実践的な組織づくり戦略やエンゲージメント解析ツール「wevox」の活用方法を紹介する「DIO PLAN」。今回は、テクノロジーを活用することで車をもっと身近で楽しいものにしようと取り組む、株式会社カービューのケースを紹介します。組織づくりや管理職たちとのコミュニケーションにおいて、wevoxのデータをどのように見て活用しているのかを、人事チームの3名に伺いました。
INTERVIEWEE
wevoxがあれば組織の状況について「答え合わせ」ができる
―最初に、テレワークの状況について教えてください。
金子:以前は何か特別な事情がある場合しかテレワークができない仕組みでした。コロナウイルスの影響で、3月頃から少しずつテレワークを導入し始め、4月に緊急事態宣言が出てからは、基本的に全員がテレワークになっています。
天野:現在も一部を除いてテレワークを継続しています。社内では、コロナ以前の状況に戻ることはおそらくないだろうという前提で、働き方をどう考えていくかを議論し始めたところです。
金子:ですから、組織づくりについては考えていかないといけないですよね。wevoxについては、4月以降も変えずに、月1回サーベイを実施しています。
テレワークになってからのスコアの変化でいうと、全体的に伸びているんです。私の見立てですが、4月からテレワークに完全に切り替わったことで「社員の安全を守ってくれる会社なんだ」と受け取った人が多かったのではないでしょうか。特に環境面のスコアが上がっていますね。
井上:スコアについては、各管理職が自分の組織の状況について把握するのと、人事側が部署ごとにどういう動きがあるのかを判断するために活用しています。
―スコアとして見えることのメリットは、どんなところにあるとお考えですか?
井上:正直、メリットしかないと思っています。普段の様子を見ていて実際にわかっている事実と「何となく感じていること」で推測する課題の仮説の答え合わせができるじゃないですか。あとは、スコアを通じて全く意図していない課題が見えることもあるので、非常に助かっていますね。必須と言っても過言ではないツールになっています。

人事と管理職がスコアを起点に組織について話し合う
―スコアの結果を受けて、施策として取り組んでいることはありますか?
金子:大きなところでは、3カ月に1回、人事と管理職で集まってスコアを見ながら話す「組織改善ミーティング」を行っています。もっとチームをよくするためにはどうしたらいいのかをみんなで考える場になっていて、例えば、スコアが良くなった項目の要因について共有したうえで、課題とその解決方法やアクションまで決めています。
天野:人事側が各部署の取り組みについて把握しつつ、管理職自身が共有を通じて整理をしたうえで新たな気づきもあるので、意味のある場だと思っています。
井上:私はこの4月から人事に異動になったのですが、以前はこのミーティングを受ける側だったんです。その立場からいうと、チームで抱える問題が見えてきても、どう解決したらいいのかが分からなかったりするものなんです。他のチームはどうなのかも気になりますし。だから、管理職同士集まって「うちはこうだ」と部署を超えて議論ができる場は、すごくありがたかったです。
金子:wevoxのスコアを起点に話が進められますしね。
井上:そうなんです。あとは人事の視点からアドバイスをもらえるのもありがたかったです。部署横断での課題の共有もでき、アクションも共有できるのは、忙しい管理職にとっては貴重な場だと思います。
―具体的に参考になったアクションにどのようなものがありましたか?
井上:小さいことですが、「コミュニケーションがうまくとれていない」という課題があったときに、今まで不定期で行っていた業務進捗ミーティングを定期的にやるようにしたりしました。そういう日々の改善ですね。
金子:アクションはもちろんですが、1人で考えていても進まないような場合に、誰かと話すことで整理ができるというメリットはあるようです。

井上:内容によっては明確な改善点が見つからないものもありますが、そんなときでも課題がわかったり、その原因を少し深堀りできただけでも前進はできてるって思えるんですよね(笑)。
―明確な打ち手見つからなくても、それはそれですっきりすると。
井上:そうなんです。少しでも進捗があって納得感が得られるのは、結構大事なことだと思います。
テレワークで変わる管理職の役割をどうサポートするか
―テレワークに切り替えた後に実施した組織改善ミーティングで、どんなやりとりがあったのか教えていただけますか? 環境が変わり、組織にどのような変化があったのか気になります。
金子:テレワークになったことで皆さんが気にしていたのが、コミュニケーションのところでした。ただ、逆に意識が向いていた分、各部いろいろな取り組みをしていたようです。
井上:例えば、毎日メンバー全員の顔をちゃんと見ながら朝礼や終礼をしているチームがありましたね。あと、これは私たちのチームなんですが、1日中リモートで繋ぎっぱなしにしておく工夫もしました。
天野:1on1ができていないことを確認できたという声もありました。改めて、自分のコミュニケーションの量についても振り返りができたのかもしれません。
―リモート下における課題感については、どんな話が出ましたか?
金子:1on1ができていないことの理由でもあるのですが、リモートになってから「管理職が忙しい問題」というのが顕著になっていると思うんです。これは当社に限らず、他社でもそうではないかと思うのですが…。
井上:間違いなくあるでしょうね。
金子:私は「ミーティングが多い問題」と関係があると思っているんです。例えば、これまでだとちょっと立ち話で伝えられたことが、リモートになった途端に簡単にできなくなりますよね。だから、意図的に話す時間を取ろうとすると、「30分予定を抑える」みたいなことになってしまう。結果、ミーティングだらけになるんです。
井上:顔が見えないのでメンバーのコンディションも分かりにくいですし、オンラインを切った後にどんな顔をしているのかも分からないので、不安を感じているようですね。
金子:人事側の話でいうと、組織改善ミーティングに向けては、出てきたスコアを見て各々がいろんな準備をしているんですが、それがちょっとやりにくくなっています。
具体的には、「このチームにはこのスコアの変動について聞いてみよう」とか、「ここを突っ込んで聞きたい」というポイントを整理しておくのですが、そのときに、普段同じオフィスにいれば、なんとなく見えている状況・空気感から仮説が立てられますよね。「きっとこのあたりが課題なんじゃないか」みたいな。
―それがやりにくくなっている、ということですね。
金子:はい。組織改善ミーティングの目的は、管理職の皆さんに自分のチームの状況を振り返ってもらうことと、次のアクションを考えてもらうことで、人事としてはそこに向かうためのサポートをしようと考えています。だからこそ、こちらが感じたことを質問として投げかけることで、考えてもらったり、気づきに繋げてもらうことがすごく大事なやりとりだと思っています。それが、今までのように「こんな風に見えますけど」と聞きにくくなっているんですよね。
天野:気軽に状況が分からないことは、こんなに大変なのかと思いました。だからこそ、こちらから能動的に状況を聞きにいったりして、課題感も含めていろいろ見極めていかないといけないのかなと話しているところです。

井上:その点、6月に実施した際は、スコアの上下以外に推測を交えたり、他から入っている事実や取れる範囲の情報をもとに、「こんな質問をしてみよう」と3人ですり合わせました。
金子:ある程度、仮説を立てて挑みましたね。
三者三通りのエンゲージメントスコアの分析方法
―今、仮説を立てるという話がありましたが、どう見立てを行っているか、もう少し詳しく伺えますか?
天野:私はスコアの推移をチームごとで見たり、分布で見たり、いろんな方面からですね。人事部としては、普段からいろんなところにヒアリングをしているので、その情報もかなり参考にしています。
金子:私はいい意味で、スコアを気にしすぎないようにしているかもしれません。全部を理由づけしない、というか。仮にチームのスコアが下がっていたとしても、分布を見ると1人だけ下がっていることとかがあったりするので、変化は全体で起きているのか、それとも分布が変わったのか、そういうところにも目を向けています。
井上:私自身、初めてのことなので勉強しながらではありますが、1つは、事業側の動きやプロジェクトの動きなどから、忙しさや状況の厳しさみたいなものを想像したりしましたね。あとは、個別に入ってくる「人」の情報です。役職者に限らず、「○○さんは今こういう状況らしい」みたいな話を参考に、今どんな状況なのかなと仮説を立てていきました。
―ちなみに、wevoxの画面をどのように見ているんでしょうか? 例えばこういう順番で見るとか、ここを真っ先に確認する、などがあれば知りたいです。
天野:これはきっと3人とも違う気がしますね(笑)。
まず私ですが、全体のスコアは正直、あんまり気にしません。やっぱり部署ごとのスコアをまず見ますね。一通り全項目に目を通した後に、ミーティングでヒアリングをすることも頭に入れながら、気になったところを深堀りしたり、書き出したりしています。
金子:私は、まずコメントを見ますね。主な担当が労務なので、労務的に対応しないといけないコメントがないかを気にしているからです。
井上:私も天野とだいたい一緒ですね。まず部署ごとのスコアを見て、細かく気になったところを順番に見ていきます。あとは、同じチーム名のスコアでも、中の人が増えたり減ったり入れ替わったりしているので、そこは結構気にして推移を見るようにしています。

3名のMTGの様子
管理職が描く組織づくりを下支えする存在でありたい
―人事として、今後の取り組みについて考えていることがあれば教えてください。
金子:先ほど、管理職が忙しくなっているという話がありましたが、その結果、管理職自身が自分の組織に目を向ける時間が減っているのではないかと危惧しています。ですから、組織改善ミーティングの形までいかなくても、もう少し軽めのミーティングを新たにやってもいいのかな、とは考えていますね。「状況どうですかミーティング」みたいな、私たちに話してもらうことで、管理職自身が頭を整理できるような場をつくるイメージです。
井上:個人的には、人事としてのアクションをブラさないようにすることですね。普段から、プラスもマイナスも、ネガティブなこともポジティブなことも、いろいろな情報に触れる機会が多いからこそ、それらの1つずつに左右されて判断がつかなくなってしまっては、本末転倒です。リモートだからとかでもなく、「本質的な課題」にきちんと向き合って、短期でできること、中長期で考えるべきことを整理しながら進めていくことが大事だと思っています。
天野:それは本当に大事なことですよね。
井上:はい。そのときに、wevoxは課題感を整理するための1つの大事なツールになり得ます。これを活用するのは前提として、それ以外の情報も含めて「全体で捉える力」をしっかり持って進めていきたいです。

天野:会社としてはコロナ以前の体制には戻さないという方針だからこそ、オンラインという状況下でどう人材開発や組織開発を進めていくかはしっかり考えていかなくてはいけません。今までやっていたことをオンラインでどう進めていくか、ということです。
まずは、会社の設備をどう整えて働きやすくするか、リモート対策の進め方も含めて考えていきたいです。
金子:リモートになって、管理職の方々が「自分の話」をする機会が減ったように感じています。どちらかというと「聞く側」に徹することが多くなっているといいますか。でも、その中で管理職の人たちは自分のチームのことをずっと考えていて、どうしたらいいのかを常に模索しているはずです。その整理をサポートするためにも、人事として皆さんの頭の中にあることをしっかり聞いていくのが大事かなと思っています。
天野:寄り添っていますね!
金子:もちろんです! これは人事と管理職の距離感の話でもあると思っていて、距離が近い人は気軽に話せても、必ずしも全員がそうではないですよね。だからこそ人事側から情報発信したり、アプローチの仕方を考えていく必要はあると思いますね。