INTERVIEWEE

株式会社インタースペース 人事部 野澤麿友子氏

新卒で入社した化学メーカーで社長室に配属。経営企画業務に携わる。その過程で「従業員の幸せ」と「会社の発展」を両立できる組織をつくることに興味を持ち、人事になることを決意して転職。インタースペース人事部の人事企画として各種制度設計、組織改善を行う。

実践的な組織づくり戦略や組織改善プラットフォーム「wevox」の活用方法を紹介する「DIO PLAN」。今回お話を伺ったのは、株式会社インタースペース人事部で人事企画を担う野澤さんです。異業種異職種から人一倍組織づくりへの情熱を抱き、「人事で働きたい」と転職した彼女。持ち前の行動力で様々な人事施策を新たに実行に移してきました。まさに攻めの人事と呼ぶにふさわしい野澤さんに、wevoxのコメント欄を活かした組織づくりについてうかがいました!

本音のコメントは人事が信頼されている証

最初にwevoxの活用状況を教えてください。

wevox201711月に導入し、月に1回の頻度でサーベイを実施しています。人事部としては、私と人事部長の小林(以前DIOに登場)の2人で毎月、全社員約350名の個別スコアとコメントを見ながらMTGを行っています。2人の中では緩やかな役割分担があり、小林は主にマネジャーのサポート(wevoxスコアに基づくマネジャーのアクションプランの取りまとめや個別相談の対応)、私は主に一般社員のフォロー(コメントの返信、面談)を行っています。もちろん私で対応の難しいものは小林が支援します。

今日は、コメント欄への対応を中心に話を伺いたいと思うのですが、「コメントに対して全て返信をしている」というのは本当ですか?

はい、全てのコメントに返信することを徹底しています。「返信不要です」と記載されたコメントにも返信します(笑)。とはいえ、最初からそうしていたわけではありません。

毎月4070のコメントをもらうとお聞きしましたが、どのような経緯で全返信になっていったのでしょうか?

最初は、個別ケアが必要な相談に対してのみ、面談を提案するなどの返信をしていました。しかし、それでは社員から要望が送られてくるだけの一方向的なコミュニケーションになってしまっていると感じました。一方で、返信を嫌がる人もいるかもしれないという迷いもあり。考えた末、返信を希望する方にはコメントの最後に「★」マークを付けてもらうようにしたんです。

ところが「★」がないのに疑問形でコメントをくださる方もいて。仕方がないので「★」のある方はマストで返信、それ以外も必要に応じて返信するようになりました。そうして毎月コメントを精査していく内に、社員にも「主体者意識」や「自分の発言に対する責任感」を持ってほしいという想いが強くなり、私と小林で全てのコメントに返信しようと決めました。

段階的に全てに返信するようになっていったのですね。読むだけでもかなりの量ですし必ずしもポジティブな内容ばかりではないと思いますが、そのあたり含めて大変ではないですか。

そうですね、中にはこちらが心配になるような内容のコメントをされる方もいます。でも、個人的には「社員の声は人事の金脈」だと考えています。匿名ならまだしも実名のwevoxで人事からネガティブに思われかねない内容を書くということは、それだけ社員側も本気だということ。私は社員から本音をもらえない人事は人事としてダメだと思っているので、コメントをもらえていること自体、非常にありがたいと感じています。

ーとても前向きな捉え方ですね。金脈とは、もっと具体的に踏み込むとどういう意味でしょうか。

コメントはすべて「人事がお役に立てるチャンス!」と捉えています。大なり小なり貢献できる人事課題がゴロゴロ転がっているなら、人事にとっての「金脈」じゃないですか。仮にネガティブな内容であっても、それを書いた背景には何かしら社員の悩みがあるはずです。もちろん社員が悩みなく幸せに働けるのが1番という前提はありますが。

社員の声=人事課題の発見という意味での金脈ということですね。

その通りです。他社の人事と交流させていただく中で「コメントを読むのが辛い」と言う方にお会いしますが、コメントをもらえているのであれば、まだ社員から期待されている証拠です。「どうせ人事は何もしてくれない」と思われたら、誰も何も書いてくれなくなるのではないでしょうか。11つのコメントに、組織貢献のチャンスが眠っている!とぜひ前向きに捉えてみてください。

社員の要望は鵜呑みにせず、仮説と検証を繰り返す

コメントから施策へはどのようにつなげているのでしょうか?

社員からはふわっとした要望がくるので、どうしたら「応えられるか」を都度必死に考えて実現化しています。ただ、社員の要望を鵜呑みにはしないよう気をつけています。

たしかに。コメントは大勢の中の1意見なので、それを全社員の意見と混同するのは危険ですね。

おっしゃる通りです。社員によって意見は様々なので、実行する上ではスモールスタートを意識しています。効果がわかりにくい施策を導入する際はKPIを設定してトライアルし、会社全体として本当に意味のある施策になっているかを検証します。

例えば「他部署と交流したい」というコメントをきっかけに、HaveFunLunch制度(参加希望制のシャッフルランチ)を企画しました。これは人事が指定したメンバーでランチに行くと、会社からランチ補助が出る制度です。この制度でKPIにしたのは「新規の参加者数」でした。4カ月間のトライアルの結果、当初KPIを大幅に上回る170%を達成したので本制度化しました。

トライアルでKPIを測定し、その結果により実行に移す。マーケティング的な思考が人事施策においても活かされていると感じました。

はい。過去にはトライアルでの結果が芳しくなく、導入自体しなかったものもあります。また、既存の制度も時間が経つと機能しなくなるので、定期的に見直しています。先ほどのHaveFunLunch制度も年度更新制にしていて、ニーズがないと判断されれば廃止する予定です。最近だと福利厚生制度を見直したことで、3ヶ月の利用件数が約75件から約500件まで上がったということもありました。

すごい。1度入れたら終わりではないのですね。人事施策は、立案から実行まで時間がかかる例も多いですが、これだけの施策を1年の間で実行していくのは大変じゃないですか?

そこは経営陣の後押しが非常に大きいです。HaveFunLunch制度は着想からトライアル開始まで2カ月でした。どの施策もかなりのスピード感で動けているので「人事がすぐに動いてくれた」と社員も感じてくれているようです。社員との信頼関係を構築する上で、経営陣のレスポンスが速いのはとてもありがたいです。

信頼関係を構築する上ではスピード感も大切そうですね。

はい。スピード感は大切にしています。とはいえ、全てが順調に進むわけではありません。解決策が見つからず、苦しんだこともあります。ある営業の社員から「人材育成と業務の両立が辛い」というコメントをいただいたときは、それから半年間悩み続けました。

半年間!そんなに長い間、1つのコメントについて考え続けることもあるのですね!

そうですね。自分なりに外部セミナーなどで勉強し、色々と模索し続けました。その過程で、人事が社員に現場の業務を教えることはできないけれど、育成の方法で悩む時間なら減らせるのではないかと思いついたのです。そこで新たに後輩への効果的な育成方法を教えるメンター研修制度を企画しました。

なるほど。人材育成ってそもそもどうやるのか?に悩む時間を減らすことで、その時間を営業活動などの業務にあててもらおうということですか?

はい。研修自体もパッケージではなく、フルカスタマイズしました。講座を選択式にすることで、研修時間を短縮しつつ受講生が能動的になるよう設計しています。「両立が辛い」というコメントをいただきながら、研修で業務時間を圧迫するのでは本末転倒です。スピード感は大事ですが、それ以上に社員の課題解決に直結するかを重視しています。自分が納得していない段階で「とりあえず入れてみよう」は絶対にしたくありません。会社の資源を使って社員に負担をかける以上、企画1つ妥協したくないんです。

大切なのは「本気で向き合ってくれる」と社員に実感してもらうこと

そもそも、「コメントになかなか要求や悩みを書いてくれない」という企業もあります。コメントを社員から引き出すコツはありますか?

まずは、どんな小さなことでも良いのでコメントに対応することです。例えば、「モニターを設置してほしい」「電子レンジを掃除してほしい」などのすぐに対応できるものは後回しにせず、その月内に解決するようにしています。そのために、日ごろから総務部や情報システム部など他部署との連携も大切にしています。そうして「書いたら真剣に対応してくれる」姿勢を見せることで、次第に大きな悩みや組織の課題点をもらえるようになるはずです。

ついつい大きな課題から着手したくなりますが、小さな要望への対応も大切だということですね。しかし、中には解決の難しい要望をもらうこともあるのではないでしょうか。

はい。実現が難しい要望には「なぜできないのか」の理由を添えて対応が難しい旨を返信しています。社員に主体者意識を持ってもらうため、単純な要望には「改善提案をください」と差し戻す場合もあります。その後、前向きな提案をいただけたら、課題解決に向けて一緒に考えたりもします。「本気で検討してくれた」が伝わるだけでも、人事への信頼度は上がると私たちは考えています。加えて、wevoxが活用されていると実感してもらえるので回答率の向上にもつながります。インタースペースでは導入後の回答率9割をずっとキープしています。

すごいですね。そこまで徹底して、コメントと向き合っているんですね。

あとは経営陣の確認が必要なコメントは、すべて経営陣の意見を確認した上で返信するようにしています。人事が間に立つことで、経営陣は社員の要望を把握でき、社員からの「経営陣への信頼」も上がると信じています。

本当にフリーコメントを使い倒してくださっている印象を受けました。最後にそんな野澤さんがコメントと向き合う中で、ご自身の変化を感じられた点があれば教えてください。

私はインタースペースに人事未経験で転職したので、入社当初は右も左もわからない状態でした。そんな中でwevoxの運用担当になり、コメントを通じて社員の声と真摯に向き合う内、人事としてやるべきことが見えてきたんです。wevoxのコメントはアイディアの宝庫です。現在では10以上のプロジェクトを並行的に推進するなど、人事企画としての自身のキャリアアップにもつながっています。

コメントを通じてキャリアアップにまでつなげられたのはすごいです!野澤さんの取り組みを知って、フリーコメントを前向きに受け止められる人が増えそうです。

そうだと嬉しいですね。コメントへの対応によって、wevoxの活用のされ方、ひいては会社のエンゲージメントが大きく変わると思います。繰り返しになりますが、社員の声には人事が役に立てるチャンスがたくさん眠っています。これからも、コメントには11つ真摯に向き合い、エンゲージメントが高い組織づくりに貢献できるように頑張りたいと思います。

 

PLANまとめ

・コメントに全て返信することで、人事部と社員との信頼関係の構築、wevoxの利用率向上につながる

・コメントへの対応は小さなことからコツコツと。次第に大きな悩みを書いてくれるようになる

・必要に応じて経営陣にも確認する。社員からの経営陣への信頼が向上し、経営陣が社員の要望を把握するきっかけにもなる

・社員の要望は鵜呑みにせず、人事制度の導入はスモールスタートを意識。KPIを設定し、ニーズがないものは撤退することも大切