「ビジョンドリブン×地道な日々のアプローチ」が個人と会社を繋げていく

実践的な組織づくり戦略やエンゲージメントプラットフォーム「wevox」の活用方法を紹介する「DIO PLAN」。今回は、2020年4月の社名変更と同時にビジョンのアップデートを行い、ビジョンドリブンな組織へと強化を図った株式会社Hajimariのケースを紹介します。一枚岩の組織づくりのために行っている数々の取り組みについて、執行役員で人事統括責任者の冨士本康平氏に伺いました。

ビジョンをアップデートし、ビジョンドリブンな組織へ

ー まずは、貴社の事業について簡単に教えてください。

当社では、IT起業家と成長企業のマッチングプラットフォーム「ITプロパートナーズ」や、フリーランス支援メディア「アトオシ」、自立した人材となるためのキャリア支援サービス「intee」等、個の成長や自立を支援するサービスを複数展開しています。

ー 2020年4月に「ビジョンドリブン」というメッセージを打ち出し、さらなる組織の強化を図っていると伺っていますが、まずはその背景から伺っても良いでしょうか?

大前提として、2015年の創業以来、基本的にはずっとビジョンドリブンに物事を判断し事業や組織を創ってきました。それを明確に言語化し発信を強めたのが2020年の4月、社名変更とビジョンのアップデートを行ったタイミングでした。

―  基本的な質問になりますが、創業以来、経営においてどのようにビジョンを大事にされてきたのでしょうか?

まず我々がいうビジョンドリブンには、2つの意味合いがあります。1つ目が、会社のビジョンを非常に大切にしているということです。当社では「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める。」というビジョンを掲げていますが、なにかの意思決定時には、その一手は果たしてビジョンの実現に近づく一手なのか、そのことを常に念頭に置き意思決定をするよう、全社で意識統一されています。

2つ目は、会社のビジョンと同時に「社員個々人のビジョン」を大切にしているということです。それは会社のビジョンとも関連することなのですが、「自立した人材を増やす」と謳っているからには、社員にはより一層の自立を求めます。ただ自立ってなんでもかんでも成長すればいいというわけではなく、なりたい姿やありたい姿、すなわち個人のビジョンに近づく成長こそが重要だと捉えています。そのため社員に自立を求めるうえでは、個人のビジョンは切っても切れない要素であり、会社のビジョンと同水準で大切にすべきものだと考えています。

― そこは、個の成長や自立を支援するための機会やプラットフォームを提供する御社の事業内容とも密接に関わる部分ですよね。

まさしくそう考えています。当社では毎年新しい事業をリリースしているのですが、新たに事業を立ち上げる際も、「この事業はビジョンの実現に近づくのか?」「どうすればもっとビジョンの実現にインパクトをもたらすことが出来るのか」といったようなディスカッションを毎回重ねていますね。

― 採用時も、ビジョンは重視されていますか?

そうですね。ビジョンを軸足に意思の疎通をしている会社だからこそ、そこに共感がなければエンゲージメントも上がらないと思います。

同時に、その方自身のビジョンがどれだけ明確で想いが強いか、そしてそれが会社として応援できるものか、というところも見るようにしています。個々人のビジョンって、その人が生きるうえでのエンジンとなるものですから、それらはしっかり確かめますね。

「成長」や「ビジョンにいかに近づくか」を重要視した施策の数々

― あらためて2020年4月に新たに改定した御社の「ビジョン」について、その背景やどのような想いが込められているか、教えてください。

いきなり大きな話になりますが、今の日本人の仕事観やキャリア観は絶望的な状況だと思っています。日本人の仕事に対する熱量が先進国139カ国中132位だったり、仕事に対して熱量がないと答えている人が全体の94%を占めていたり、新卒の約6割の人が入社した会社を後悔していたり、色々な調査結果が発表されていますよね。

― 健康寿命も伸び、人生100年時代とも言われる中で、非常に大きな課題ですね…。

まさしくその通りで、これは表現を変えると、1週間のうち5日間は我慢しながら生きているということでもあるし、人生の大切な時間を惰性で過ごしているとも言えると思います。我々はそこに非常に大きな課題意識を感じており、どうすればもっと幸福度の高い人生を過ごせるのかを突き詰めて考えてきたのですが、そのキーワードが「自立すること」だと思っています。

自分の大切な時間を他人や環境に委ねるのではなく、自分自身で主導権を持って自分の人生をコントロールできること、すなわち自身が選んだ道を自分自身の手で正解に出来る状態が自立であり、自立するからこそ幸福度の高い人生を送ることができると、我々は信じているんです。それが、「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める。」というビジョンに込められた想いですね。

―「自分が選んだ道を正解にする」というのがすごく素敵ですね。

昔はある程度は「正解」が決まっていたじゃないですか。それによって終身雇用や年功序列といったものが機能していたのがかつての日本だったわけです。だけど今はあらゆることの流動性が高く、テクノロジーや社会の変化のサイクルが早いため、誰も正解なんて知らないんですよ。だから、自分自身の価値観と考えを持って、それを正解にしていくということが、生きていくうえですごく大切だと思っています。

― そうしたビジョンをもとに、どのようにしてビジョンドリブンな組織を作っているのでしょうか? 具体的な施策などがあればぜひ教えていただきたいです。

施策はいくつかあるのですが、わかりやすいものだと、「じぶん会議」と「みんな会議」と社内で呼んでいる会議体があります。ざっくりいってしまうと、「じぶん会議」が1on1で、「みんな会議」が360度フィードバックの制度、という感じです。

― 中身が一般的なものと少し違うのですか?

「じぶん会議」では、いわゆる業務上の相談ではなく、あくまで「じぶんの人生」が主語になっています。自分自身が掲げているビジョンに近づくための行動が取れているのか、そもそもビジョンをしっかり棚卸しできているのか、ビジョンに近付くためのネクストアクションは何なのかを、直属の上長と一緒に考えるのが「じぶん会議」です。

「みんな会議」も、これまたじぶん自身のビジョンが主役です。そのビジョンを叶えるための成長曲線を描くにあたり、マインドや行動面において何が足りていないのかを、他の部署のメンバー含め”みんな”から客観的にフィードバックしてもらえる制度、それが「みんな」会議です。

あとは、当社ではMVP(Most Valuable Player)ではなく、MGP(Most Growth Player)という「成長」に重きをおいた表彰制度を設けています。要は「その月に最も成長した人」を表彰する制度です。自立した人材を増やしたいと考えているからこそ、「成長」や「ビジョンにいかに近づくか」を重要視しています。成長した人や成長すること自体を賞賛し、自分も成長したいと思えるような空気感を醸成出来るよう、かなり意識し制度設計をしていますね。

― メンバーのみなさんが掲げているビジョンとは、具体的にどういうものですか?

これは本当に様々なんですが、採用のお話とも重複しますが、ビジョンの内容よりもそのビジョンに対する想いの強さを大事にしています。こういうビジョンの話になると「意識高い系のビジョンを掲げないとダメなんじゃないの?」と思われることがすごく多いんですが、そうじゃないよ、と。人によっては「起業して成功したい」というようなビジョンを掲げる人もいますが、「自立したお母さんになって家庭と仕事を両立したい」という人もいます。はたまた「どこでも通用するビジネスマンになって30歳を過ぎたら旅をしながら働きたい」とか、ほんとみんな自由に設定しています。

― 仕事のことに限らず、「自分がどう生きるか」に近いものが多そうですね。

それはあると思います。そして、ビジョンというものは価値観の変化やその人のライフステージの変化で変わっていくのは自然なことだと考えているので、半年に1回、アップデートするように発信しています。

― そのビジョンはどういうふうに共有されているんですか?

代表も含め、全員が自身のビジョンを記したスプレッドシートを、いつでも誰でも見られるようにしています。あとは、チームごとでメンバーのビジョンを共有する場や理解する場を設けていたりとか、週次や月次のミーティングのなかで各メンバーがビジョンに対しての行動を発表したり振り返ったりしていますね。

ビジョンドリブンな組織となり、起こった変化

― ビジョンの改定の前後でどのような変化がありましたか?

wevoxを使ったエンゲージメントサーベイの結果で言うと、全てのスコアが上昇しましたね。まさに、ビジョンを浸透させ、ビジョンドリブンで物事を判断するということは、全ての部分に連鎖的に好影響を与えるインパクトの強いものなんだということをあらためて実感しています。

― 創業時からビジョンを大切にしてきたにもかかわらず、これまでと大きく違いが出たことについては、どのように分析されていますか?

確かに、これまでもずっとビジョンドリブンにいろいろなことを判断してきました。ただ、そのなかでも大きな要因は、ビジョンのワード自体をアップデートしたことだと思います。

2020年4月にアップデートしたものは「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める。」ですが、以前は「自立した人材を増やし、新しい仕事文化をつくる。」と、後半が違うものだったんです。アップデート前後でそこにかける想いは同じであり、「新しい仕事文化をつくる」というのも別に悪いビジョンではないと思っていましたが、言葉のイメージからどうしてもリモート推進企業、時短推奨企業みたいに取られることが多かったんです。それはちょっと違うな、と。

― それがアップデートを考えた一つの背景だったわけですか?

そうですね。そしてそのアップデートというアクションはビジョンをより社内に浸透させる良いきっかけになるなと思い、ビジョンドリブンということをぐっと言語化して、社内への浸透に注力した、という感じですね。先程もお伝えした通り、元々ビジョンの共感性を意識して採用活動を行っていたので、ビジョンドリブンを社内で強めていくことになんら違和感はなく、スムーズに一体感を持って進めることができたように思います。

― ビジョンドリブンによって、メンバーの変化を感じたエピソードがあれば、ぜひ教えてください。

施策ベースでお話すると、例えばMGPに関していえば、特に大手企業から転職してきたメンバーほど、もっと気軽に挑戦していいんだ、挑戦って周囲からこんなに応援され、称賛されるんだと肩の力が抜け、挑戦が当たり前化する、というのはよくある変化ですね。特に顕著だったのは大手監査法人から転職してきた財務経理のメンバーとかは分かりやすい例ですね。彼はお堅い前職柄、最初は何をするにしても、誰かの承認を得てからでないと行動出来ないタイプでした。

MGPでは選出した上長が細かにその背景となる選出理由を伝え、また選ばれた人は表彰コメントを全体の前で発表するといった流れがあるのですが、それが結構エモーショナルでいい空気感が流れます。

先程お伝えした彼は、周囲のメンバーが様々なことに挑戦し、成長していく過程、そしてMGPで表彰され、素敵なコメントを残す姿を見て、それらは彼の価値観と行動が変わるきっかけに繋がりましたね。 

彼はその後色々なところで活躍し、MGPに表彰される常連メンバーになっているのですが、結果、入社時の彼からは想像も出来ないような大きな挑戦を行なう姿が当たり前化しています。今では財務経理という守備のマネージャーをやりつつ、新規事業の立ち上げにも絡んだりしており、事業を創れるCFOになりたいという彼自身のビジョン実現に向けてかなり成長することが出来ていますね。

また結果として周囲のメンバーにも良い影響を与え、挑戦の輪がどんどん拡がっている感覚があり、その点もこの取り組みを始めてよかったなと感じるポイントですね。

― 素敵なエピソードですね!

環境が変化を与えるんだと痛感しましたし、本人にとってもすごく大きな変化だったと思いますね。

ボードメンバーと同じ視点でビジョンを語れるメンバーをどれだけ増やせるか

― 今回の取り組みを通じて、「ビジョンドリブンな組織を作るためのポイント」があるとしたら、ぜひアドバイスをお願いします。

ビジョンの浸透で悩んでいる経営者は多く、同じようにアドバイスを求められることが結構あるんですが、その時にいつもお話しするのは、これだけをやればいいというような「魔法の杖」はない、ということです。結局は、日々の泥臭い行動や発信の積み重ねが大切だと思っています。特に経営者を中心とするボードメンバーが、ビジョンのワードそのものを使った発信や、ビジョンに関する発信、あとはビジョンとの接合点や一貫性を意識した施策、行動・発信・意思決定ができているのか、まさにそれに尽きるんじゃないかなと思います。

― やっぱり経営やボードメンバーの取り組みが1つのカギになりそうですね。

そのうえであえて補足するなら、2つポイントがあると思います。

1つは、マネージャーの抜擢や育成という観点でビジョンの浸透を意識することです。組織が拡大するにつれてどうしても経営陣とメンバーとの距離は遠くなるわけで、そうなると発信の伝達濃度が薄まってしまうのは至極当然のことです。それに抗うためには、ボードメンバーと同じ視点、視座、濃度でビジョンについて語れるメンバーをどれだけ増やせるかが大切かなと思います。

2つ目は、ビジョンそのものについて議論する場を定期的に設けることです。いくら定期的に発信していたとしても、個々人のバックボーンや価値観が異なる以上、その解釈にズレが生じてしまうのは当然あることです。問題は、そのズレに気づかずにいること。後になって気づいて、その時にはすでに向かう方向性や取り組むべき仕事にもズレが生じてしまっている、というのは実はよくある話だと思います。

ですから、当社では定期的にビジョンそのものやそこから派生した解釈・考え方について議論する時間を設けています。結果としてビジョンが個々人により一層腹落ちしたり、組織全体に浸透するだけでなく、副次的に個々人の考え方や価値観を理解することにもつながります。一枚岩の組織形成を目指すうえでも非常にオススメですね。

― では最後に、今後の組織づくりに対しての意気込みを伺えますでしょうか。

まだ規模として60名前後の組織であり、エントリーのマネジメントもしっかりやってきたがゆえに、一枚岩の組織が創れていることについてはある意味で当然のことだと思っています。ただ、これからの会社の成長を考えると、さらにビジョンに共感してくれる仲間を増やさないといけませんし、そうなってくると共通の価値観だけではなく、「多様性」ということも意識していかないといけなくなるのかな、と考えています。

その時に、何でもいいという多様性ではなく、我々はどんな多様性を受け入れるのか、そして受け入れた多様性をどうやって組織の力に変えていくのかを、しっかりと考えていく必要があると思っていますし、組織を創っていく立場として、そこは強く意識していきたいですね。

― 本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

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