新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、テレワークを実施する企業が増えています。メンバー間の距離が離れ、先行き不透明な不安が募る中で、どのように組織づくりを行えばいいのか? この大きな課題に対して、エンゲージメント解析ツール「wevox」を活用して奮闘する企業にスポットを当てる連載シリーズ「weテレ」。
第4弾は、アル株式会社のEX(Employee Experience)チームの取り組みを紹介します。テレワーク環境下で困難にぶつかる組織が多い中、全社テレワーク移行後エンゲージメントスコアが上昇した同社。高いスコアの要因にあったのは、チームを大切にする組織風土でした。「今の組織状態をスタンダードにしていきたい」と意気込むEXチームのみなさんに、EXの取り組みや組織づくりの考え方、今後の展望を語っていきただきました。
INTERVIEWEE
心理的・機能的にセーフティな組織を作る、アルのEXチーム
ー本日はインタビューよろしくお願いします。代表のけんすうさんのツイートを見て、スコアの全社公開やテレワーク環境下でのスコア上昇など、多くの驚きがありました。アルの組織づくりについて、いろいろお聞かせください。
川地:よろしくお願いします。EXチームとして、僕たちが普段やっている組織づくりについてお話できるのを楽しみにしていました。

アル代表けんすうさんのツイート
ー最初に、アルのEXチームとはどのようなチームなのか教えてもらえますか。
川地:「アルを心理的・機能的にセーフティな組織にする」ことを目標に、従業員体験(Employee Experience)の向上を担っているチームです。私がアルにジョインした昨年7月時点では、1人でEXを担当していたのですが、徐々に人が増え始め、今では3人のチームになっています。
ーwevoxはどのように活用されているんですか?
川地:EXのメンバーが揃ってきた昨年の10月ごろにwevoxを導入しました。施策の基本方針は、「wevoxを見てスコアの低いところを改善していく」こと。もともと全体的にスコアは高かったのですが、その中でストレス反応といった「健康」のスコアが他の項目と比べて低く、最初は加湿器を購入してオフィス環境を快適にするなど、ハード面のアプローチが多かったです。
他にも「自己成長」のスコアが下がった時には、会社全体でエンジニア・デザイナーによる勉強会を職種関係なく、任意参加で開催しました。自分の専門以外の領域を勉強できることに加えて、職種を横断した交流が生まれ、コミュニケーション系のスコアも付随して上がっていきましたね。このように、我々EXチームは常にwevoxと連動して施策を考え、実行しています。

ーありがとうございます。現在は全社テレワークということですが、どのように移行されていったのですか?
水野:今までは「週に1回までテレワークをしていい」というルールを運用していましたが、2月中旬にそのルールを廃止し、テレワークを推奨するようにしました。その後、3月30日に全社テレワークに移行しました。
ー移行はスムーズに行えたのでしょうか。
水野:滞りなく行えました。アルでは九州と四国に2名の開発メンバーが在籍しています。2人はもちろんテレワークですので、オンライン会議やチャットの活用などオンラインコミュニケーションを会社全体でしていたこともあり、違和感なく移行できました。
川地:アルは、普段オフィスに出社しているメンバーも含めて物理的な会話よりもチャットでのコミュニケーションを好む会社なんです。オフィスがシーンとしていても、チャットは活発に動いているみたいな(笑)。

杞憂に終わったスコアの全社公開への懸念
ーアルではwevoxのスコアを全社公開されているということですが、いつからされているんですか?
川地:今年の2月からスコアを全社で公開しています。去年の11月にEXチームが主体となって全メンバーと1on1を始めて、その時にスコアを見せながら会話をしていたのですが、まだwevoxを始めてすぐだったこともあって「データを点で見せてもしょうがない」と思ったんです。なので、ある程度データが溜まった段階で公開に踏み切りました。
ースコア全社公開のメリットは何だと思いますか?
川地:スコアを公開することでEXチームの施策の背景が理解してもらえるようになりました。「このスコアが下がっているからこういう施策をするんだな」と、こちら側の意図を汲み取ってもらえています。
また、総じて高いスコアなので、メンバーに「自分たちの組織はいい組織だ」という認識を持ってもらえて、対外的なPRにも繋がるなど、効果は大きいです。
ー全社テレワークに切り替えてから、wevoxのスコアが上がっています。テレワークに切り替えて組織が停滞するケースが多い中、驚きました。ズバリ、スコアが上がった秘訣は何だと思いますか?
水野:オンラインMTGをどう運営するか、テレワーク環境をどうサポートするかなど、テレワークのデメリットと言われるものを全社移行に先んじて潰していった結果、移動時間の削減といったテレワークのメリットだけが残り、メンバー1人ひとりが働きやすくなったんだと思います。
金子:アルの組織風土も、今の高いエンゲージメントスコアに大きく関わっていると思います。これもスコア公開の効果の一つですが、メンバー1人ひとりがアルの組織状態を把握しているので、我々のチーム以外のところでEX向上に向けたアクションがどんどん発生していますね。

川地:「テレワークには主体性が求められる」という一般論通りに、お互い離れている今の状況で、もともと強かったメンバーの主体性がより強く発揮されていますね。
一方で、メンバーがハイになっているという側面もあります。まだ始めて2ヶ月ですし、一時的に「テレワークいいじゃん」となっているだけの可能性もある。移動時間がなくなるためその分時間に余裕が生まれる。時間に余裕が生まれる分、睡眠時間が長くなって毎日元気に仕事ができる。こういった今の状態を一時的なものに終わらせないようにしていきたいです。
テレワークで鮮明になった「組織の強さ」をこれからのスタンダードに
ーなるほど。高スコアに繋がっている組織風土について詳しく聞かせてもらえますか?
川地:アルでは組織全体にミッションとバリュー(行動指針)が浸透しています。「360度協力する」というバリューがあるんですが、金子の言う通り、全員が組織に当事者意識を持っていて、部署関係なく助け合いが日々行われているのも大きな要因ですね。
水野:協力し合うことが大前提になっているんです。それが今のコロナの時期に、より強く機能しています。テレワークになって、組織の強さがより鮮明になりましたね。
ー全員に当事者意識…、強い組織ですね。「withコロナ」「afterコロナ」の時代において、エンゲージメントという概念は今までとどう変わると考えますか?
川地:「オフィスに全員集まる」という従来の働き方が変わっていく中で、エンゲージメントの重要性が高まると思っています。オフィスワークだと、メンバー同士が頻繁に顔を合わせるので、嫌でも「今いるこの場所に自分は所属している」という所属意識を持つことができます。一方で現在、そして今後は毎日オフィスにいるわけではない。むしろそれぞれが家の中にいて、離れて働くことが多くなってくる。そうした中で、「組織に所属しているんだ」という感覚、組織へのエンゲージメントをいかに持たせられるかが大事になってきます。チームで仕事をしていく上で、指標としてエンゲージメントに注目せざるをえない状況になっていると思っています。
水野:アルのwevoxスコアは、EXチーム主導でコミュニケーション系の施策を多くやっていることもあって、基本的にコミュニケーション系の数値が高いんです。上司との1on1が隔週で行われていて、「承認」「人間関係」のスコアがもともと高い。しかし全社テレワークでは、コミュニケーションのやり方を大きく変えていかないといけません。

そういった状況で、今まで通りの質の高いコミュニケーションをどう実現していくべきか、会社の方向性をどう伝えていくかが今後大事になってきます。これはアルに限らず他の企業さんにももちろん当てはまりますよね。組織内のコミュニケーションにおいて「組織状態を的確に把握できている」ことは必須だと考えていて、そういう意味では、エンゲージメントというわかりやすい指標の存在はかなり大きいと考えています。
ーありがとうございます。最後に、これからの時代どういう組織を作っていきたいか、そのためにEXチームとして何をしていくか、今後の展望を教えてください。
金子:先ほどお話した通り、「いい組織をつくっていくか」「どうやって組織で困難を乗り越えていくか」という意識がEXチームに限らず、全メンバーに根付いていて、その結果が今のwevoxのスコアに現れていると思っています。とは言え、全社テレワークに切り替わってまだ2ヶ月。今後アルという組織、そして社会にどんな変化があるかは誰にもわからないので、油断はできません。スコアの高さを手放しで喜ばずに、EXチームで先回りして施策を打てればと思います。
水野:今は組織状態がいいかもしれませんが、表出していないながらにメンバー1人ひとりに心に負荷がかかっていると思います。そしてそれが現れる時期が今後必ず出てくる。EXチームとして、それを踏まえた上で適度にメンバーの声をヒヤリングしていくことが大事です。「アルを心理的・機能的にセーフティな組織にする」の文言通り、これからもきちんとメンバーのことをケアしていきたいです。
川地:最初はテレワークをきっかけにエンゲージメントスコアを伸ばそうと思っていたんです。想定通りに伸びはしましたが、同時にもともとのアルの組織の強さに気づきました。アルには当事者意識の強い、主体的なメンバーがたくさんいる。EXチームとして、彼らの今の良い状態を一時的なものに留めず、afterコロナのスタンダードにしていきます。
(このインタビューは、新型コロナウィルス感染拡大防止のためオンラインで実施しました。)