INTERVIEWEE

東京ガスパイプネットワーク株式会社 代表取締役社長 綿貫裕之氏

東京ガス株式会社に入社後、主に同社の家庭用市場における営業企画等を担務し、2018年4月の東京ガスパイプネットワーク株式会社設立と同時に代表取締役社長に就任。同年10月の子会社3社における導管維持管理業務を集約し事業をスタートさせるとともに、2020年4月より東京ガス株式会社、および協力企業5社から同業務の移管を受け、さらにその事業規模を拡大。現在に至る。最近、プライベートで横浜マラソンを完走。趣味は登山とキャンプ。

実践的な組織づくり戦略やエンゲージメント解析ツール「wevox」の活用方法を紹介する「DIO PLAN」。今回は、東京ガスグループの一員で、都市ガスの安全・安定供給の確保を目的に都市ガスインフラの維持管理・建設等を担っている東京ガスパイプネットワーク株式会社のケースを紹介します。2020年4月に7社の業務を統合し新しい組織としてスタートしたばかりの同社が、どうやって「ONE TEAM」を目指していくのか、そのためのwevoxの活用法などを、代表取締役社長の綿貫裕之氏に伺いました。

社でサーベイを実施し、3つの職場に絞って「対話」「フィードバック」を重ねる

―まずは、wevox導入の流れを教えてください。

2020年2月からトライアルを実施し、当時の社員約270名を対象にサーベイを行い、全社や部所ごと、年代別など様々な切り口で結果を確認することができました。

その後、7月からは全社一斉スタートではなく、3つの職場において「対話」と「フィードバック」をセットで実施するというスモールスタートを開始しています。これには、大きく2つ理由があります。

1つは「自主性を尊重したい」と考えたことです。当社では、エンゲージメントの高い組織、すなわち「社員一人ひとりが組織や仕事に対して自発的な貢献意欲を持ち、主体的に取り組むことができる組織」を目指しています。そういった自主性は、命令や強制によっては決して生まれません。「会社に言われたから取り組む」ようでは、本当の意味でのエンゲージメントの高い組織は実現できないと思っています。そのために、wevoxを活用した組織づくりに関心を持っていて、自発的に取り組める職場を選び、その3つの職場からスタートしたのです。

―2つ目の理由は何でしょうか?

当社の中にノウハウを蓄積することです。エンゲージメントの向上という今回の取り組みは、東京ガスグループにおいては初めての取り組みであり、当社としても経験やノウハウを持ち合わせていません。

したがって、まずはサーベイの結果に対する「対話」「解釈」「アクションの決定」などのノウハウを社内に蓄積する必要がありました。また、事務局は、それぞれ様々な仕事を兼務する4名のメンバーに限定されていましたので、それだけのマンパワーでは残念ながら全職場を対象に「痒い所に手が届く」ようなきめ細かいフォローはできないと考えました。

また、対話とフィードバックをセットで行う3つの職場以外は、サーベイの実施とスコアのフィードバックを行うのみですが、先行する3職場で目に見える成果が現れて、スコアの改善が図られれば、その成功体験が他の職場の自主的な参加を促す契機になると思いました。加えて、その3つの職場には、エンゲージメントの取り組みについてのオピニオンリーダーになっていただきたい、という思いもあったのです。その上で、今後は、この10月から先行する3職場での経験を踏まえ、段階的に全職場にwevoxの導入を行っていきたいと考えています。

―wevoxを選んでいただいた理由は?

現場の声を確認するために、自由に質問文を設定し、コメントを得られる点は重要視しました。

また、当社は現場に出る業務が多いため、事務所にいる時間は限られています。可能な限り、現場で働く社員の負荷を減らしながら実施したいと思っていたので、手軽に回答できる点で魅力を感じましたね。

「人が主役の会社」が、wevoxに期待する3つのこと

―まずはスモールスタートから、ということですが、wevoxをどのように運用し、組織づくりに活かしていこうとお考えでしょうか?

全員がサーベイの結果に興味を持っていただくことが大事です。「経営陣がどうにかしてくれる」と思うのではなく、「自分たちが主体的に課題を解決するためのツール」として浸透させたいですね。ですから、そのための動機づけや体制作りなどのサポートを実施していく考えです。

その中で、具体的には大きく3つのことに期待しています。1つ目が、組織全体の状態を可視化できること、2つ目が組織内のコミュニケーションを充実させること、そして3つ目が、組織の力を最大限発揮できるようにすること、です。

1つ目の組織状態の可視化についてですが、私たち東京ガスパイプネットワークは、2018年4月に設立した後、今年4月に東京ガスおよび東京ガス協力会社5社の合計7社の導管維持管理業務を統合し、新たに事業をスタートしたばかりです。当然のことながら、それぞれ組織風土や文化も異なれば、そこで働く一人ひとりの経験や価値観、技術・技能や専門性なども全く異なる集合体です。今後もこうした人たちが一緒になって事業運営を担っていくわけですから、まずは「組織を分析すること」が極めて重要だと考えています。

2つ目の組織内コミュニケーションですが、先程申し上げた通り、当社は全く新しい組織であり、グループにおけるガス導管部門の持続的成長を支える中核企業として大きな責任が課せられています。こうした役割と責任を果たし、期待に応えることができるかどうかは、ひとえに当社内の「人心の統合」にかかっているといっても過言ではないと考えています。いかに早く当社で働く人の気持ちを1つにし、共通の目標に向かって取り組めるかが、今後の持続的な成長をはかっていくうえで極めて重要な「鍵」を握っていて、その鍵となるのが「コミュニケーション」だと思っています。wevoxには、自主的な対話を通じた組織内コミュニケーションの充実を図っていくという部分で、その効果に期待しています。

―3つ目の「組織の力を最大限に発揮できるようにする」とはどういうことでしょうか?

私たちは、7社が統合した「多様性」を持った組織です。多様性はイノベーションを生み出す可能性があるという点で、他の組織にはない「強み」だと考えています。イノベーションは異なる発想が相乗し合うことで生まれますから、これまでの仕事の仕組みや進め方などに対して全く新しい技術や考え方を取り入れ、新しい価値を生み出すことによって、さらなる進化に繋がるチャンスを広げていけるはず。こうした「強み」を活かし、組織の力を最大限発揮するためのツールとしても、wevoxには期待をしているのです。

―どれも、御社が大事にしている「人が主役の会社」という理念にも通じますね。

そうですね。当社にとっては「人」は貴重な財産であり、「人」の成長が会社の成長を支えていると考えています。貴重な経営資源であり財産である人の心理状態を常に把握することは極めて重要です。今後、経営としても「現状」と「会社が目指す姿」のギャップを常に注視して、現場の対話から提言された施策をタイムリーに実行していきたいと考えていますし、エンゲージメントの概念を施策づくりにおいてもしっかり活かしていきたいと思っています。

―ちなみに、wevoxに対する現場の反応はいかがでしょうか?

回答率は毎回ほぼ100%ですので、サーベイ自体はかなり浸透していると実感しています。対話を重ねている3つの職場については、業務に関すること以外のミーティング、例えば、改めて働き方や仕事に対する達成感等を話す機会が少なかったため、そうした時間が取れるようになったことは有意義だと感じていただいています。これは今までになかった反応ですね。対話をさらに重ねていけば、もっといろんな声が出てきそうです。

課題は職場ごとでバラバラだからこそ、対策方法も1つではない

―スコアの結果については、いかがでしょうか。「意外な一面」などが見えたりしましたか?

まだ現状を把握したばかりという段階なので、これから気になった部分を潰しながら具体的な施策を考えていこうと思っています。第一印象としては、「職場によってバラバラだな」ということを感じましたね。

―職場ごとに施策を考えていく必要がある、ということですね。

はい。全ての組織に共通の課題があって、それを解決できる施策を打つことで全てが解決するのであれば手っ取り早いのでしょうが、組織ごとに課題が違えば改善点も違うわけで、個別に手を打つ必要があります。だからこそ、経営が一言で「これをやりなさい」といっても改善はできません。職場で気づいたことを1つひとつ取り組んで改善していくことが大事になっていくと思いますので、やっぱり主体性が大事になってきますよね。

スコアの傾向でいうと、インフラを守るという業務の性質上、「挑戦する風土」という部分では少し弱いのかなと感じたので、一人ひとりのモチベーションも含めて、どういう目標を与えていくのかについてはもっと考えていきたいと思っています。加えて、上長との関係性の部分でスコアに差があると感じられるので、マネジメント教育についても、コミュニケーションをもっと意識して強化していきたいと考えています。

ちなみに、組織の人数とエンゲージメントスコアの関係を見ていくと、組織として人数が少ない職場の方がスコアが高く、逆に人数が多い職場は低くなる傾向にあります。やはり、人数が少ない方がコミュニケーションを取りやすいのだと思います。だからこそ、今後は大きい組織においてどううまくコミュニケーションをとっていくかを、しっかり考えていければと思っています。

―各チームの組織づくりにおける「やる気」を促すために、何かサポートをしていることはありますか?

正直、まだ対話を始めたばかりなので、運営側も手探りだと思います。そんな中でも、アトラエさんが実施している勉強会に参加してスコアの読み方を勉強していただいたり、その内容を各現場に持ち帰ってコミュニケーションを深めてもらったりということは少しずつですが進めています。今後も、できることは色々とサポートしていきたいですね。

―エンゲージメントというものを経営に取り込むことのメリットについてはどうお考えですか?

エンゲージメントサーベイを実施するということは、組織の「健康診断」をするようなものですよね。まずは定期的に健康診断をして、診断結果から悪いところを把握したうえで、効果的な措置を講ずることができれば、一番早くて効率的です。それをできるのがwevoxの良さだと思います。

組織というものは難しくて、表面上うまくいっているように見える組織でも、スコアを見たら上司との関係がよくなかったり、少し冷めているなと思える組織でも実は忠誠心が強かったりして、本当にいろいろです。wevoxによって、今まで見えなかったものが見えているなあと感じています。

―組織づくりにおいて、エンゲージメントの重要性は今後も高まると。

重要になってくるでしょうね。特に我々のように事業移管や組織再編を行った組織においては、目を向けるべきものでしょう。組織が新しくなり、その実態が分からないままにエンゲージメントを高めようとするのは極めて非効率で危険です。多様性が重視される今の時代だからこそ、その重要度は増していくと思いますね。

「ONE TEAM」は目的ではなく手段である

―御社では強いチームを目指す手段として「ONE TEAM」を掲げていますが、その先にある「理想のチーム像」をお聞かせください。

エンゲージメントが高い組織とは「社員が自ら進んで会社に貢献しようとする組織」ですから、熱意を持ってイキイキとしながら仕事に取り組み、高い成果を出して組織に貢献しようとする社員が多い組織が、エンゲージメントが高い組織だということになりますよね。私たちは今回の取り組みを通じ、自ら主体的に高い意識を持ち、一体感を持つことで、「ONE TEAM」となって会社組織に貢献できるような環境を1日も早く作っていきたいと思っています。

ご存知の通り、「ONE TEAM」とは、ラグビーワールドカップ日本代表のジェイミー・ジョセフHCが掲げたチームスローガンですが、これは「7か国」におよぶ出身者から選ばれている日本代表選手のチームを1つにするという意味において非常に象徴的な言葉でした。僭越ながら当社もたまたまではありますが、「7社」の社員が集まってできた非常に多様性に富んだ会社です。皆の心を1つにしていくという状況はラグビー日本代表と同じであり、まずは人心統合をはかっていくことが当社にとっても最優先の課題であることから、「ONE TEAM」というスローガンを掲げています。

―御社が作っていきたい組織のイメージとも重なる部分があるわけですね。

「ONE TEAM」の根底には、「自主性の尊重」と「多様性の受容」がある、という話を聞いたことがあります。これらはまさに当社がエンゲージメントを通じて取り組もうとしている方向と合致しているのです。

また、「ONE TEAM」にはサブキャッチがあって、実際は「ONE TEAM FOR JAPAN , ALL ATTITUDE」です。「1つのチームになる 日本のため(日本代表選手)全員の姿勢が求められる」といった意味になると思うのですが、このサブキャッチからわかるように、彼らは仲の良いチームになるだけのために「ONE TEAM」を目指していたのではなく、あくまでも「日本のために“勝つ”こと(具体的にはベスト8以上)」、そのために日本代表として「チームのためなら何でもできる、体も張れる、死ぬ覚悟でいけるという強い気持ちを持つ」という強い姿勢を示すことでした。つまり「ONE TEAM」は目的ではなく手段なのです。

まさに私たちの取り組みも同じです。「ONE TEAM」の先にある理想の姿は、東京ガスパイプネットワークとして企業価値を高め続けることであり、つまりは「社員の自主的な貢献意欲を持って業績を上げ続けていくことができる組織」をつくっていくことにあります。日本代表キャプテンのリーチ・マイケル氏が、「同じ目標に向かって一人ひとりが努力するのが『ONE TEAM』だ」と話していますが、決してトップダウンではなく、社員一人ひとりが組織や仕事に対して自発的な貢献意欲を持ち、自ら主体的に考え取り組む努力をすることができることが、私たちが目指す姿なのです。

ー気持ちが1つになっている方が、経営からのメッセージもしっかり伝わりやすいですよね。

それは間違いないですね。我々からメッセージを発した時に、共感してもらうとともに、率先して動いてもらうということはあると思います。ラグビーもそうですが、試合中は監督もヘッドコーチも指示を出せませんし、だからこそ試合中は選手同士がお互いに声をかけて自律的にチームメークしていくのです。それは私たちの現場も同じ。経営が「こうしましょう」「こういう組織を作りましょう」というだけでは現場は動きませんし、それを汲み取ってくれるリーダーが自分で考え、自分で判断し、自ら率先して自分たちの理想の組織を作り上げ、それによって活性化していくという姿がとても理想的だと思います。そういう意味で「チームを1つにしていく」というのは、漠然とした取り組みではありますが、我々としては一番効果があるのではないかと考えています。

―社員の自主性を促すことにもつながると。

自主性とは難しいものですが、私の考えでは、まずは、その組織なり一人ひとりをきちんと認めてあげることだと思います。有用感がなければ人は動かないものですし、自分のやったことが認められてはじめて、自ら率先して動いていけるのではないかと感じています。そのためには現場で働く一人ひとりを信頼し、認めることが大事です。

―そのためにはコミュニケーションが大事だということですね。

その通りです。コミュニケーションがスタートラインですね。コミュニケーションがないところに信頼は生まれないので、お互いに何を考えているのかを開示し合って、認め合う。そのためのコミュニケーションツールとしても、wevoxを役立てていきたいと思いますね。wevoxが起点となり、会話が生まれ、組織が活性化していく、そんな状態を作っていきたいと考えています。

ABOUT COMPANY企業情報

東京ガスパイプネットワーク株式会社

主な事業: 都市ガスのガス導管をはじめとした供給設備の保安・維持管理に関する業務
1.中低圧本支供給管および供給設備に関する保安・維持管理業務
2.内管に関する保安・維持管理業務
3.ガス漏えい対応業務
4.ガス供給設備等に関わる電気計装設備の点検・工事業務
設立年月日: 2018年4月2日
従業員数: 663名(2020年5月1日時点)

OTHER ACTION の他の実践事例

OTHER STORY のインタビュー

RECOMMEND こちらの記事も人気です

PLAN

「何のためにこの組織に集まっているのか?」全社テレワークで見えてきた組織で働く原点

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、テレワークを実施する企業が増えています。メンバー間の距離が離れ、先行き不透明な不安が募る中で、どのように組織づくりを行えばいいのか? この大きな課題に対して、エンゲージメント解析ツール「wevox」を活用して…

PLAN

and factoryのスピード上場を支えた人事役員のwevox活用法!「数値に一喜一憂せず、“変化”を見る」

実践的な組織づくり戦略や組織改善プラットフォーム「wevox」の活用方法を紹介する「DIO PLAN」。今回お話を伺ったのは、創業からわずか4年というスピードでマザーズ上場を成し遂げたand factory株式会社人事担当の執行役員である梅谷雄紀さ…