INTERVIEWEE

株式会社DONGURI CEO ミナベトモミ

家電メーカーでのPdM経験の後に独立。事業/組織コンサルタントとして、10年以上メガ/ミドルベンチャーやスタートアップのハンズオン支援を行う。現在は、DONGURI CEO / BizReach CDO室 / Mimicry design / inquire などに参画。

スタートアップ経営を体験できるボードゲーム「Team of The Dead ~お化けのチームで追い払え!」が、2019年10月に発売を開始しました。コンサルティングファームDONGURIと、wevoxチームのコラボレーションにより誕生したこのボドゲ。ターン制カードゲームとスゴロクの要素を掛け合わせたオリジナルルールの中で、マネジメント、採用、人材育成、などHR領域の酸いも甘いも体験できるすごいゲームなんです。そんな新感覚なボドゲは、どのようにして生まれたのか? プロジェクトの中心人物であるDONGURIのミナベトモミさんに制作ウラ話を伺うと、新たな組織像である「自己組成型チーム」のリアルな実態が見えてきました。

ウワサの経営体験ボドゲを生み出したDONGURIが目指す「自己組成型チーム」という理想

 きっかけはミナベさんのボドゲ愛

―「Team of The Dead ~お化けのチームで追い払え!」は本当に新感覚のボードゲームですね。実際にプレイすると、ワイワイ楽しみながらもチームマネジメントの新たな視点を手に入れることができました。

ありがとうございます。このボードゲームでは、マネジメントコストに着目をして、採用から人材育成などチームマネジメントの難しさを体験できます。多くのマネージャーが潜在的に存在するマネジメントコストを考慮しないままチーム推進した結果、組織が回らなくなるバッドパターンに陥っています。なぜそうなるのか、どうすればいいチームマネジメントできるのかといったことを、このボードゲームを通して感じることができるんです。

―プレイする人によって、チームマネジメントの方法が全く違うのも面白かったです。コストが低いけど能力も低いコウモリばかり集める人もいれば、高コストで即戦力のキャラクターを中心に集めて堅実に進める人もいます。

勝ち方も人それぞれ違うので、これといった正攻法はありません。このあたりもチームマネジメントに絶対的な攻略方法がないのと同じです。4人でプレイする中で「そういうチームマネジメントもあるのか」「がんばって育成していると、いいことあるんだ」など、マネジメントや組織づくりについて色々なことを感じられるゲームになっています。

―本当によくできたゲームだと思うと同時に、「このボードゲームを作ったのはどんなチームなんだ?」という疑問も沸いてきました。今日は、このボードゲームがどのように生まれたのか、そしてDONGURI自体はどのようにチームマネジメントを行っているのか聞いていきたいと思います。まずは、DONGURIがどういう会社なのか教えてください。

弊社は、「事業デザイン(Business design consulting)」と「組織デザイン(Organization design consulting)」の2軸で事業展開をしているコンサルティングファームです。事業デザインの軸では、リーン/HCD/デザイン思考を活用したプロダクト開発から、いわゆるBizDevの事業構造設計まで幅広い領域に携わっています。組織デザインの軸においては、組織人材マネジメントの構造/制度設計及びその導入に当たってのチェンジマネジメントを含むコンサルティングを中心に、組織の中に入り込み変革支援を行います。

―事業のコンサルティングだけではなく、組織デザインまで行っているのが特徴的ですよね。メンバーには組織コンサルタントもいれば、プロダクトデザイナーやスクラムマスターもいるなど、とてもバラエティに富んでいます。

もともとそうしたスペシャリストたちが集まる組織として、私が立ち上げたのがDONGURIです。多職能の人たちが集まるコミュニティ、と言ってもいいかもしれません。特定の形にとらわれないことを大事にしていて、「事業をもっと楽しく。組織をもっと楽しく。」をビジョンに様々な企業やスタートアップ、自治体とのプロジェクトを行っています。

―そんなDONGURIがどのような経緯で「Team of The Dead ~お化けのチームで追い払え!」を作るに至ったのでしょうか?

もともと私がボドゲ好きな人間で、ずっと昔からいつか自分でも作りたいと思っていました。色々なところでボドゲ愛を語るぐらい大好きで、ある日wevoxのデザイナーを務める竹田さんたちと飲んでいたときにも、「ボードゲーム作りたいなぁ」とずっと言っていたんです。すると、後日竹田さんから「ボードゲーム、作りませんか?」と連絡が来たんですよ。

―へぇ! 話していたら、現実になったんですね。

wevoxチームが、7月5日に行われたチームリーダーカンファレンス「PxTX」に合わせて色々なグッズを作りたいと企画を練っていたみたいで、竹田さんがいいタイミングだと声を掛けてくれたんですよね。とてもうれしいお声掛けだったので、「ぜひ一緒に作りましょう」と返事をしました。

遊びながら改善をしていく開発スタイル

―それがいつのお話ですか?

今年の3月ぐらいですので、実質4カ月程度で制作したことになります。

―そんな短期間で作ったんですか! ぜひ、どのように作っていったか聞きたいです。制作が決まり、何から着手したんですか?

まずは、私がボードゲームのリサーチを行うことから始めました。どんなルール方式があるのか、どんな遊び方があるのか、いろんなボードゲームをザッピングしながら整理したんです。同時に、遊ぶことでユーザーにどんな体験を与えたいのか、といったことも考えていきコンセプトメイクをしていきました。最終的には10案以上のアイデアができて、それを一度竹田さんに送りましたね。

―コンセプトを考えるうえで意識していたことはありますか?

アトラエさんと組むということで、採用からマネジメントまで一連の流れが体験できるゲームがいいのかな、という考えはありました。コラボレーションする相手の良さ、特徴をどう取り入れるか、という視点ですね。

それから、今フィンランドなどでゲームに参加することで行政や経営の意思決定を行う、「デザインゲーム」という取り組みが生まれ始めているんですね。ゲームという参加しやすい足場かけの設計があることで、誰でも意思決定に加われるという美しい文脈があって、そうした世界観を再現したいという思いもありました。

―素晴らしい取り組みですね。10案ほどのアイデアを送ってからは、どのようなステップを踏んだのでしょうか?

送ったアイデアをベースに竹田さんと壁打ちをしながら、3種類のプロトタイプを作成しました。まだコンセプトもハッキリとは固めておらず、ルールやカードの名称もゆるいものです。

そして、プロトタイプの中から一番ゲームとして成り立ちそうなものをアトラエさんに持ち込んで、そこからはとにかくひたすら遊ぶ、という期間に入っていきます。プロトタイプの作成までは、私が1人で一気に進めましたが、そこから先は「このコラボチームで楽しく遊びながら改善していきましょう!」と明確にギアをチェンジしました。

―コラボチームはどのような陣営だったのでしょうか?

wevoxチームは、竹田さんと私と同じくらいボドゲ愛のある木下さんと紺谷さんの3人。主に、私とwevoxチームの3人で毎週遊びながら、バックログを溜めてアップデートしていきました。後から聞いたら木下さんは、偶然ではあるのですが、期初に「ボードゲームを作る」という目標をOKRに設定していたみたいです。すごく心強い3人が揃ってくれました。

DONGURIチームは私とアートディレクターの五味、イラストレーターの中園の3人体制です。プロトタイプを作成したあと、バックログ課題管理で目線合わせを行い、そこから先は私以外の2人が制作をゴリゴリ進めてくれました。

主にはこの6人のコラボチームで、Slackでコミュニケーションを取りながら、週1回遊び、ひたすらプロトタイプをアップデートするサイクルを1カ月ほど続けたんです。

 90ものバッグログを積み重ねて磨かれたクオリティ

―どのようなフィードバックを重ねていったのですか?

始めの頃は、まだコンセプトやルールがゆるかったので、大枠の部分を議論しながら遊びました。最初は、勇者がモンスターを倒すっていう世界観だったんですよ。竹田さんからドラクエ的な世界がいいのでは、というアイデアが出て、その方向で考えていたんです。

―そうなんですね。でも、最終的にはプレイヤーがお化けになって人間を倒しますよね。

そう、逆転したんです。イラストレーターの中園から「人にフォーカスするとマネジメントバッドパターンのメッセージが生々しくなるから、プレイヤーがお化けになる設定の方がいいんじゃないか」と提案があったんですよね。確かに、その方がメッセージは伝わりやすい。wevoxチームも「いいですね」とすぐに反応してくれました。

それから、「サイコロを通常の1~6にすると早く進みすぎてしまうから、1~3を二面ずつ配置したらどうか」というアイデアがwevoxチームの木下さんから挙がってきました。ボドゲ好きならではの発想で、この改善のおかげでゲームスピードが早すぎず遅すぎない、適切な進行速度に調整できました。

―すごい。コラボレーションによって、ゲームのクオリティが磨かれていったことが分かります。

最終的には90個近くにものぼるバックログを重ねて、アップデートを進めていったんです。納期ギリギリまで煮詰めていき、なんとか間に合わせることができました。結果的には想像を超える、素晴らしいクオリティのボードゲームになったと思っています。

―企業のコラボレーションによるプロダクト開発は近年注目を浴びていますが、足並みが揃わないなど課題を抱えるプロジェクトも多いです。今回はコラボレーション開発の成功事例としても、注目できますね。

そもそも私が今回wevoxチームとコラボレーションをして開発を進めた理由は3つあります。

1つ目の理由は、今後このボードゲームをwevoxチームが活用することを前提にしたとき、自分ごと化できる流れがあった方がいい、と考えたことです。「DONGURIが作りました」だけだと、当事者意識が生まれにくい。「一緒に作りました」と言える環境を用意することで、お互いがこのボードゲームを自分ごととして活用できます。

2つ目が「このボードゲームを作る過程自体を楽しいものにしたい」という思いからです。自分たちだけじゃなくて、wevoxチームと一緒にワイワイ遊びながら開発を進めていく。そうやって楽しむことを組み込んだ仕事のプロセスは美しいですし、だからこそ高いクオリティのものが生まれると信じています。

3つ目が、wevoxチームはプロダクト開発に強いので、お互い刺激を受けながら学び合えるのでは、と思ったからです。思ったとおり、wevoxチームのみなさんからは、的確なバックログをいただけて、すごく開発しやすかった。バックログチケットの粒度もピッタリはまる感覚があって、わざわざ噛み砕いたり、項目の整理をしたりする必要がなかったんです。普段みなさんが高いレベルの中でプロダクト開発に携わっていることを体感できて、いい刺激になりましたね。

「構造理解の欠如」が良質なコラボを妨げる

―逆に言えば、バックログの感覚が合わない、チケットの粒度が合わないといった課題が、良質なコラボレーションを妨げる要因にもなり得るということですよね。ミナベさんが事業デザインに関わるなかで、そうした事例をよく目にしてきたかと思います。どう対処すればいいのでしょうか?

そうですね、バックログのHOWの部分にばかりお互いが着目してしまって、プロダクト開発が進まないということは他社のコンサルティングをしている中でよく見かけます。そうなってしまう原因のほとんどが「構造理解の欠如」にあります。

今回の場合を例にとると、このボードゲームが「チームマネジメントを体感できる」「楽しみながらプレイできる」「マネージャーではない人でも経験値を得ることができる」といった構造であると両者間でしっかりと共有できていました。さらには、お互いがボードゲームのルールにおいてできること、できないことといった限定条件を理解したうえで対話ができていた。

しかし、そこまでお互いの視線を合わせられない場合はもっと速度を落とし、そもそものプロジェクトのコンセプト、設計思想といった構造理解や、開発上で可能、不可能な条件を整理し可視化して共有するといったプロセスを踏むことが大切です。ここをおろそかにして、いきなりプロトタイプの検証に入ってしまうと、「ISSUEとHOW」の紐付けがうまくいかず、議論が噛み合いません。そうなると、本来解決すべき課題そっちのけで、HOWベースの議論にばかりに執着してしまって、チーム間がギクシャクし始める…なんてバッドパターンにも陥りがちです。

―なるほど。チームの全員が、いつでも構造的な視点に立ち返れることが重要なんですね。スムーズに開発が進んだように思うのですが、苦労はありましたか?

とにかく時間との戦いでしたね(笑)。DONGURI内で言えば、プロトタイプの検証に入ってからは、私はバックログのチケットを整理して、他の2人にパスをする役割に徹していました。その後2人が、次にwevoxチームと遊ぶまでの1週間でプロトタイプを作りまくり、Slack上でフィードバックをもらいながらアップデートをしていくのです。

私は、彼らがあげてくるアイデアに対してはほとんど意見を挟んでいません。信頼できる2人ですし、出てくるプロトタイプが全て納得できるものでした。それにクリエイティブのスキルだけでなく、2人は予算、進行管理といったプロジェクトマネジメントの経験も豊富なので、安心して任せることができました。

それから、Slackは全てのDONGURIメンバーにもオープンにしていたので、新鮮な視点、それぞれの専門的な領域の視点から良質なフィードバックがくるんです。キャラクター設定やランダムイベントの内容など、細かなところは色々なメンバーが意見を出し合いながら作り上げていってくれました。

 

(実際のSlackの画面)

 

―ものすごく高いチーム力を発揮していることが分かります。そうしたチームはどのようにつくられていったのでしょうか?

我々が他社の組織デザインをするときに、ハード面とソフト面の2軸で考えるようにしています。ハード面は組織構造や人材マネジメントの仕組みのこと。ソフト面は、対話型組織開発というグループプロセス構築の手法をベースに、平たく言えば「どうやってコミュニケーションをしていけばいいんだっけ?」といった手法のことを言います。この2軸を企業にインストールして、組織力を高めていくのが組織デザインの役割です。

こうした考えは、もちろんDONGURI自体にも適用していて、創業以来様々な取り組みを行ってきました。ですので、一言で説明するのは難しいのですが、私が理想としている組織のあり方として「オートポイエーシス/自己組成」という考え方があります。

―どういう考え方なのでしょうか?

チームを1つの生命システムとして捉え、自ら組成されていくような組織。メンバー全員が、組織を成す意味で重要な役割を担っており、相互作用しながら成長していくようなイメージです。今はまだロマンに近いのですが、こうした組織形態を最上の美として考えています。そうした理想がある一方で、個々人の「内発動機ドリブン」なチームマネジメントを大切にしています。

―内発動機ドリブン…ですか?

はい、個々人のwillを最も大切にする考え方です。創業以来変わらない軸として持っていて、1on1や様々なコミュニケーションにおいてwillを最も重視し、相手を理解するようにしています。よく「will、can、must」という言い方をしますが、DONGURIにおいてはwillを80%ぐらいの比率で重視しているんです。「自分は何をしたいのか、何者なのか」をお互いが話し合って、相手を知っていく。このプロセスを強化していけば、canとmustは自然と生まれていくんじゃないか、と考えています。

組織内のコミュニケーションでのボトルネックを突き詰めていくと、結局は上司と部下の関係性にいきつきます。部下にとっては、上司との関係性が全て、という状況に陥りがちなんです。ですので、上司が悪いコミュニケーションを取っていたら、どれだけいい組織構造、仕組みを持っていても悪い組織になってしまう。

だからこそ、私もCEOという立場でメンバーと接するときは、相手の根っこの部分から承認できるようなコミュニケーションを大事にしています。このキーとなるコミュニケーションには、構造的な問題や人材マネジメントの問題を絡ませたくない。組織構造や人材マネジメントの仕組みは、あくまでも補助的なツールであることが望ましいのです。

1対1の純粋なコミュニケーションにおいて、相手のwillを尊重し、承認していく。これが内発動機ドリブンという考え方です。この考えをベースに、個々人が自らやりたいことに挑戦し、なおかつマクロな組織状況においてもしっかりと成長をして、自己組成的に進化しているのがDONGURIの目指す組織像です。

―確かに、Slackでのやり取りを見ているとみなさん楽しみながら、いい意味で好き勝手にアイデアを出し合っていることが分かります。その結果、チームとして最高のアウトプットを生み出している。内発動機が認められているからこそアイデアを出すことに躊躇はないし、全員がチームとしての成功を目指しているから、アウトプットも磨かれていく。

まだまだ発展途上ですし、試行錯誤を進めている途中ですが、自己組成型組織は理想系として常に思い描いています。こうしてボードゲーム開発の道のりを振り返ってみると、そんな理想を追い求めるチームの1つのあり方を表しているとも言えますね。

―ありがとうございます。そんなDONGURIがwevoxとのコラボで生み出したこのボードゲーム。最後に、改めてどんな人に遊んでもらい、どんな体験をしてほしいか教えてください。

マネージャーや人事など組織づくりに携わっている人はもちろん、これからマネジメントを始める人にもぜひ遊んでほしいボードゲームです。ゲームで遊ぶうちに様々な課題が降り掛かってくるのですが、これらの課題は現実世界でも起こりうるものばかり。

これまで多くの人はそうした課題に対して、恐怖感や忌避感などネガティブな気持ちで解決に取り組んでいたと思います。しかし、このボードゲームを終えた後はきっと「チームマネジメントの課題も楽しんで解決すればいいんだ、マネジメントってこんなにポジティブに携われるんだ」と感じてもらえるはずです。ぜひ、みなさんで笑いながら遊んで、次の日からのチームマネジメントが少しでも楽しくなるきっかけになればうれしいです。

(Team of The Dead 特設ページはこちら!