした。ろうそく一本より暗かったんです(笑)。そこを改善したところ、職員からポジティブな内容のメールをいくつももらったんです。中には「足に障害があって、怖かった。改善してもらえてよかった」という内容がありました。ハードを1つ変えることで、気持ちに少しずつポジティブな変化が起こったんです。

(島津)ハードは働きやすさに関係してきて、ソフトは働きがいに関わるものだと思います。フィンランドのとある銀行の事例なのですが、従業員の働きやすさにアプローチするためにオフィス移転をすることになったそうなんです。その際、どのようなオフィスにするかを従業員みんなで話し合ったことがきっかけで、コミュニケーションが活性化し、従業員のエンゲージメントが向上しました。この事例を知ったときに、ハードとソフトは車の両輪と同じで、結局両方が大事ということを再認識しました。

時代の変化に合わせて、働き方を変化させなければならない

(質問者D)東原さんにお聞きしたいんですが、ワーケーションといった施策を、自社だけではなく他社に導入する際、どのように行いますか?また久米さんにも1つお聞きしたく。実際に本日の話に出てきたような組織改革を厚労省といった官庁でできますか?

(東原)本日お話したワーケーションなどの施策は、弊社で2年間やってきましたが、すぐに浸透したわけではないんです。どうしてかなと思った時に、大小関わらずグッドケースがあまり社内で知られていないことに気づき、見せることの重要性を感じました。実際に施策を行なった人の中で「もうやりたくない」と言う人は1人もいません。むしろどんどん新しいことを実行していっています。そういったポジティブな循環を起こすことが重要だと思っていますね。

またワーケーションの例でいうと、豪華なワークスペースがなければできないのではないか、パッケージプランがないとできないのではないかという声を聞き、大きなハードルを感じている方が多いと思うんです。でも実際は小さなところからの積み上げであり、それを正しく伝えていくことが浸透には効果的だと思っています。小さい成功体験で効果を実感し、価値があると判断がされたら予算が投下されていってどんどん大きな変化を生んでいく。様々な情報手段を駆使していって、導入のリアルな部分の見える化を進めていきたいと思っています。

(久米)来年、官庁で全員が本日話にあったような新しい働き方できるか?と聞かれたらさすがに難しいと思います(笑)。一方、私自身が現在半分はこのような働き方をしてきて思うのは、1人が実行するのはそこまで難しいものではないということです。

今年の1月に家族で大阪のユニバーサルスタジオジャパン(以下「USJ」)に旅行に行ったんです。そのときに、どうしてもやらなきゃいけない仕事があって、子どもと奥さんがUSJで遊んでいる間、私は数時間だけカフェで仕事をしたんです。必要に駆られて、ワーケーションのような働き方をしたんですね。今後、仕事は場所や空間に限らずできるものになっていきます。会社じゃないとできない仕事はどんどんなくなってくる。こういった流れは変えられないですし、役所だからできないということもないと思っています。既存の働き方に執着していても新しい人が誰も入ってこなくなるので、僕たちも変化せざるを得ません。休日の旅行中でも仕事をしなくちゃいけないという考え方だとしんどくなりますが、職場にいなくても仕事ができる、柔軟に仕事と休みを分けられるという考え方で導入を進めていきたいですね。

(島津)ありがとうございました。みなさん、いかがでしたか?

本日は、いかにして全ての社員が活き活きと働けるかというお話をしていきました。良いサービスを社会に提供するためには働き手自身が幸せじゃないといけない、そして時間と空間に制限されない働き方が今後主流になっていく、という2つの内容が個人的には印象に残るお話でした。本日登壇された方々のような、官庁や民間企業の方がみんなで協力し合って、新しい働き方を実現していきたいですね。本日はありがとうございました。

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