INTERVIEWEE

日本航空株式会社 東原祥匡氏

人財本部 人財戦略部 ワークスタイル変革推進グループ アシスタントマネジャー

11月22日(金)、東京ミッドタウンタワーで【第24回慶應義塾大学 SFC Open Research Forum 2019「働き方改革とワーク・エンゲイジメント」セッション】が行なわれました。今の時代は働き方改革が進み、多様な人材の活用、柔軟な働き方が求められています。どうすれば働く人々が健康で活き活きと働けるか、「ワーク・エンゲージメント」をキーワードに研究者、省庁職員、大企業やベンチャー企業の社員など、様々な領域の実践者でトークセッションを行ないました。働き方の最前線を知れる、トークセッションのレポートを4回に分けてお届けします!

社員が活き活きと働いていないと、良いサービスは実現できない

こんにちは。日本航空(以下、JAL)の東原です。私からは、「日本航空におけるワーケーションの取り組み」という題目でお話しします。最初に、軽く自己紹介を。私は今の会社に13年間勤め、人財戦略部という人事の部署に所属しております。ワーケーションなどの人事制度を作って、社員の理解促進、そして会社全体への浸透を担当しています。また、意識改革に加え、勤怠などの労務管理も行なっています。

弊社の企業理念は、「お客さまに最高のサービスを提供します」、そして「企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します」です。人によって、安全性や快適性など、「最高のサービス」の定義は異なりますが、多様化するお客さまのニーズをおさえて今後も実現させていきます。また、後者の理念については「JALがこの世にあってよかった」と社会に思っていただけるよう、永遠の課題にはなりますが、どんどん追求していきたいと思っています。

この2つの理念を達成できる企業になるためには、まずは社員に活き活きと働いてもらえる、働き続けていきたいと思ってもらう必要があると考えています。そうでないと、お客さまのニーズをキャッチし、期待を上回るサービスを行うこともできません。社員に活き活きと働いてもらえる環境を実現することが、私が所属する人事の部署のミッションです。

2011年から、弊社のトップが経営戦略としてダイバーシティ宣言を掲げており、ほぼ毎年、その時々の会社の課題に合わせた目標を掲げています。本日お話する内容は、2015年、2017年の目標である「ワークススタイル改革」の一環で行なってきたことについてです。働き方改革という言葉が出てきたのもちょうどこの時期だと思います。弊社のなかでの分かりやすい例として、昔は固定のデスクとデスクトップ型のパソコンを使っていましたが、現在はフリーアドレスにしています。細かいところでは、ノートPCや社給のスマートフォンの貸与など、最初はこうしたことから始めてきました。

また、総実労働時間の削減も目標を立てて行なっており、「時間と場所のフレキシビリティ」を高める制度作りを進めてきました。時間外休日労働時間が多すぎると、社員は自らのプライベートの時間を犠牲にしたり、自己研鑽の時間を取れなくなってしまいます。そうなってしまうと、会社としても前に進めません。社員が自らの時間をマネジメントできるようになることで、一人ひとりの生産性が上がり、全員がやりがいを持って働けるようになる。そう考えています。

フレキシブルな働き方を実現する「ワーケーション」

さて、本題のワーケーションの話に移ります。近年、街中で聞こえるようになってきたと思いますが、ワーケーションとは、休暇時の仕事を認める制度として一般的に定義されています。どういうことかというと、例えば4連休で旅行を予定していた社員がいるとします。しかし仕事の都合上、その4連休の2日目にどうしても出なくちゃいけない会議が急遽発生してしまいました。今までだと、スケジュールを無理やり変更したり、旅行自体を取りやめたりしなければいけませんでした。しかしながら、ワーケーションでは2日目に旅行先で、リモートで会議に参加すれば、その時間を一部業務時間として認められます。つまり、休暇の一部の時間を仕事に充てて、あとは旅行を楽しんでくださいね、という制度になります。本来の4日の休暇は取れなかったとしても、ゼロではなく、3日半は確保できることとなり、弊社の場合は休暇取得促進の観点からも導入をしております。

こちらの写真は私なのですが、昨年のゴールデンウィークにシンガポールに旅行に行った際、一部の時間をワーケーションとして仕事を行なったときの様子です。導入当初は、「なんで休日も働かなくてはいけないの」という声が上がっていたんですが、理解や浸透を進める方法の1つとして、まず私自身がワーケーションの制度を利用してみました。

その他にも、ワーケーションに関する施策を会社全体でいくつか行なってきたので、いくつか事例を紹介いたします。

みなさん、鹿児島県の徳之島って行ったことありますか? あまりいないようですね。徳之島は鹿児島と沖縄の間にある離島で、島には学校が高校までしかありません。大学からは島を出なくちゃいけない。また、島に就職先の候補となる企業も多くあるわけではなく、「このままでは町が成り立たない」と人口減少など長期的な課題として役所の担当者は危機感を覚えていました。そんな徳之島の方々から「今すぐ移住を増やすのは難しい、今後のための知見を得たい」ということで、ワーケーションを行なっている我々にお声がけいただきました。実際に徳之島でワーケーションを行ない、リモートで業務行う環境についてのフィードバックがほしいと言われたんです。

20人の社員とその家族と3泊4日で徳之島に滞在し、社員が仕事をする際は、指定のコワーキングスペースを利用しました。今年の2月に東京で報告会を行なったのですが、実際に滞在した社員の感想が「自分の将来や人生を改めて考え直した」「遠く離れた場所で自分の仕事を俯瞰して見ることができた」などポジティブなものばかりだったんですね。離島ということもあり、「公共交通機関としての使命感を再認識できた」という感想もありました。ワーケーションを遠隔地で行うことで、社員自身が普段気付けなかったようなことを改めて考える機会になるのではないか。同時に、関係人口の増加など社会に貢献をできるのではないかと、改めてワーケーションの意義や魅力を認識しました。

また、今年は北海道、愛媛、オーストラリアの3箇所で、ワーケーションにアクティビティをプラスする試みも行なっております。北海道に行った人はビールの醸造体験、愛媛の人は現地で農作業体験、オーストラリアの人はインバウンドについて現地の方とディスカッションをするなど、休暇にアクティビティを設けることで、より意義のある時間を過ごしてもらうことを目的にしています。変化の激しい今の時代に、働き方と休み方を自分で柔軟にマネジメントできる自律型の人財をこれからも増やしていきたいと思っています。

リモートワークも毎年増えていて、台風のときに在宅勤務に切り替えるなど、活用がどんどん広がっている印象です。ちなみにワーケーションに関しては、去年1年間で150人以上の社員が活用していて、バランスよく活用する社員が増えています。

企業・個人・社会。みんながWin-Winになる新しい働き方への挑戦

今後の可能性として、企業としては、時間と場所に捉われない柔軟性のある働き方の推進に。個人としては、いつもと異なる環境と経験で自己成長と新たな活力に。そして、社会には地域活性化へ繋がる新たなワークスタイルの提示になればいいなと考えております。みんながWin-winになれる、日本全体の働き方改革に繋がる取り組みにしていきたいですね。

休みの中に仕事を入れるのがワーケーションですが、出張に休暇をつけるブリージャーという制度も最近始めています。アプローチの仕方は違いますが、その土地でしか体験できないことを通じて社員の感性を高める取り組みを進めています。

最後に、私が参加しているプロジェクトを紹介します。自分たちが進めてきた取り組みを、社内だけじゃなく世の中にも広めたいと思い、「MINDS」という異業種連携によるミレニアル世代の働き方改革推進コミュニティに入っております。

私はミレニアル世代から外れちゃっているんですけど(笑)、いろんな会社からメンバーが集まってきているコミュニティです。MINDSではいろいろなテーマがあり、参画企業のメンバー混合でチームを編成していますが、私は「時間と場所の制約からの解放」というテーマのチームリーダーを務めています。ワーケーションといった働き方に関する取り組みを新たに始めようとすると、「生産性はどうなの?」や「エビデンスは?」といった質問が抵抗勢力から飛んできて、なかなか実施できないことが多くあると思っています。日本の労働力人口の不足は今後大きな課題となっており、より柔軟性のある働き方が求められて生きますが、そこをあえて異業種多職種でチームを組み実践することで、「私にはできない…」ではなく「やってみよう!」という風土が世の中に広がり、出来上がっているように感じています。

現在は、ワーケーションをハワイで行ない、心情のアンケートを行って定点観測していくことで働く人の心理変化を読み取るプロジェクトをやっています。このように社内に留まらず、社外でプロジェクトを組んで発信することで、より多くの企業の働き方を変えるきっかけになればいいなと思っております。本日はありがとうございました。

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