INTERVIEWEE

株式会社NEWONE 代表取締役社長 上林周平氏

大阪大学人間科学部卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。
官公庁向けのBPRコンサルティング、独立行政法人の民営化戦略立案、大規模システム開発・導入プロジェクトなどに従事し、2002年、株式会社シェイク入社。企業研修事業の立ち上げを実施し、商品開発責任者として新入社員~管理職までの研修プログラム開発、新入社員~経営層に対するファシリテーターや人事・組織面のコンサルティングを実施。2015年より、株式会社シェイク代表取締役に就任。前年含め3年連続過去最高売上・最高益を達成。2017年9月、これからの働き方をリードすることを目的に、エンゲージメントを高める支援を行う株式会社NEWONEを設立。

誰もが知る大企業に就職したものの、思っていたような仕事ができずにふてくされる日々。いつの間にか、仕事や会社へのエンゲージメントは薄れ、気付いたら同僚とグチばかり話している…。今、多くの大企業でこのような光景が生まれています。働き方改革が叫ばれ、“良くも悪くも”経営陣や管理職へのスポットライトは当たる中、同じ渦中にいる若手社員たちは何を感じているでしょうか? この疑問を解決すべく、若手社員向けを始め、数多くの人材育成、組織開発の研修・コンサルティングを手掛ける株式会社NEWONE代表の上林周平さんに話を伺ってきました。「どのようなキャリアを歩むにせよ、今ほど自立が求められている時代はない」と語る上林さんが、若手たちに送るアドバイスとは?

「活躍する機会がない…」リアリティショックに悩む若手社員が増加

―大企業で働く若手社員は、今どのような課題に直面しているのでしょうか。

不確実性の時代の中、自分がどのような道を歩めばいいのか見失っている人が多いですね。というのも、今は終身雇用が当たり前ではなくなり、人材の流動性の高まりや副業解禁など働き方の選択肢が増えている時代です。いい面はもちろんありますが、選択肢が多いからこそ、大企業に入社した後の自分のキャリアや人生の選択を考えにくくなってきているのです。以前よりも、自己責任で物事を考えなければいけない時代になっているとも言えます。大企業に入ったからといって、会社任せにして何も考えなくてもいいという時代は既に終わりました。

―昔だったら「大手企業で出世をする」という分かりやすい道がありました。極端な話、就職した後は、そのことだけを考えていれば良かった。

そうです。しかし今は、そうした道だけではありません。こうした流れは若い人の多くも気付いていて、大企業の若手社員と話していても、「この会社をファーストステップに」と発言する人がここ数年で増えてきています。「とりあえず、最初は大企業で経験を積むのがいい」と考える人が増えていますね。

―ある意味では、時代の流れを読み賢く生きていこうとしています。

ただ、そういう考え方を持ちつつも、具体的にどういうステップを踏んで、将来のありたい自分になっていくかが明確でない人が多いのも実情です。「この会社にはずっといない。いずれ成長して出ていく」という漠然とした考えだけがある人が多い。そういう人たちほど、大企業に入った後に「リアリティショック」、つまり思い描いていたイメージとのギャップで苦しみがちです。

―どのようなギャップを感じるのでしょうか?

一番大きなギャップが、「思っていたよりも活躍する機会がない」ことですね。今は売り手市場ですので、企業はあらゆる手を使って自社のイメージを良くして、学生の気を引こうとします。だから、学生はすごく高い期待感を持って入社をします。しかし、蓋を開けてみたら1年経ってもろくな仕事が回ってこず、活躍できない日々が続き、キラキラしているはずの自分とのギャップがどんどん大きくなっていくのです。

―なぜ、若手社員に仕事が回ってこないのでしょうか?

仕事の高度化が、1つの大きな要因です。大企業ほど、IT導入で効率化が進み、簡単な仕事の多くはテクノロジーで解決するようになっています。その分、人間がやる仕事はより高度な仕事になってきているのです。例えば、「エクセルに数字を入力する」といった作業は、RPAなどで自動化が急速に進んでいます。もっと初歩的な仕事で言うと、「コピーを取ってきて」というのも、小さな承認欲求を満たす上ではいい機会でした。しかし、ペーパーレス化が進みこうした機会すら失われている状況です。

仕事が高度化することによる弊害には2つの種類があり、1つは「高度な仕事を渡せないから、昔ながらの手法で経験を積ませる」パターン。営業職だったら、「足で稼いでこい」とひたすら外回りをやらされてエンゲージメントが下がるパターンですね。このパターンは比較的昔からもあったかと思います。

もう1つのパターンは最近出てきているもので、「部署の業務が全て高度で、若手が取り組める仕事が極端に少ない」というものです。だから、「いつまで経っても同行だけ」という事態に陥り、自分が仕事をしている感覚、貢献している感覚が持てないのです。企画職などに多いパターンですね。他に、特に大企業だと、コンプライアンス上若手にはお願いできない仕事も年々増えています。

おかしな話ですが、人手不足が叫ばれているはずなのに、若手社員には仕事が回ってこない状況が多くの大企業で生まれているのです。

「うちの上司はいい人だけど…」

―すごい矛盾ですよね…。

だから、実は「上司との人間関係」より「やりがいへの飢え」で悩んでいる若手社員が多いんです。私の肌感覚としては、上司との人間関係で悩む人は年々減ってきていますよ。

―え、そうなんですか?

大企業においても、オラオラ系で引っ張っていくマネジメントではなく、支援型のマネジメントに変えていかなければいけない、という流れはあります。これまでのやり方を押し付けるのではなく、一人ひとりを支援する上司を徐々に会社が求めるようになってきたのです。だから、年々「すごい怖い上司がいて…」という声は減ってきていますね。もちろん、ゼロではありませんし、ハラスメントの問題は根深く残っているので、そういった課題に対しては引き続き対応しなければいけません。

―今の“部下”は“上司”のことをどう思っているのでしょうか?

よく聞くのが「いい人だけど…」という言葉ですね。この言葉の後には、「叱咤激励してくれない」「成長させてくれない」「活躍させてくれない」…などいろいろな思いが込められていると思います。

多くの上司も、部下との接し方を変えなければと、努力はしているのでしょう。ただ、どのような関係性を構築していけばいいのか、まだ模索段階であることも事実です。

―では、部下は上司に何を求めているのでしょうか?

そこが、若手社員自身もはっきりしていないことが、この課題の複雑なところですね。若手社員も「自分がどうしたいのか」が明確ではないので、何を上司に求めていいのかが分からないんです。

「無駄な残業はやめようね」、「押し付け型のリーダーシップは古いよね」、「働き方は多様化した方がいいよね」といった共通認識は部下と上司の間で持てているはずです。じゃあその先に何をすればいいのか、が見えていない。

これは極端な話ですが、以前担当した研修である若手社員が「圧倒的に同僚よりも活躍したいけど、毎日定時で帰りたい」と言っていたんです。彼はまだ入社して間もなく、何のスキルもなければ、実績も残していません。残業はしなくてもいい時代の流れもあるし、でも活躍はしたいという思いもある。何を軸に生きていくのかが明確になっていない、典型的な例です。

自由に自分のペースで仕事をするのか、ガツガツと仕事に打ち込んで他者よりも圧倒的に活躍できるようになるか。今の時代は、どちらもよしとされていますよね。だけど、まずはどっちを重視するか選択して一歩踏み出さないと、どちらも手に入れられません。大きな自由には、大きな責任が伴うものです。

将来のありたい姿と日常の業務をどう結びつける?

―選択肢の多さに惑わされて、選択ができなくなっているとも言えますね。

だから、我々が若手社員向けの研修でまず伝えるのが、「自分が80歳になるまでの人生を考えてほしい」ということなんです。そのくらい人生を俯瞰的に考えると、自分がどういう生き方をしたいのか、そのためにどういう一歩を踏み出せばいいかがはっきりとしてきます。そのうえで逆算すれば、今の自分がどういう選択をしていけばいいのかが、クリアになるのです。

―企業側は、こうした研修をすると転職を選択する若手社員が増えるのでは、と不安がりませんか?

ほとんどの企業がそういう不安を抱きますね。ただ、終わってみると多くの企業からポジティブな反応をもらいます。例えば若手社員の視座が高まって、他部署への異動や特別プロジェクトへの参加を募る公募制度が活性化したという声をいただいています。

80歳までの自分をイメージして、今いる会社を俯瞰してみることで、結果的にはエンゲージメントが高まる傾向にあるんですよ。「転職がいいか悪いか」という単純な二元論ではなく、もう少し高い視座で自分の立ち位置を考えることで、「あ、この会社で他にやれることありそうだな」「もっとこの会社を活用できるんじゃないか」と気付くことにもなるんです。

―なるほど。とはいえ、若手社員は日々の仕事にも対処しなければいけません。高い視座での人生の考え方と、日々の仕事をどう結びつければいいのでしょうか?

先程のリアリティショックは、まさにこのギャップに悩んでいる人ですよね。では、日常的な仕事とどう向き合えばいいのか。ここで大事なのが、「ビジネスの基本構造を知る」「成長は良質な仕事体験から生まれる」の2点です。

 

まずは、「ビジネスの基本構造を知る」から説明します。これは、小難しい経営論を勉強する、という意味ではなく「相手にとって価値を提供するとはどういうことか?」を理解してほしいということです。ビジネスにおいては、常に相手に期待値を抱きますよね。

―「この人だったら、ここまではしてくれるだろう」という期待は誰でもすると思います。

その期待値を超えることが、ビジネスとしての理想的な姿です。期待値を超えるからこそ相手は感動するし、「またお願いしよう」となります。この循環によって、ビジネスが成長していく。すごくシンプルな話ですが、ビジネスとはこうした構造で成り立っていることをまずは知ってほしいんです。

さらにもう1つ、「任せられる仕事の難易度や面白さ」は周囲からの信用度に比例する、とうことも知っておいてほしいです。信用をされていない人に、難易度の高い仕事や面白い仕事を任せられるはずがない。信用を得るためにも、相手の期待値を超える必要があるのです。信用度が高まれば、どんどん難易度の高い仕事や面白い仕事が舞い込んできます。

将来のありたい姿に近づいていくためには、まずはこうしたビジネスの構造を知り、日々の仕事から相手の期待値を上回ることが重要です。

嫌な仕事でも、工夫次第でエンゲージメント高く取り組める

―もう1つの「成長は良質な仕事体験から生まれる」についても教えてください。

優れた経営者に「自らが成長した機会」について聞くと、「仕事での経験」と答えた人が70%もいたというデータがあります。他の20%は他者からの助言、残りの10%は研修です。アメリカのロミンガー社という調査機関により明らかになり、「70:20:10の法則」とも言われています。つまり、良質な仕事体験をするか否かで、自身の成長曲線は大きく変わっていくのです。

―良質な仕事体験とは何なのでしょうか?

良質な仕事経験としては、例えば、他部門と連携しながら行う仕事や、戦略の構想などによって変革を導く仕事などがあります。こうした仕事を通して視野が広がりやすく、様々な試行錯誤が成長に繋がりやすいのです。そういった機会が多い職種は、良質な仕事体験を得やすい傾向があります。一方で、比較的単独で行い、前例を踏襲するような仕事経験では、最初にやり方を覚えた後は、なかなか成長に繋がりにくいことがよくあります。

ですので、良質な仕事経験を得られるかどうかは、職種によるところも大きいです。職種が、自らが望む方向性にそぐわなければ部署転換などで変えていくことも選択肢の1つに入ってきます。

もう1つは、仕事への取り組み方です。同じ仕事でも、主体性を持って楽しく取り組めているかどうか。これができている人といない人では、その後のキャリアに大きな違いを生み出します。同じ仕事でも、嫌々やるより、楽しんで活き活きと取り組んだ方が、自身の成長に繋がっていく。これこそが、高エンゲージメントで仕事に取り組んでいる状態と言えます。

―でも、どうしても嫌な仕事とかありませんか?

そうですね、仕事においては必ずしも楽しめる仕事ばかりとは限りません。そこで、この図を見てください。これは、エンゲージメントが向上する4つのポイントについてまとめたものです。

1つ目が「ならでは能力の発揮」。自分だからこそできる能力を発揮することで、エンゲージメントが高まっていく、ということです。このチームは、自分がいないと成り立たない、という実感を持ちやすいパターンです。

2つ目が「よき仲間と一体感がある状態」。これは、画一的な業務を行うチームの場合でも有効で、いい仲間たちと一緒に働く体験を通してエンゲージメントが上がっていく、というものです。

3つ目が、「将来自分がなりたい姿に対して、今の仕事が繋がっている」というパターンです。先程から話している80年後の自分をイメージして、今の仕事がどう繋がっているのか、を理解して仕事に没頭できるパターンですね。

4つ目が「価値創出に対するこだわり」です。この仕事が社会にとって、本当に役に立っているんだ、と実感できることでエンゲージメントが上がるパターンですね。

これらはどれか1つの要素によってエンゲージメントが高まるのではなく、それぞれが複合的に絡み合って高いエンゲージメントが維持されていく、というイメージです。

この4ポイントを抑えたうえで先程の質問に答えると、やりたくない仕事があったとしても、2と3のどちらかが当てはまればエンゲージメントが高い状態で仕事に取り組めるようになります。

チームと仕事を”Enjoy”するためには?

―嫌な仕事でも将来の自分に繋がっていたり、あるいはよき仲間が周りにいたりすれば、良質な仕事体験を得られる、という訳ですね。

そうです。例えば1の「ならでは能力」は若い人には難しいですよね。まだスキルも未熟だし、どういった仕事で貢献できるかが分からない人がほとんどでしょう。4は会社の事業や部署の役割に左右されるので、自分の力ではどうにもできないことが多い。ただ、2や3については、スキルの有無や事業内容、部署の役割などに関係なく、自らの工夫次第でエンゲージメントを高められるのです。

―どのようにエンゲージメントを高める工夫をすればいいのでしょうか?

2に関しては、いいチームにしていくために、若手社員でもできることはたくさんあります。例えば、視座を高めて上司や会社側の立場になって物事を考えてみることもそうでしょう。あるいは、リーダーシップを自らとることも可能です。リーダーシップは特定の役割の人だけが発揮するものではなく、誰でも発揮できるものです。私が知っている大企業でも、若手が大きな声で挨拶することで、職場の雰囲気をガラッと変えていったという事例があります。

そうやって、場を作っていくスキルは、支援型のマネジメントが求められる現代においては、かなり重宝されるはずです。若いうちから、いいチーム、いい職場を作ろうと取り組む経験が、今後大きなアドバンテージとなる可能性は非常に高いです。

―3の将来の自分と今の仕事との繋がりにおいては、まずは自分がどういう道を歩みたいかをしっかりと考えていくことが大切ですね。

そうです。ありたい自分の姿と、現在の仕事で活躍する姿が重なっている状態を私は「Fun」と呼んでいて、かなりエンゲージメントが高い状態を指します。しかし、多くの若手社員にとってはいきなりFunになることは難しいですよね。だから、まずは一つひとつの仕事を「Enjoy」していく姿勢を持つことをおすすめします。

―どういうことでしょうか?

仕事の中で、小さなやりがいを見つけて積み重ねていくのです。例えば営業職だったら、1カ月前より訪問者数を1.2倍に増やすためにはどうすればいいか?という発想でひたすらそれに没頭する。「今月は何社回らなきゃいけない」とネガティブに考えるのではなく、自分がいかにEnjoyできるかという発想の転換を行ない、仕事と向き合うのです。これは、日頃から意識さえすれば誰でもできるようになります。

―そうした仕事への取り組み方によって、良質な仕事体験が生まれ、自身の成長に繋がっていく。

はい。そして、繰り返しになりますが、その成長の先に自分がどうありたいか、80歳までの自分の道をイメージしておくことが大切です。自分自身の歩む道を常に思い描きながら、一つひとつの仕事を高いエンゲージメントで取り組む。こうした努力もしないで、安易に「転職しよう」「大手よりもベンチャーだ」と考えてしまうのは非常に危険です。そういう人は、仮に転職をしたとしても、その先で同じような悩みを繰り返す可能性が非常に高いです。

―自分の将来を見つめ、目の前の仕事をEnjoyし、チームで没頭できる環境を自ら作っていく。これは、職場環境やスキルのあるないに関わらず誰でもチャレンジできることですね。こうしたチャレンジもしていないのに、選択肢にばかり惑わされていてはいけない。

そうです。特に大企業はキャリア開発支援の制度が豊富に用意されています。ただ、多くの若手社員がその存在に気付かずに転職してしまったり、諦めて無気力に仕事してしまう。貴重な時間を無駄にしないよう、まずはこれまで話してきたことを参考に、何か1つでもいいので行動に移してみてください。そういう自立したビジネスパーソンを、これからの時代は求めていくのですからね。

ABOUT COMPANY企業情報

株式会社NEWONE

主な事業: コンサルティング、企業研修・組織開発、新卒採用支援事業、起業支援、シェアードサービス
設立年月日: 2017年9月1日
従業員数: 22名

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