2016年のグッドデザイン賞受賞、2018年6月にはSpiral Ventures、グリーベンチャーズなどから数億円の増資が決まるなど、急成長を続けているスポーツエンターテイメントアプリの「Player!」。チャットコミュニケーションを通じて、マイナー、メジャー問わずスポーツ観戦の可能性を広げるこのプロダクトには、多くの注目が集まっています。開発・運営を行うookamiは、設立から4年目のスタートアップ。オフィス代わりに使っている東松原の一軒家を訪ね、Player!の急成長を支える組織づくりの秘訣を聞いてきました。

INTERVIEWEE

株式会社ookami 取締役 CTO 中村文哉氏

小学生の時にサッカーと出会い、スポーツに明け暮れる。最近は国内外の外岩でクライミングするほど、クライミングに夢中。開発では主にSwift/Rubyを利用している。OSS開発にも積極的に参加しており、iOS/Android配信自動化ツールFastlaneのCore Contributorを務めている。
株式会社ookamiへジョイン後、スポーツエンターテイメントアプリ「Player!」の開発をリードしている。
慶應義塾大学理工学部機械工学科卒。福岡県出身。

株式会社ookami 執行役員 マーケティング担当 安部昌乗氏

どうも安部です。
App Storeのアップデート文を書くことが、仕事の8割を占めています。
残りの2割はオフィスをウロウロして、メンバーに話しかけるです。
最近はもっぱら嘘の話をしすぎて、インターン生にどんな話しをしても「それって、ホントですか?」って言われるのが悩み。
齢29にして、自業自得という言葉の重みに気づけました。

株式会社ookami CDO マッカートニー龍馬氏

高知生まれフランス育ち、地の文化とスポーツを体験し、様々な環境で生きてきた。
現在のお気に入りのスポーツはサーフィンとスケートボード。高校卒業後東京へ向かい、武蔵野美術大学に入ったが、数ヶ月後株式会社ookamiへジョインするため、大学を退学。
現在会社では主にHuman interaction designに集中しつつ、プロダクト、サービス、ブランドのデザインをリードしている。

マーケティング企画もデザインも、情報は全て「GitHub」に集約

― 今日はookamiの組織づくりや働き方について、お話を伺いに来ました。まずは、自己紹介からお願いします。

(安倍)はい、よろしくお願いします。私は名刺の肩書きはマーケティング担当となっていますが、Player!を多くの人に使ってもらうための施策やスポーツ団体との折衝、コンテンツ企画などを行っています。ビジネス周りに関わる部分の何でも屋さん、という感じです。

(中村)私は開発チームのリーダー兼CTOで、テクノロジー全般を統括しています。

(マッカートニー)私はCDO(Chief Design Officer)を務めていて、Player!のデザインを統括しています。開発とデザインは密接に業務内容が関わるので、ookamiでは2つのチームを合わせてプロダクトチームと呼んでいます。

― Player!というアプリについて教えてください。

(マッカートニー)Player!は試合を見ながら、テキストや絵文字などで他のユーザーとコミュニケーションを取ることで、新たな観戦体験を提供するスポーツエンターテイメントアプリです。テレビやネットで放送されている試合を1人で見る人は多いと思います。そんなときに、スマホをセカンドスクリーンとして、同じ試合を見ている遠く離れた人と、気持ちを共有しながら観戦できます。

スポーツライブエンターテイメントアプリPlayer!(プレイヤー) | 株式会社ookami

スポーツライブエンターテイメントアプリPlayer!(プレイヤー) | 株式会社ookami

― 確かに、家でスポーツを1人で見ているときに、興奮や悔しさを誰かと共有したい、という気持ちになりますもんね。

(マッカートニー)絵文字を使える、というのがPlayer!の特徴です。試合を見ながらだと、文章を打つのが難しい場面は多いですが、絵文字であれば感情を即座にシェアできますから。そうやって、1人なのにまるでスタジアムで多くの人と盛り上がりながら見ているかのような体験ができる「バーチャルなスタジアム」を作ることがPlayer!の狙いでもあります。

(安倍)もともとは、高校スポーツのリアルタイム速報を行ったのがきっかけなんですね。高校や大学のスポーツ大会って基本的にはテレビでもネットでも見られないですし、結果も協会がWebにアップする味気ないPDFだけ。

そんな状況の中、高校スポーツの試合をテキストでリアルタイム速報したところ、家族やOB、地元の人たちからすごい喜ばれたんです。まだまだ、スポーツには多くの可能性が秘めていると感じました。

(中村)Player!は高校や大学のスポーツ団体とも積極的に提携しています。そうやって、今まで日の目を見なかった競技やチームに光をあてる、というのもこのプロダクトの目指しているところですね。

― そんなPlayer!を手がけているookamiの組織づくりについて聞いていきたいのすが、注力している施策はありますか?

(安倍)施策ではないですが、ソフトウェア開発プラットフォームの「GitHub」をビジネスチームも含めて、全員のコミュニケーションツールとして使っていることは特徴の1つだと思います。エンジニアだけでなく、マーケティング担当者やデザイナーなど全スタッフがGitHubに情報を集約しています。中村がCTOとして参画したときに、こうしたフローに変更しました。

― どういう狙いがあるんでしょうか?

(中村)私が参画した2014年の時点では、LINEやチャットワーク、Facebookのメッセンジャーなどいろいろなツールを使っていて、情報が投稿されては流れていくという事態が起きていたんですね。これはまずいな、と思いGitHubに集約させるフローに切り替えました。

― なぜ、GitHubを選んだのでしょうか?

(中村)当時はPlayer!の開発初期でしたので「これからの1年はプロダクトをしっかりと開発するための期間にしよう」という意思表示をしたかったのです。そして開発だからと言って、エンジニアだけにまかせるのではなくチーム全員で作っていこう、という風土をつくりたかった。

だから、他のコミュニケーションツールではなく、開発のベースとなるGitHubを選んだのです。

(安倍)私はビジネス畑の人間なので、最初はGitHubを使うことに戸惑いもありました。でも1つの場所に情報を集約させることで、ビジネスチームとプロダクトチーム間でのディスカッションが活性化されたので、やってよかったと思っています。組織づくりにおいて、エポックメイキング的な出来事ではありました。

今も、Slackなどでコミュニケーションを取ることもありますが、基本的には全ての情報はGitHubに集約しています。

「融合する組織」をつくりあげる働き方

― ビジネス面の情報、というとどういうことを書いているのでしょうか?

(安倍)例えば「SNSでマーケティング施策を企画中です」といったようなことですね。企画初期でまだこれから揉んでいくイシュー的な段階から書き込んでいます。そこに「どういう目的の施策か、目標は何に設定するか」といった情報を追加していく。

そうしたプロセスをオープンにすることで、チーム全体にノウハウがたまっていきますし、意識の共有が図れるんです。

(マッカートニー)デザインのグラフィカルなデータについては「Abstract」というデザイナー向けのプラットフォームサービスを使って共有しています。そのリンクをGitHub上に全て集約しているので、デザイナー以外もデザインの進捗を見てフィードバックできるんです。

コードと密接に関わるのでエンジニアからはもちろん、ときにはマーケティング担当者からもフィードバックをもらうこともあります。

― なるほど。かなりオープンに情報共有を行っているのですね。オフラインでのコミュニケーションについては何か取り組んでいますか?

(マッカートニー)週に1回、朝の5分ぐらいの時間を使って、全メンバーが集まるLT(ライトニングトーク)を行っています。テーマは自由で、各々が興味のあることや取り組んでいる仕事について話をします。(安倍)さんがこの前発表したあれ、面白かったですよね。

(安倍)本当? 少し前に「VTuberはなぜ今流行っているのか?」という分析をして、みんなの前で発表したんです。流行っているものの背景を知っておくことは、エンタメアプリをやっている我々には必要ですからね。

(マッカートニー)他にもデザインや開発に関する技術的な話など内容は多彩です。発表はリーダー陣に限らず、全メンバーが持ち回りで行っています。

(中村)エンジニアだけ、デザイナーだけで勉強会を行うのではなく全メンバー参加、というのは意識的に行っていますね。職種関係なく、チーム間のナレッジシェア、エデュケーションには力を入れています。

― お話を聞いていると、職種で分けられているチーム間で垣根を作らないようにしているように感じます。

(安倍)そうですね。垣根を作らない、という意味でいうと席もチームで分けていなくて、ごちゃ混ぜです。これも、職種を超えてコミュニケーションが発生するように工夫している点です。

― なるほど。ookamiさんの組織づくりのポリシーは「チーム間の連携を密に」ということになるんでしょうか?

(中村)もっと踏み込んで言うと「融合」ですね。コンテンツを作る人たち、マーケティングを行う人たち、開発やデザインをする人たち、全員が融合し合いながらPlayer!を成長させる。それが、我々の組織づくりのポリシーです。

(マッカートニー)意思決定も、必ずリーダーが各チームメンバーから意見を吸い上げたうえで、全チームのリーダーが参加するミーティングで行っています。デザインの話はCDO1人だけで決める、といったことはない。

(安倍)だから、しょっちゅう意見はぶつかるんですよね。我々ビジネス側からすれば数値目標は常に意識しているので、数値を達成するためのアイデアを出す。一方でデザイナーやエンジニアからすれば「いや今それを実装してもUI/UXに悪い影響を及ぼす」という意見が出てくる。

(マッカートニー)でも私としたら、そうした数値目標に対する悩みを知ることもできるので「じゃあ一緒に最適な解決策を模索しよう」という会話ができるんです。CDOなので、当然デザイン面を中心に考えていますが、同時にチーム全体のことについても俯瞰しながら考えています。

(中村)GitHubを使ったり、全メンバーのLTを行ったり、席をバラバラにしたり。これらは全て「融合する組織」を作っていくための取り組みとも言えます。

「理不尽な成長」を描いて、パッションをぶつけさせる

― チーム間の融合によって、ナレッジシェアや精度の高い意思決定がされ、Player!の成長につながっている、ということですね。とはいえ「融合する組織」というマインドをメンバーに落とし込むのは難しくないですか?

(マッカートニー)プロダクトに対するパッションは間違いなくみんな持っていて、それでみんながつながっています。「Player!で、これまでスポットライトが当たっていなかったチームや競技を世に広めたい。スポーツの新たな体験をユーザーに届けたい」といったパッションをベースに、みんなが融合している。

それに、Player!はスポーツを通してコミュニティを作るプロダクトでもあるので、「コミュニティづくり」に関しては高いマインドを持ったメンバーが多い。

(中村)トップダウンで指示を待つ、というメンバーや自分の仕事だけをやって、組織のことには受け身というメンバーはいないですね。自然とボトムアップで、ookamiという組織をいかにいい組織にしていくか、という考えを持ってみんな動いてくれている。

― 「融合する組織」にするために、企業理念の浸透なども積極的に行っているのでしょうか?

(マッカートニー)今はookamiとしての理念は、それほど注力して浸透させようとしていません。

(安倍)それよりも、少し強引な表現ですけど「理不尽な成長を描く」ことを重要視しています。

6〜7月にサッカーのワールドカップに合わせて、Player!のコンテンツを地下鉄や私鉄のサイネージに投影する企画を行ったんですね。そうした大掛かりな挑戦を前にすると、自然と一体感が生まれてきます。

(マッカートニー)サイネージへの投影ってデータをどう作ればいいのか、仕様に関する資料がほとんどないんですよ。大変でしたけど、みんなで必死で考えながらなんとか乗り切った。一致団結できたプロジェクトでした。

(中村)だから我々リーダー陣も、ユーザーにとってメリットのある意思決定はもちろん、メンバーのパッションをぶつけられる挑戦的な意思決定をすることも同時に大切にしています。

― スタートアップかつプロダクトが成長している段階の組織づくりでは、企業理念の浸透よりも、挑戦する機会の方が大事なこともある、ということですね。

(中村)そう思います。それでも、カルチャーのようなものは自然と生まれてきているんです。たまに「ookamiのカルチャーって何だろう?」という話をするのですが、不思議なことにそこで出てくるワードがみんな似ているんですね。

(安倍)「アクティブ」「エネルギッシュ」とか。一番よく出てくるワードは「若さ」。これは、年齢的な若さじゃなく、「挑戦する心を常に持っている」という意味です。

(マッカートニー)うん、ookamiという会社を一言で表すなら「若さ」ですね。

― 最後に、今後のPlayer!の展望を教えてください。

(マッカートニー)引き続き、大学スポーツ、高校スポーツには力を入れていきたいと思っています。そして、「スポーツ観戦と言えば、Player!」となるぐらい絶対的存在を目指していきます。

(安倍)2020年には東京オリンピックが開催されます。スマホの枠を超えて、サイネージなどでPlayer!をより身近に感じられるような施策を打っていきたいですね。

(中村)今回のオリンピックは平日休日問わず、日中に大半の試合が行われます。電車に乗っている時や街を歩いている時にPlayer!の画面が目に入り、その瞬間に戦っているアスリートを応援して、熱狂を感じられる。そんな世界を作り上げていきたいですね。

― 「融合する組織」「プロダクトへのパッションと挑戦機会」この2点がookmaiの組織としての強さであり、Player!急成長の理由とも言えますね。多くのスタートアップにとって、とても参考になるはずです。本日は、貴重なお話ありがとうございました!

 

ABOUT COMPANY企業情報

株式会社ookami / ookami, inc.

主な事業: スポーツエンターテイメントアプリPlayer!、その他スポーツ情報インフラの開発・運営。ニュースキュレーションシステム、ライブテキストシステムの提供。
設立年月日: 2014年4月
従業員数: 24名
(※2018年8月現在)

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