INTERVIEWEE

株式会社チェンジ 取締役兼執行役員副社長 伊藤彰氏

エンゲージメントが高いチーム(※)の秘訣を探る、DIO STORY。

今回は、新たなテクノロジーを活用することで日本企業の業務オペレーションやビジネスモデルを変革するサービスを提供し続ける、株式会社チェンジの取締役兼執行役員副社長・伊藤彰さんにお話を伺いました。

※ エンゲージメント計測サーベイwevox(ウィボックス)にて測られたエンゲージメントスコアが81点以上(100点満点)のチーム。(wevoxにて計測されたエンゲージメントスコアの上位1%に当たる。)

細かい指示は与えず、PMに権限を委譲する

– 始めに、伊藤さんのチームがどのような業務に関わっているのかを教えてください。

当社では、モビリティやIoTビッグデータ、クラウド、セキュリティなどのテクノロジーを活用したサービス、およびIT人材育成の研修などを広く手掛けています。

その中で、我々のチームは、企業での業務利用向けのモバイルアプリの開発をメインで行っています。鉄道関係を中心に交通全般のお客様が多く、その他、社会インフラに関わるような案件を重点的に行っています。

– アプリ開発を行うにあたり、仕事の進め方の特徴などがあれば教えていただけますか?

基本的にはお客様ごとにプロジェクトが組成されるのですが、PMに任命したメンバーには、お客様とともに何がしたいのかを考えるところから、全て自分のやりたいように進めていいと伝えています。ですから、必要以上に細かい指示は与えないようにしています。

どんなアプリを作ってどう使って頂くのかの大枠については、企画段階で構想を描きますが、その後にお客様と話し合いながらどのように進めていくかで、でき上がるアプリの機能や利用感は変わるわけです。そこも含めて君の責任だし、自由な裁量でやってほしいと、なるべく大きく仕事を渡していますね。

– wevoxの「裁量」のスコアが高く出ていたのにも納得です。

全社的に任せる文化なので、仕事を抱えてしまうケースがあるのも事実です。それだけプレッシャーがかかるような働き方になっているため、「仕事の中での疲労感」「ストレス反応」が低く出てしまっているところは、マネジメントとして今後の課題だと考えています。

メンバーがお互いを把握し合うことで「助け合えるチーム」が実現

– マネジメントサイドのメンバーへの関わり方について、意識されていることは?

現在、チームには10名のメンバーがいますが、全員が技術の専門家というわけではありません。業務の流れに強い人、営業力に長けた人など、専門領域がそれぞれ違う人たちが集まっているので、自分ひとりの知識で全部できるということを前提にしていません。分からないことがあって当たり前。だから「周りに助けてもらおう」というのが基本的な考え方です。

ですから、困ったことがあったり、壁にぶつかった時は、チームのメンバーの誰が何をできるということをお互いに把握しておき、聞くべき人に相談できる、助け合えるチームづくりをしようとはいつも言っていますね。

– その場合、相談できる人・できない人、成果をあげられる人・あげられない人という差が出ることはありませんか?また、その場合のフォローはどうされているのでしょうか。

基本的に、待ちます。自分で何とかしようとする時期は必ずあるので、そこでいちいち言うと思考停止になってしまいます。プロジェクトの進捗については情報としてあがってきますから、そこで「どうやら雲行きが怪しそうだ」となるまでは注視し、話せる時を見計らって声をかけるようにしています。

– 本人が話せる状態になるのを見極める、と。

弱っている時に責めるようなかたちになるのは望ましくないですからね。私は前職で厳しい文化でずっと育ってきましたが、「自分がされてつらかったことはしないようにする」というスタンスを大事にしています。

本来、プロジェクトには終わりがありますが、我々は毎日使うアプリケーションを作らせていただいているわけなので、納品してからも関係は続いていきます。「失敗を恐れてやり過ごす」のではなく、「チャレンジも失敗もお客さんと一緒に取組み乗り越えよう」という文化形成をしている感じです。

メンバーが困っている時こそ、マネジメントは「窓口」となり手助けを行う

– お話を伺っていると、メンバー間の相互理解が非常に重要だと感じました。

おっしゃる通りです。うちのメンバーは、そのために不定期で「合宿」をしています。

いわゆるオフサイトミーティングなのですが、古参のメンバーが音頭をとり、一泊二日で温泉に行っています。そこでは細かい数字の話などは一切せず、チームの方向性についての議論や、チームの中で自分は何をしていきたいのか、そもそもなんでうちの会社に入ったのか、みたいな話をしていますね。もちろん趣味の話でも盛り上がりますから、仲良くなるための場という感じです。新しいメンバーが入ると、「そろそろ合宿に行くか」と誰かしらが言い出しますよ(笑)

– 伊藤さんご自身では、どのようなことをされていますか?

メンバーと一緒にお客様とのミーティングに出るようにしています。私と2人の時は、私に対してどう言うかを考えて行動しているはずなので、そこで何かを探ろうとすることにはあまり意味がないのかなと思っています。仕事のことは仕事のシーンで理解するのが一番。お客様からの質問で詰まった時にどんな対応をするのかなどは、その人の仕事の仕方を知るうえでもっとも参考になると考えています。

そもそも、困りごとがあった時に私自身が解決できることが過去に比べて少なくなっていると思っています。新しい技術を使ってお客様とともにビジネスや業務上の課題に立ち向かっていくわけで、誰もやったことがないことを一生懸命に取り組んでいるからこそ、誰も正解が分からないんです。

だからといってそれを開き直るのではなく、私自身の役割としては、困った時の窓口になり、答えまで導いてくれそうな人を連れてくるとか、一緒に考えてくれる人を引き当てるといったことをするように心掛けています。それは、特に抱え込みがちなメンバーほど手厚くしています。

そのために、私自身が他部署の人も含めて「誰がどんな仕事をしているのか」をできるだけ把握するようにしていますね。

支援行動が起きやすい環境の作り方とは?

– ここからは、スコアについて伺っていきたいと思います。「困難時の支援」を含め、支援行動の高さが特徴的だったのですが、意識されていることはありますか?

正直言って、私自身が支援行動を行うケースは少ないと思います。どちらかというと「支援行動が起きやすい環境づくりをしている」ということかもしれませんね。

たとえば、「他のメンバーの仕事にちょっと噛んでみよう」というのを一つのキーワードにしたりしています。プロジェクトメンバーじゃなくても、一回だけ打ち合わせに入ってみるとか、お互いが“いっちょ噛み”できるよう、いかに助長していくかは常に考えています。

– 忙しくなればなるほど、隣の人が何をしているのかがわからなくなりますよね。

だからこそ、です。似たような取り組みとしては、社内で使っているビジネスチャットのグループの板をできるだけ小さくしない、ということも。たとえば、必要最低限この3人がいれば成立するという案件であっても、あえてそこに6人くらい入れてグルーピングしておくわけです。

そうすると、ど真ん中で関わっていない人にもバンバン情報が流れますよね。後々、「これってあの時に聞いたよな」ということにつながったり、「あの板で流れていた案件だけど・・・」といったかたちで、非常に会話がしやすくなるのです。

効率性を阻害しているのは重々承知しています。しかし、お互いがやっていることを薄くでも理解しておくことの方が、トータルで見た時に得られるものは多いと考えています。

– 「公平性」のスコアも高めになっていますが、ここについてはどのようにお考えですか?

wevoxのスコアそのものを全社的に開示している点も、一つの要因かもしれません。

あとは…コミュニケーションの内容を一部のメンバーだけで閉じるようなことは極力しないようにしています。秘匿性が高かったり、特定の個人のセンシティブな内容でない限り、たとえば経営会議に起案中の事業計画であっても、「これはまだドラフトだからな!」と伝えたうえで、途中でメンバーに見せることもあるんです。

一度立てた目標であっても、臆せずに変えていく!

– 「目標達成意欲」のスコアも、非常に高い水準となっています。目標設定の仕方について、秘訣があれば教えていただけますか?

基本的にはMBO(目標管理)の仕組みを導入していて、通期で立てた目標を半期ごとに振り返るという運用を行っています。

気をつけていることは、メンバー全員の目標を私自身がキーワードとして頭に入れておき、ことあるごとに話をすることです。数字目標みたいなものはほっといても意識するはずですが、ふわっとしたテーマだと忙しい中で頭から離れてしまうことがあると思うんです。

– 思い出させるように働きかける、という感じでしょうか?

そっちの方が近いかもしれませんね。目標の内容によっては、「他のチームの誰々にこのテーマについて相談してみるといいんじゃないか」などと提案したりして、より意識が向くように働きかけることはしていますね。

– 目標の立て方についてはどうでしょうか。

「目標を変えることは辞さない」。これが基本です。

期初に考えたことが1年後も変わらずに重要か、という点については、多分に疑わしいと思っています。1年間を通じてやる業務が決まっていればそれでもいいのかもしれません。しかし、我々の場合はプロジェクトによってやることも、アプローチの仕方も当然変わってきます。であれば、「この目標は違ったから変えよう」と会話していくのが当たり前です。

– 理にかなっていると思いますが、マネジメントサイドとしては面倒ではないですか?

最低限半期に一度ですし、今の規模であれば十分できます。

仮に5項目目標が書けるとした場合、期初には3項目くらいしか設定しないようにしています。そもそもたくさん覚えられませんからね。それを半期で見て、「今はこれがやりたいから4個目に追加だな」「そもそも元の3つはこれでいいのか?」といった会話をしながら見直していくわけです。

イメージは、私が「やらなくてはいけないこと」を挙げ、メンバー自身が「やりたいこと」を挙げる。この両方をうまく取り入れた目標設定をしていくという感じですね。やらなくてはいけないことしか書かれていないのでは、気持ちも高まりにくいでしょうから(笑)

色々と考え方はあると思いますが、目標管理制度は運用が堅くなることで効果が出にくい側面があると思います。そこを打破するのは「会話をすること」ではないでしょうか。

「共感したい価値観」を目標設定の中や日々の行動に落とし込んでいきたい

– 最後に、今後目指す組織像について教えていただけますか?

スコアはそれなりに高くは出ていますが、「ミッション・ビジョンへの共感」など、理念・戦略・事業カテゴリに該当するような部分については、まだまだチーム内でやれることはあるのかなと感じています。もう少し浸透させることはできると思っていますね。

やっていたことがたまたま価値観に沿っているというケースは多々あるんです。ですが、「こういう価値観でやっているからこういう判断をしよう」と体系立って動いている感じはまだあまりないので、そこが次の課題ですね。

– 「共感したい価値観」とは、どのようなものなのでしょう?

「新常識をつくる」「そこまでやるかをやる」「失敗の次が本当の勝負」という3つのバリューです。

MBOを実施するうえでも、このバリューは当然意識しています。今後はさらに、たとえば「こうすれば成果が出ることは分かっているうえで、あえて踏み込んで新しいチャレンジをする」みたいなかたちで、もっともっと日々の行動に落としていけたらと考えていますね。

今回、wevoxをやってみて、いいところが高いなと嬉しく思った部分があります。それは、「挑戦する風土」のところです。

新しいチャレンジを怖がらず、何かを生み出すことに意欲が持てることは、弊社のように新しい技術を使って新しいテーマに取り組むことを推奨する組織では、重要な指標だと思っています。誰かが前に出た時に、はしごを外されないから安心して取り組めるという気持ちになれるのは大事なことで、それが見えたのは一つの自信につながっています。

裁量を与えたものの、思ったより個人のパフォーマンスもチームのパフォーマンスも上がっていないということは意外とあるのではないでしょうか。wevoxのスコアでも「裁量」のスコアは高い一方、エンゲージメントスコアは芳しくないというケースは多々あります。

今回の伊藤さんのお話はまさに、裁量を与えた結果チームのパフォーマンスが高まっているという非常に興味深い内容でした。特に印象的だったのは、支援行動を直接行うわけではないという点です。誰もやったことのないチャレンジだからこそ、解決できるリーダーではなく解決まで導けるリーダーの存在が極めて重要であると、改めて感じました。

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