2019年7月5日(金)、渋谷ヒカリエで行われた世界最大規模のチームカンファレンス「PxTX」。業界を越境し、豪華ゲストたちが多様な視点で「これからのチーム」を語り合ったこのイベントでは、数々の記憶に残るセッションが行われました。この貴重なセッションをもっと多くの人に届けるべく、今回特別にDIO編集部がセッションの内容を“ほぼ”完全レポートしちゃいます!第3弾のテーマは「Fan × Team」。多くのファンを抱える表現の世界で、どのようにチームを作っていくのか、ダンス、音楽、テレビ、異なる3つフィールドでご活躍されている方々にお話してしただきました。いいモノをつくるためのチームリーダーが持つべきマインドや人の巻き込み方など、充実したトークセッションの全容をお届けします!

SPEAKER

KITE

ストリートダンスの中のPOPというジャンルの世界タイトルを13年維持し、現役の世界チャンピオン。高校時代、野球少年として過ごすが、そのころにダンスと出会い、踊り始める。 大学時代に、本格的な活動を始め、この10数年、アーティストのミュージックビデオやライブへの出演、国内外でのインストラクトをしながら、数々の世界大会に出場し制している。2015年に、アメリカの権威ある世界大会「HIP HOP INTERNATIONAL」で優勝し、世界大会のジャッジの資格を取得。近年は、国内の教育現場や企業等での講演会など活動の幅を拡げながらも、1年のうち数か月を海外で過ごす。2019年の8月にオランダで開催された「Summer Dance Forever」で二連覇を達成。きゃりーぱみゅぱみゅ「CANDY CANDY」「インベーダーインベーダー」、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE 「Eeny, meeny, miny, moe!」などに出演。

 

亀田誠治氏

1964年生まれ音楽プロデューサー・ベーシスト。 これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツ、GLAY、いきものがかり、JUJU、エレファントカシマシ、大原櫻子、GLIM SPANKY、山本彩、石川さゆり、東京スカパラダイスオーケストラ、MISIAなど数多くのプロデュース、アレンジを手がける。 2004年に椎名林檎らと東京事変を結成し、2012年に解散。 2007年第49回、2015年第57回の日本レコード大賞では編曲賞を受賞。 近年はJ-POPの魅力を解説する音楽教養番組『亀田音楽専門学校(Eテレ)』シリーズが大きな反響を呼んだ。 2019年6月1,2日に開催されたフリーの音楽祭「日比谷音楽祭」では実行委員長として全体プロデュースを行った。2020年5月30,31日には、第二回目の日比谷音楽祭が開催予定。

 

加地倫三氏

テレビ朝日総合編成局第1制作部 EP(エグゼクティブプロデューサー) 1969年、神奈川県生まれ。上智大学卒業後、1992年テレビ朝日に入社。 スポーツ局に配属され「ワールドプロレスリング」ディレクターに。 1996年に編成制作局に異動し、バラエティ番組担当に。 「ナイナイナ」ディレクター、「リングの魂」演出・プロデューサーを経て、現在は 「ロンドンハーツ」「アメトーーク!」等の演出・エグゼクティブプロデューサーとして活躍。 

共犯者になることで、チームの結束を生む

(KITE)はじめまして。プロのダンサーとして活動させていただいておりますKITEと申します。国内外でダンスのインストラクターやコンテスト等の審査員もしています。この会場の中で私のことをご存知だという方、一度手を挙げていただいてもよろしいですか? なるほど、ほとんどいないということで(笑)。僕も実際、そちら側に座って学ぶべきだとは思うんですけども、今日はみなさまの助けになればと思い、僕が色々経験したことを中心にお話させていただこうと思います。

(亀田)みなさんはじめまして。音楽プロデューサー、そしてベーシストとして音楽を作ったり、イベントを開催したりしています。音楽一筋、亀田誠治です。こうやってみなさんの前でお話できる機会は本当に貴重だと思っています。僕はこれまでずっと音楽で人を繋いでいく活動をしてきました。初めて僕の話を聞く人もこの時間を楽しめるよう、音楽の楽しさだったり、音楽以外の分野にも共通するチームづくりについて、面白く、愉快にお話できればと思います。

(加地)テレビ朝日の加地です。普段は「ロンドンハーツ」と「アメトーーク!」という番組で、企画を考えて構成したり、演者さんと打ち合わせして収録に臨んだり、編集したりということをやっています。この春には、「テレビ千鳥」と「霜降りバラエティ」という2つの番組を立ち上げました。今日は僕1人だけ裏方で、どちらかというと皆さんに近いポジションかなと思っています。KITEさん、亀田さんの天才お二人とみなさんの間に入れたらいいなと思っていますので、よろしくお願いします。

(KITE)今日のテーマはチームということなので、最初にチームづくりについて話していきたいと思います。僕は普段ダンスをやっているので、個で活動していることも多いんですが、それ以外にもチームリーダーとして10人ぐらいのチームを束ねて活動しているんですね。チーム活動を進めていくうえで、僕はいつもメンバーとの距離感を大事にしています。

ダンスの現場で集まるだけだと、ストイックにベストを追求していく中でいろんなストレスが生まれて、どうしてもぶつかったりギスギスしてしまうことがあるんですね。ですので、僕らはダンスと全く関係ない部分で時間を共有するようにしています。例えば、僕らは毎年石垣島に行ってボートレースに参加するんです。一艘だけ乗組員が全員ダンサーという異様な光景にはなるのですが(笑)、石垣島のみなさんが毎年行っているお祭りのレースに参加させてもらっています。

そうやってダンス以外で一つの目標に向かって協力することで、お互いが楽しくコミュニケーションを取れますし、レース終了後は勝ち負け関係なく同じ達成感を味わえるんですね。その結果距離感が縮まり、普段言えないちょっとした愚痴を言える環境ができるので、チームの結束を強めるいい機会になっています。身近な場所でいえば、東京でラウンドワンに行ってみんなでボウリングもします(笑)。ダンス以外の日常の時間を共有して、何でも言い合える環境をつくるよう僕は意識していますね。亀田さんのチームづくりの取り組みを教えてもらってもいいですか?

(亀田)僕の場合、最初に組むのが、僕とアーティストの2人チームなんです。ここでまずチームづくりが必要になるんですね。この最小単位のチームで一緒に音楽を作っていくにあたって僕が一番時間を取って大事にしているのは、とにかく相手の話を聞くこと。

アーティストが何をやりたいのかといったクリエイションの話はもちろんのこと、例えば「最近のどの調子が悪い」とか、「今朝彼氏と喧嘩してきた」とか、そういう話に耳を傾けるようにしています。僕こうやって話すのも好きなんですけど、聞くのも好きなんです。アーティストが僕に対して愚痴も希望も吐き出してくれる。アーティストはそうやって話すことによって自分の考えていることが整理できるんですね。僕はなるほど、と聞いているだけで特に何にもしてないんだけど、話していく中でアーティストの中で気付きが生まれていくのではないでしょうか。最終的にアーティストは、自分が腑に落ちたところからモノづくりに入っていく。

こういった導入を毎回意識していますね。話を聞くことによって、僕がアーティストの映し鏡になるんです。僕を通じて、自分が見えてくる。ここでチームとしての強力な結束がまず生まれます。これを大事に育んでいくっていうのが僕の最初のチームづくりです。とにかく聞く。下は10代から上は70代のアーティストまで、幅広く話をいつも聞いています。

(加地)質問なんですけど、最初の段階で亀田さん自身「こういう方向に持っていきたい」というものは当然お持ちと思うんですけど、そことアーティストの要望が遠かったらどうされるんですか?

(亀田)もちろん持っています。「こうやればいいんじゃないか」という自分なりの答えは常にあるんですけど、自分からそれを出さないようにしています。まずは、アーティストの言うことに対して、「一回やってみよう」とトライするようにしていますね。例えばアーティスト側が「テンポを早めたい」と言ったときに、僕の中で「この曲はバラード調にしたほうがいいのにな」と思ったとしても、一回トライしてみます。

今はコンピューターでもシミュレーションできますし、バンドならバンド内でも演奏できるので、そんなに手間がかかることではないんです。やる前にこっちから「それは違うんじゃない?」と言っちゃうと、アーティストも心が折れてしまい、いいものが生まれなくなるので、否定から入らないと決めています。また結果がどうであれ、トライすることで僕も共犯者になるんです。一緒に失敗を経験することで、チームの結束が生まれることもありますね。

リーダーの務めは「素早く決断すること」

(加地)番組作りの場合、僕ら制作サイドが何カ月もかけて練った企画案を打ち合わせに持って行ったとき、演者さんの反応がよくないといった場面がたまにあります。そんなときに打ち合わせが下手な制作の人間は、自分の考えをゴリ押しするみたいなんです。そうすると演者が意固地になってしまって、結局破談に終わってしまいます。もしくは、無理やり言われた通り演者が動いても、本番でいいパフォーマンスを出せず、両者得しないで終わるみたいなことも起こり得ます。

なので、僕は企画を持っていったときに、演者側から少しでもネガティブな反応を察知したら、まず相手側の立場に立つようにしています。僕は制作側だからこれが正しいと思っているけど、演者側は多分違う立場で考えを持っている。そうやって相手側に立つことで、僕らが考えてきた企画の良くない部分ってのが見えてくるんです。なので、まずは相手側に立つようにしていますし、演者がやりたくないことは絶対にやらせないようにしています。

以前、僕が担当する番組で、企画も固まって、演者全員との打ち合わせも終わって、収録まで1週間というタイミングで、ある1組の演者に「この企画やりたくない」と言われたことがありました。その演者の話を聞いて、その人の芸風とか色々考えると、やりたくない理由は理解できた。それでも僕はやりたかったのでけっこう粘ったんですけど、結果ダメでした。それで、残ったメンバーだけで別の企画にして収録をしたところ、とても面白いものになって、新たな発見もありました。同時に、チームのリーダーは早く決断することが求められるということを感じましたね。

(亀田)さっきトライするって言ったけど、もし失敗した場合、その状態から早く脱出するために素早く決断して切り替えることが大事ですよね。ずるずるいくのはよくない。チームづくりにおいて、最初のトライアルはやるけれども、極力アーティストに無駄な道は歩かせないことはすごく気を付けるようにしています。無駄な道というのが経験値としてプラスになればいいんですけども、例えば映画の主題歌を作ったりする場合は、クライアントの要求も入ってくることもあるんです。そうした状況でうねうね蛇行運転しちゃうと、全く方向が定まらず誰も幸せになれない状況が生まれてしまうので、決断は瞬時に下すようにしています。

そういうときにチームリーダーとして大事なのは、間違った決断をしてしまったときに「ごめん!」と素直に謝れること。

僕の大好きなアーティストで10-FEETというバンドがいて、ボーカルのTAKUMAくんが「僕らは、ありがとうとごめんなさいでここまできました」って言っていたんです。最高のロックバンドなのに、そういう謙虚さを持っているんですよ。彼らにはポジティブなオーラがいつもあって、ファンがさらに新たなファンを見出すという素晴らしい循環が生まれています。「ありがとうとごめんなさい」、これはもしかしたらすごく重要なキーワードなんじゃないかと思います。

(KITE)いい言葉ですね。「ありがとうとごめんなさい」、僕も使っていきます(笑)。

モノづくりでは初期衝動を見失ってはいけない

(KITE)続いて、チームで1つのものを作り上げていくプロセスについてのお話をしていきたいです。お互いが関係性をうまく保って、いいものを目指す。そうやってベストオブベストを作ろうとすると、妥協していい部分と妥協しちゃいけない部分が出てくると思うんですよ。ダンスの場合、毎回パフォーマンスを作っていく時に、同じものじゃいけないんですね。常にフレッシュさが求められるんです。

そうやって、新しいものを作っていくときって、チームメンバーそれぞれの個の意見がぶつかるんですよ。だけど、さっき亀田さんがおっしゃったように一回試してみるようにしていて、結局最初の発想に戻ることとか多かったりもします。また、煮詰まっていた部分の真逆のものをあえて試してみることもあります。違った局面を作って選択肢を増やすことで、みんなで納得いくものを作り上げるようにしています。

(加地)妥協というより、違う方法を色々試すということですね。

(KITE)そうです。その都度その都度のベストを見つけていく考え方です。音楽の場合はどうされていますか? ゼロから新しいものを作るじゃないですか。時代や状況によって作り方は違うと思いますが、お聞きしたいです。

(亀田)ダンスと音楽はかなり共通項が多いと思います。KITEさんのおっしゃる通り、「なぜこの曲を作り始めたのか」という原点に立ち戻ることはすごく重要です。モノづくりをしていく中で僕がいつも思うのは、初期衝動に勝るものはないということ。作り手の人生のいろんなかけらが集まって「こういう曲を作りたい」という衝動が生まれるんです。

よく初期衝動というと、パッとその場で思いついたもの、ひらめいたものと捉えられがちなんですけど、僕はそれは違うと思っています。その人のバックグラウンド、チームのバックグラウンドがあったうえで初期衝動が存在すると思うんです。そうした原点を見失わないようにするのは大事だと思っています。

また、さっき映画の主題歌の話をしましたけども、クライアントなどいろんな登場人物が加わると意見はことごとく割れてしまいます。僕としては「一緒に作り上げていくアーティストを守る」という立場も取るんですけど、作り始めたときからクライアントとも対話を積み重ねているわけです。なので、クライアントも疎かにできない。アーティストとクライアントの意見がそれぞれ全く違う方向に向かっているとき、僕は一回間を取るようにしているんです。よくモノづくりで傑作が生まれるときは振り切ったほうがいいとか言うじゃないですか。中途半端はよくない、と多くの人が考えている。そういう場合ももちろんあるんですけど、意見が割れたときは、両者の良い部分のベストオブベストを一度集めて、重なった部分でトライしてみるようにしています。そうすることで、1つの初期衝動で生まれなかった新しいものが生まれたりするんです。2つの初期衝動が集まることで、今までとは違う方向に飛距離の長いベクトルが生まれたりするんですね。

(KITE)両サイドの初期衝動を抑えているわけではないってことですね。

(亀田)そう、両方の初期衝動のいいところをぶつけているイメージだよね。

制約という存在が面白いものを生む

(加地)積み上げていっているってことですよね。すごくわかります。ベストオブベストという言葉が出たと思うんですけど、ベストなんていっぱいあるじゃないですか。何が正解というのもわからない。僕も企画を考えたり、想像したりするときって、きっかけがないといいアイデアは思いつかないんです。天才は急にアイデアが降ってくることもあるかもしれませんが、僕なんかは何かきっかけがないとだめで、そういうときに助けになるのが制約だと思うんです。

僕は、制約から企画を考えていると言っても過言じゃないくらい、制約を重要視しています。だから、何か嫌な制約が来たときって、ちょっとありがたいと思っちゃうんですよね。例えば、自分たちとは真逆の方向性を急にスポンサーから要求されることもあります。そんなときに「うわーなんでだよ」と思うんじゃなくて、「一回これを取り入れてみよう」と思うことが大事な気がします。結局今まで持っていなかった視点が新しく入るから面白くなったりするんですよね。元々自分の引き出しにないものが飛び込んでくるので、結果次から自分の引き出しが増える。プラスの要素しかないんです。なので、否定的な意見ってすごくありがたいと思っています。身内で意見交換し合うときも、意に沿わないことを言われても「なんでこの子はこういう発言をしたんだろう」というのを聞いてあげて、そこから考えてみたりもしています。

(KITE)ダンスにはポップという歴史や伝統の部分が強いジャンルがあります。そのジャンルの中で作ったダンスが新しすぎると、「それポップじゃないよね」と言われてしまうんです。新しいものを作ろうとしすぎて、枠から飛び出しすぎてしまうと本末転倒になってしまう。だから、僕らは伝統を守りつつも、牧場で例えると柵のギリギリのとこまでいくようにしています。

(加地)伝統や歴史って究極の制約ですよね。

(KITE)そうなんです。その中でギリギリを作っていく感覚で僕らは新しいものを生んでいきます。音楽も通じるものはありますか?

(亀田)音楽にも必ず伝統というものがあって、何十年も何百年も前からある名曲やフレーズは、細胞レベルで浸透していると思います。「この曲いいな」「このメロディいいな」という感覚はどんなに革新的なアーティストでも、共通項として存在しています。意識せずとも、伝統的なものが頭の中に残っているといったイメージでしょうか。

面白かったのが、ものすごく攻めた音楽性のアーティストが「紅白見て感動して、涙出ちゃった」とか言うんですよ。「この人紅白見るんだ」と驚きました。大衆から親しまれているような音楽と真っ向から対峙して戦っているような攻めのアーティストが、意外と紅白で流れるような音楽に対してすごい心を開いていたんです。

また、少し話は変わるんですけど、伝統と革新を繰り返していく中で、少し攻めのモノづくりをしたときに、全員「危ないかも」という感覚を持つことがあるんです。先ほど話した通り、伝統といった守りの意識は全員共通項として持っているからです。だから、いい音楽を作っていく中で、そういった危機感を感じるときに「これいけるんじゃない?」という言葉をかけてあげられるチームリーダーが必要です。さっきKITEさんがおっしゃった「この柵超えたら危ないんじゃない?」というときに「超えちゃいなよ」「大丈夫だよ」と声をかけて、背中を押してあげるリーダーの存在がチームにとっては重要だと思います。

(KITE)共通する部分がたくさんあって、面白いですよね。テレビ番組はどうやって作っているんですか?

(加地)テレビ番組の場合、僕は良い視聴率を取ることよりも、終わらせないことが重要だと思っています。何か1つの企画がヒットしても、その企画を乱発するようなことはしません。なぜなら「この番組はこうだよね」と視聴者に思われると、飽きられてしまう。飽きられないためにも、とにかくいろんな方向にいろんな球を投げて、番組のイメージの範囲を広げて、「この番組ってこうだよね」という解釈に多様性を持たせるようにしています。

例えば「アメトーーク!」に対して、フリートークが面白い番組と思っている人もいるかもしれないし、アニメを扱うから面白い、スポーツをよく取り上げていると思う人もいる。下ネタとか下らないことやっているよねとか、何でもいいんです。幅を広く取ることが大事で、ラインナップを見て、今番組にない要素は何かを常に考え、新しいものを模索するようにしています。

この前「アメトーーク!」で「チェリー芸人」という企画をやりました。すみません下ネタで(笑)。まだ夜の行為をしたことがない芸人だけを集めて、性の話を地上波でやるという企画で、出演者は知名度の低い若手が多くなる。知らない人が出ているから、馴染みがない。馴染みがないから見る人が減り、視聴率が下がるリスクがある。下ネタなので嫌われる可能性がある。それでも「いくんだ」という判断を下しました。

チーム内外に味方を増やして、いいモノをつくる

(加地)加えて大事なのが、こういった攻めの企画を関係各所に理解してもらうことです。企画を通すために、番組スタッフや上司、編成部の担当に「なぜこの企画が必要か」理論武装して説明しました。

孤立したら意味がないですし、結局チームで動く以上、反対派が多いと自分のやりたいことはできなくなります。大事なのは味方を増やすこと。番組というのは、大道具や小道具など合わせて合計100人くらいのスタッフがいて、会社側にも営業する人、管理する人、お金の計算をする人などたくさんの人がいます。その中で、自分がこれをしたいというときに、応援してくれる、そして守ってくれる味方の存在はとても重要になってきますね。味方を増やすためにも、先ほど出てきた「ごめんなさい」と「ありがとう」が大事なのかもしれませんね。

(KITE)人間関係が大事ということですよね。そう考えると、音楽もダンスもテレビも、同じベクトルを向いた人がたくさんいたほうが、いいモノづくりができるんでしょうね。

(亀田)自分の周りで一緒に動いている人だけじゃなくて、チームの外で賛同してくれる人、応援してくれる人を増やすというのはすごく大事だと思っています。音楽をやるにしても、イベントやフェスをやるにしてもそうです。アーティストそのものにももちろんカラーはあるけれど、応援する人にもカラーというものができてくるんですよ。

多くのカラーが混じり合って、いろんな色のグラデーションが生まれた結果いいものができる。水の中に石を投げると波が円形に広がっていくように、面白いぐらい輪が広がっていって楽曲が成長していくんです。「チームの外にもチームがある」といったイメージを持ちながら進むことも大事ですよね。

リーダーは絶対弱音を吐いてはいけない

(KITE)チームとしてやっていく場合、いい方向に転がるばかりではないと思うんですよね。例えば、チーム内で1つのものを作ろうと切磋琢磨し作り上げたけど、結果がついてこなかったり、自分たちが思っていたものと違う反応が来ることって必ずあるじゃないですか。そういうときのリーダーとしてのあるべき姿勢ってどういうものだと思いますか?

僕はスーパーマリオのスター状態のように、どんなに劣勢で、どんなに批判が集まろうとも、全部跳ね返すぐらいの気持ちでいるようにしています。ただチームメイトはそうでもなく、打たれ弱いメンバーも多かったりもします。「おれらダメなのかな」と全体が落ち込んだときも、作り上げたものに対するプライドは捨てたくないし、僕だけはぶれちゃいけないと思っているんです。「自信持っていこうよ」と全体に声かけをして、心が折れそうなときにも頑張ってみんなを引っ張るような感覚を持つようにしています。

(加地)ポジティブな声かけをしているときも、実は心はグラグラしてたりしませんか?

(KITE)ものすごくしていますよ! でも、「よしやるぞ」と言って全体を引っ張ってきた手前、自分が折れたらカッコ悪いと思うんです。なので、どんな状況でも、無理をしてでもポジティブなスタンスや声かけは忘れないようにしています。

(加地)これ今日みなさんに一番聞きたかった話なんです。失敗したとき、部下の人たちにどういうスタンスで接しているんですか?

(KITE)僕の場合は、常に強気と言いますか、一緒に落ち込んで傷を舐め合うのも時にはいいとは思うんですけど、ダンスシーンは流れが早いので、1人が旗を持って立ち上がって次に進まなくちゃいけない。そうしていくうちに、気持ちが戻ったメンバーがどんどん付いてくるようになるんです。そうやって、先頭に立つ存在でいることを意識するようにしています。亀田さんはいかがですか?

(亀田)とても共感します。ありがたいことに僕は第一線で活躍していると思ってもらえているんですけど、僕が作った楽曲の中には、残念ながら思い描いた数字を残せないものもありますが、年間数十曲に関わらせてもらっているので、打席数がとても多いんですね。その分、ヒットの数も増えるわけで、ポジティブな結果も目に入りやすく、信頼を得られているところが大きいのではないでしょうか。

そういった中で僕が絶対に取らない行動は、自分から「無理」って言っちゃうこと。例え、2回失敗しても、3回目は必ず結果を出すという気持ちを常に持つようにしていて、自分から「相性が悪い」とか「結果が出ないので降ります」とか言うことは絶対ありません。野球で例えると、亀田監督は勝った試合でも負けた試合でも、必ず最後までロッカールームまでいて、自分たちを守ってくれる、一緒に歩んでくれると思ってもらえる存在でいるようにしています。

そうやって、数字では計れない信頼という結果を出すことを大切にしています。だから、ちゃぶ台をひっくり返して「もうやめてやる!」と席を立つことを一回もしたことがないんです。とにかく粘って、最後の最後まで可能性を追求していく。その姿勢によって、僕のチーム全体が同じようなスタンスを持つようになりますし、アーティストもこのチームと一緒にまたやりたいと思ってくれるんですね。チームリーダーとしてもそうですし、チームとしても、自分達から白旗を上げずに打席に立ち続けるようにしています。

(加地)僕は視聴率という結果が毎週出るんです。4つの番組を担当していると、週に4回結果が出ます。そういった状況で「結果が悪かったから、この企画はダメだった」ということを言ったことは今まで一度もありません。もちろん自分の中で分析をして改善はしますし、作っていく段階で問題点を発見すると言うようにはしています。結果が悪いのは企画だけでなく、裏番組が強かったとか、他にも色んな原因があるので、数字だけで判断しません。でも、どこにも問題がないということはないので、それを考えるきっかけにはしています。むしろ一番反省しなきゃいけないのは、中身が悪かったのに結果だけ良かったとき。「これでいいんだ」と油断したら、そのあと必ず苦しむので、週1回の番組会議で皆に発信します。

(KITE)そうなんですね。リーダーとして動くときってやっぱ責任って一番感じますよね。常に先頭に立つってことになるじゃないか。

(亀田)しかもリーダーの心の迷いとか、主体性のなさとかってすぐ見抜かれるでしょ?

(加地)そうですね。一番ダサいとこですよね。

(亀田)そうですよね。さっき言ったポジティブな意味での「間(あいだ)を取る」じゃなくて、コロコロ考えや意見が変わっちゃったり、変に忖度してしまうと、チームとしてメンバーがついてこないし、アーティストだけじゃなくても、一緒にモノづくりをする仲間達がバラバラになってしまう。そう考えると、リーダーって孤独だね…(笑)。

(加地)だからこそ相談できる仲間がいっぱいいたほうがいいんだと思います。僕は、社内のいろんなセクションに相談できる人を置くようにしています。社外でも作家さんや他のディレクターに話を聞いてもらいます。

チーム力を上げるために「負け顔」を見せる

(KITE)僕の場合、バトルで12年間世界チャンピオンとしてやらせてもらっていると、チームメイトからも、周りからも「完璧なやつ」って目で見られちゃうんです。なので、僕はボウリングでガーターを出したりとか、あえてダメな部分もちょっと見せるようにしているんです。

(加地)わざとですか?(笑)。

(KITE)わざとじゃないです(笑)。僕ボウリングが苦手で、よくガーターを出してしまうんです。ガーターを出して恥ずかしい思いをした瞬間に、それを隠さない、あえて見せるようにしています。そうすることで、より親近感を持ってもらい、距離を縮めるようにしていますね。

(加地)仕事の核となるところで負け顔を見せちゃいけないですけど、関係ないところでは負け顔を持っていたほうがいいですよね。

(亀田)負け顔っていい言葉だね(笑)。

(加地)芸人さんは負け顔を持っているか持ってないかがけっこう大きいんです。負け顔を持っていない芸人さんは毎回、いじりづらいから、いつも1人でゴールを決めなきゃいけないから上手くいかない。

サッカーでいうと、パスなしでドリブルで一人で突破しなきゃいけなくなる。でも負け顔を持っていると周りが助けてくれるんです。すると、チームワークが生まれる。売れている芸人さんは、みんな負け顔を持っています。逆に負け顔を持ってない芸人は売れてないですね。

(KITE)そうなんですか。亀田さんはどうですか? 負け顔というか、ダメな部分とかって。

(亀田)めっちゃ出しますよ(笑)。こう見えてお茶目キャラでスタジオでは通っています。これいつも言うんですけど、「安心して。僕は永遠の『中御所』だから」って(笑)。大御所じゃなくて中御所。中御所になるには条件があって、「怒って帰らない、時間を守る、自分からやめない」この3つは大事にしています。

(加地)中御所っていい言葉ですね! 僕も中御所キャラなので、汚れ仕事は自分からやると決めています。

(亀田)そうそうそう!僕もやるようにしてる(笑)。

(KITE)中御所、いい言葉ですね。このままだと朝まで話し込んでしまいそうなので、ここらへんで一回切り上げましょう(笑)。

セッションの最後に、登壇していただいた4人に「明日からの行動変容」をテーマに色紙にメッセージをいただきました!

KITE「アルデンテでいろ!」

みなさんアルデンテってご存知ですか?パスタの茹で方の一つです。耳たぶくらいの柔らかさと言われていて、中に芯を残すくらいの茹で方のことを指す言葉ですね。僕の思う理想の軸の持ち方と少し似ていて、ヘナヘナする時もあるけど、メインとなる軸はしっかり持っておくべきです。何をやるにしても、頼りなくてもいいんですけど、強い軸を忘れちゃいけません。ここぞ、というときはビシッとしなくてはいけないという意味でこの言葉を選ばせていただきました。

亀田「しなやかであれ!」

自分の思いを貫くことも大事ですけど、まずは相手の心や思いの動きを観察して、いつもしなやかに対応してほしいという思いを込めてこの言葉にしました。僕はよく柳に例えています。柳ってしなやかにずっと揺れているけど、絶対倒れないらしいんです。柳のようにしなやかなスタンスを持って、チームも自分も、チームの外にいるみんなも幸せにしてください。

加地「自分に合ったやり方で」

何事も自分に合っていないと、言葉や行動に魂は生まれませんよね。普段偉そうにしている上司の発言が、実はそのまた上の人からの受け売りだったりする人がいますが、僕が一番嫌いなタイプなんです(笑)。そういう人には誰もついていきませんよね。結局自分に合ったやり方で発言や行動をしないと軌道修正もできませんし、説得力も持たせられません。この感覚を大事にしてほしいと思います。

「1つ頼まれたら2つやる」

1つじゃ自信がないので、2つ目を出します(笑)。この言葉は、僕が就職したときに母から言われたことなんですけど、頼まれてやる1つ目は言われたことそのままやるだけですよね。でも2つ目って自分の頭で考えないと出てこないんです。2つ目を考える癖を身に付けてほしいですね。自分で持つべきスタンスとしても大事ですけど、結果として2倍のものが生まれるので、みなさんにも是非実践してほしいです。

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