「いいまちだね」と言われるために。地方自治体にとっての組織のエンゲージメントの価値とは

実践的な組織づくり戦略や組織改善プラットフォーム「wevox」の活用方法を紹介する「DIO PLAN」。今回は、初の自治体での導入事例として、宮城県大崎市のケースを紹介します。「人材育成基本方針」を昨年新たに改定し、人財育成アクションプランの新たな策定など、職場環境の改善・底上げやエンゲージメントの向上に力を入れている同市。そこでのwevoxの活用方法について、人財育成課課長の坪谷吉之氏と、同補佐の小笠原忠典氏に話を伺いました。

人財育成基本方針を掲げ、目指す「職員」「職場」のあり方を明確にする

― 自治体として初めての事例紹介となるので、お話を伺えるのを楽しみにしていました。

(坪谷)こちらこそ、よろしくお願いします。まずは大崎市について紹介します。

大崎市は平成18年3月31日に1市6町が合併し誕生しました。宮城県の北西部に位置し、東西に約80kmの長さを持つ宮城県で2番目に面積の大きな市です。また、広大で肥沃な平野「大崎耕土」を有する四季折々の食材と天然資源、地域文化の宝庫で、大崎地域の農業は世界農業遺産にも認定されています。人口は仙台市、石巻市に次いで県内で3番目に多く、県北の中心都市であります。

― 合併のタイミングで最初の「人財育成基本方針」を掲げたと伺っています。

(坪谷)そうですね。合併直後の平成19年3月に、「宝の都(くに)・大崎 -ずっとおおさき・いつかはおおさき-」という総合計画に掲げる将来像を実現するために、「大崎市人材育成基本方針」を作成しました。

合併から14年が経ちましたが、合併直後に財政健全化に取り組む必要があったことから、1358人いた職員を9年間で約400人削減しています。令和2年4月の時点で職員は986人になりましたが、合併後4年間、職員採用を行わなかったこともあり、結果として30代から40代前半の職員数が極端に少なくなるといういびつな職員構成になってしまいました。

― それが組織としての課題だったというわけですね?

(坪谷)はい。市の職員採用は採用区分ごとに年齢制限を設けていることもあり、今後は30歳代の社会人を対象にした計画的な採用と、退職までの勤務年数がそれぞれ異なるため、個別の職員育成プログラムが必要になってくると考えています。

加えて、ここ数年は特に自然災害が多く、危機管理能力の高い職員の養成が必要だと感じていましたし、甚大な被害をもたらした東日本大震災や東日本台風などの災害復旧には、単なる現状復旧ではなく、先進的技術を取り入れたインフラ改良復旧事業への切替えが重要となってきます。また、今般のコロナ禍において、行政デジタル化を推進できる専門知識を持った職員の育成も必要ですし、併せて、職員には本市の財政状況を理解して事業に取り組んでもらうなど、多くのことを学んでいかなくてはなりません。

こうした背景から、基本方針の改定を行なうことで職員の育成手法について見直しし、新たな組織体制を立て直すことが必要でした。

― 改定はどのように進められたのでしょうか?

(坪谷)原則、職員全員参加による方針づくりです。庁内の検討組織を中心に、全職員から人財育成に対する考え方や意見、提案をもらい、それを集約しました。そのうえで、「目指す職員像」や、「目指す職場の姿」を定め、さらには職員に求められる能力を階層別に明確化しました。今後は人財育成アクションプランを作成し、実効性のある仕組みと環境づくりを進めていきます。

役所の職員が答えやすいよう、wevoxを独自にカスタマイズ

― そうした取り組みと並行するかたちで、wevoxを導入いただいたのでしょうか?

(坪谷)先ほど合併後4年間は職員を採用しなかったとお話ししましたが、その後、若い職員が急激に増え続けています。当時の育成方針は若い職員の意見が反映されていないため、まさに「絵に描いた餅」になってしまっていたこともあって、今回、若い職員の気持ちを探る意味でもwevoxに関心を持ちました。

最初はストレスチェックの結果を活用することで十分かと思っていましたが、ストレスチェックだけですと、「働きやすいか」「人間関係がいいか」みたいな、Yes/Noで終わってしまい、その後の細かい分析ができないんです。これでは、単純すぎてダメだなと。そんな時にwevoxを知り、導入することにしました。

― 最初の印象はいかがでしたか?

(坪谷)結果が点数化されるので、評価がわかりやすくすごく良いなと思いました。対外的な説明などもしやすくなります。

(小笠原)事務方としては、業務量を増やさずに効率良く、職員の意識を汲み取り、反映できるものだったので、そこがすごく良いと感じました。あとは、所属ごとに分けて集計できるので、組織ごとの傾向が出せるところも便利です。

― 最初の実施が2019年12月ですね。

(小笠原)まずはトライアルということで一度やってみようと。次が2020年10月ですから、年に1回ということで進めています。本来はもっと短いスパンでやった方がいいのかもしれませんが、定点的な使い方として年に一回の実施と決めています。結果としては使い易いさもあり、回答率も高く、今年度については96%を超えています。

― 高い回答率ですね。

(小笠原)wevoxの設問を、職員が使う際に違和感がないように工夫していただけたのも良かったですね。自由に設問が設定できたり、細かい調整ができたおかげで、使いやすくなっています。

― ちなみに、職員の方々への周知はどのように行いましたか?

(小笠原)特に事前の説明会などは行いませんでしたが、メールを配信し、個々にパスワードを配布する過程で、「職場の改善に役立てたいので、いついつまでに入力をお願いします」と伝えました。

wevoxのスコアを活用し、職場改善のための施策につなげていく

― 初回のスコアを見ての率直な感想を教えてください。

(坪谷)職員数を大幅に削減していたこともあり、人が足りない、業務量が多い、と思っている職員が多いという現状がよくわかりました。

合併当初は一般会計予算が500億円ほどでしたが、今やそれが650億円程度まで増えています。つまり、職員数は減っているのに予算は増えているため、一人当たりの業務量も当然増えているわけです。職員はそこに物を言いたいんだということが、回答の中から見えてきました。

一方で「上司や同僚の支援が良い」という声もかなりあり、大崎市はそれで組織が保たれているんだろうなと感じました。

― スコアを見た所属長の方々の反応は?

(坪谷)当然、スコアが良かった所属長は喜びます。一方で低い点数結果となった所属もあるわけですが、それを見た時にがっかりしないでほしいですね。そのスコアを真摯に受け止め、次に何をするべきかを考えるために活用してほしいのですが、中には落ち込んだままの所属長もいるので、どうフォローしていくかは今後の課題だと考えています。

― これまでに2回実施して、特に変動が大きかった項目は何でしょうか?

(坪谷)「環境」のところですね。「ワーク・ライフ・バランス・必要に応じてライフスタイルに合った働き方ができるか」の項目が3ポイント上がりました。職場環境への満足度も上がっています。

― 具体的に施策として取り組んだことはあったのでしょうか?

(坪谷)これまでは、管理職が組織内の一人当たりの業務量をうまくコントロールできていなかったため、特定の誰かに業務が偏ってしまい、時間外勤務が増えているという実態がありました。

それではいけないと考え、まずは所属長から職員に声がけをすることで、業務をチームで補完し合うように働きかけました。

加えて、長時間勤務に対する産業医の面接指導が義務化されたことによって、所属長や産業医との面談機会が設けられたことがプラスになりました。これまでは人事評価以外に所属長との面談が実施されていなかったのですが、時間外勤務が多い職員は所属長と話す機会が増え、おかげで、所属長が「うちの課は今こういうところでみんな苦労しているのか」ということを知るきっかけになりました。

(坪谷)今後は職員同士が認め合う環境を整備促進するために、職員顕彰制度を活用することも検討しています。

― どのような行動や活動に対して、評価や承認を行うつもりなのでしょうか?

(坪谷)人財育成基本方針に従い「課題解決に向け、自ら政策提言できる職員」を目指していきますので、そこと連動させるかたちで進めていきます。職員から政策提案を募り、次の施策に反映させ、そこに対してしっかり表彰していこうと考えています。

― 人財育成方針と施策が連動しているのは、すごく理想的ですね。環境面に加えて、承認の項目も次回のスコアが期待できそうですね。

(坪谷)ありがとうございます。施策としてうまく浸透していけば、職員は職場内で高く評価され、自信に繋がると思いますので、スコアがさらに上がっていくのではないかと期待しています。

実は、トライアルで実施した際に職場に対する不満の声がいくつか見受けられ、そういう実態がスコアでも見て取れましたので、小さな不満が大きな問題やハラスメントに発展することを危惧していました。ハラスメント防止委員会の立ち上げや人事異動にも配慮したことで、トライアル2回目においては、そういった声はほぼなくなり、実際の相談件数もかなり減らすこともできました。これは組織にとっても、職員にとってもすごくいいことだったと思っています。

(小笠原)回答を見ていて感じるのは、「自由記述」の大切さです。組織や職務に対する自由な意見が多く、みなさんが求めているものがよく見えるんです。結果、対応すべきこともわかるので、すごくいいサイクルが生まれていますね。このあたりは、本人を特定しないでできるメリットではないでしょうか。

あとは、まだ制度化はできていないのですが、こちらが課題を投げかけ、それに対する解決策を提案いただくような取り組みも始めています。それがうまく形にしていければ、自分の意見が反映されるんだという事例となり、職員のエンゲージメントも上げられるのかなと思っています。

(坪谷)改めて「組織は人なり」を痛感しています。職場内でのコミュニケーションは非常に大切であり、全体的に増えています。その中でwevoxを導入することは、「職員の声に耳を傾けている」というメッセージにもなっていますので、この点はwevoxに出会えて良かったなと感じています。

地域の声だけでなく、職員一人ひとりの「やりがい」にも目を向けていきたい

― 今もお話がありましたが、wevoxを始めたことで、組織が変わる「きざし」のようなものを感じていますか?

(坪谷)すごく期待していますね。そのためには、wevoxで得られたことをもっともっと施策などに反映させていきたいです。それをしなければ、職員の不満が溜まり、ひいては離職率アップにつながってしまいます。

合併前はそれぞれの小さな町で、農家をしながら町役場で働くような地元に根ざした働き方のところもありましたが、今や職員が1000人規模となり、しかも最近は市外から入庁する若い職員が増え、かつ高学歴化しています。

そんな「宝」ともいうべき人財に活躍していただき、長くここで働き続けてもらうためには、誠実に対応していくのが当たり前ですし、業務を通じて人間的にも成長していただけるよう、できることを考えていくのは当然です。

― 「できること」をwevoxで見つけていく、と。

(坪谷)忘れてはいけないのは、人財育成がうまくいけば、課題解決がしっかりできる職員が生まれ、その影響が良い形で市民の方に還元されるということです。結果、職員がさらに市民の方から認められるようになり、仕事にやりがいが生まれる。このサイクルがうまくハマれば最高ですよね。そのための起点として、引き続きwevoxを活用していきたいと思っています。

― 人の成長が地域を支える、ということですね。

(小笠原)職場の風通しが良くなれば、職員のモチベーションは上がり、職員は良い仕事ができるようになると思います。それは市民のためにもなることです。そうすれば自治体としても伸びていくでしょうし、大崎市が良くなり、周りから「いいまちだね」と言ってもらえるようになるのかなと思います。

(坪谷)我々の目標は「市民の方々の福祉を向上」させ、「住みやすいまちをつくる」ことであり、市民の方々に「大崎市に住んで良かった」と思ってもらうことです。本市には「大崎市話し合う協働のまちづくり条例」があり、市民の方と行政が話し合いながら様々な事業を進めています。これからは職員一人ひとりの「やりがい」にも目を向けられる組織を目指していきたいと思います。

― 他の自治体にとっても、参考になる知見や経験談が豊富に含まれていたかと思います。 本日は貴重なお話、どうもありがとうございました。

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