INTERVIEWEE

Simple'Z Co.,Ltd Maclogic Co. マネージャー Hla Phone(ラ・フォーン)氏

2000年4月にOHTAKE Noodle Machine mfg.Co.,Ltd.にて電気技師として従事。ハードウェア工学の知識を活かしたOJTトレーニングなどの業務も行う。2013年よりミャンマーにて現地の農業労働者に日本の技術者を紹介し、工業会社へ機械及び電気供給などに従事。2014年から平城商事の子会社となるSimple'Z Co.,Ltd.にてマネージャーとして就任。現在はネットワーク管理に関わりながらも財務管理、資産管理なども行う。趣味はミャンマー現代詩を書くこと、読書。

Simple'Z Co.,Ltd Maclogic Co. チームリーダー AYE THI THEIN(エティティン)氏

2014年から日立ICTビジネスサービス株式会社にてITセキュリティアシスタントとして従事。2015年より日立製作所ITサービスマネジメント部サービス企画グループの管理者としてプロジェクト管理やお客様との温かい関係性を確立し、成果を果たす。その後Simple'Z Co.,Ltd.へ入社。Maclogic Co.チームのリーダーとして人材育成やサービス品質のチェックを行う傍ら、エンゲージメントの高いダイナミックなチームビルディングを行っている。

エンゲージメント向上への取り組みは日本でも始まったばかりですが、海を越えたミャンマーでエンゲージメントと向き合い組織改善への挑戦をしているSimple’Z Co.Ltdという会社があります。従業員は全員ミャンマー出身で、「楽天市場」「ヤフーショッピング」などのECサイト開設や運営のサポートを3年以上行っています。エンゲージメントスコアも非常に高く、組織状態も良好。ミャンマーではどのように組織づくりが行われているのか。そのポイントを取材していたところ、海を越えても共通する組織づくりの難しさが浮き彫りになってきました。

メンバーのスキル把握は”成長スピード”までをセットで行う

― 本日はミャンマーを拠点にするSimple’Zさんの組織づくりについて、お話を伺わせてください。まずは、自己紹介をお願いします。

(エティティン)私はSimple’ZでECサイト運営のサポートを行うSZ&Maclogicチームのリーダーを務めています。メンバーは全員ミャンマー出身で、10人ほどが在籍しているチームです。

(ラフォーン)私はミャンマー現地のマネージャーを務めていて、wevoxを使ったエンゲージメントスコアの測定業務は、私が主導して行っています。

― エティティンさんのチームはwevoxで非常に高いスコアを出しています。ミャンマーでは、エンゲージメントなどの指標をもとにした組織づくりは多くの企業で行われているのでしょうか?

(ラフォーン)いえ、まだトップダウンでメンバーを細かく管理してマネジメントをしている企業が多いですね。社員の声を聞く、という企業はほとんどないはずです。

― マイクロマネジメント型の企業が多いということですね。Simple’Zは珍しい存在になりますね。

(ラフォーン)はい、ミャンマーではかなり珍しい会社だと思っています。

― 具体的にどのような組織づくりの取り組みを行っているのでしょうか?

(エティティン) SZ&MaclogicチームはECサイト上でのHP制作から商品登録や画像の切り抜きまで様々な業務を行っています。そうした細かなタスクが1日単位で日本から届き、私が各メンバーに割り振りをして業務に当たっています。しかし、納期までに終わらせようとすると、どうしても能力のある人に仕事が偏りがちで、組織課題になっていました。実際に「仕事量」に関するエンゲージメントスコアも低い点数が出ていたんですね。

そこで、私はまず各メンバーのスキルの把握を意識的に行うようにしました。スキルを把握する際は2つのポイントを意識しています。1つ目は、何か仕事を教えるタイミングで、どこまでできるかをチェックしその時点でのスキルを把握すること。そして2つ目は、もう一度同じような仕事を振ったときに、どれくらいできるようになっているか、で成長スピードを把握することです。

― その時点のスキルの高さだけでなく、成長スピードの把握までを心掛けているのですね。

(エティティン)はい。そうすることで、各メンバーがスムーズに対応できる業務だけでなく、成長するための少し難易度の高い業務の割り振りもできます。加えて、毎日お昼に必ず「昼礼」を行っていて、その日の作業がどれくらい進んでいるのか、間に合いそうなのかを確認します。細かくコミュニケーションを取ることで、仕事量の調整に早く手を打てるようになり、納期遅れのリスクを減らせます。日々、タスクが更新される仕事ですので、毎日お昼のタイミングで進捗を確認するのは欠かせないですね。

― 昼礼の時点で「間に合いそうにない」という声が上がったときはどうするのでしょうか?

(エティティン)私がサポートで入るようにしています。間に合わなさそうなときというのは、ほとんどがそのメンバーが分からないことや課題に突き当たったときなので、サポートに入りながら教えるようにしていますね。単純なスキルだけではなく、日本語の指示書が理解できない、ということもあるので、日本語を教えることもあります。

日本で働いた経験が、マネジメントのベースに

― なるほど、実際にwevoxでの「仕事量」のスコアも10スコア以上改善されていますね。「賞賛」に関するスコアも高いですが、どのような工夫や心がけをしていますか?

(エティティン)メンバーを褒めることを意識しています。つい最近では、メンバーが仕事と両立して日本語の試験勉強も行っていたので「よく頑張っているわね」と声かけをしました。メンバーが今何に頑張って取り組んでいるか、は注意して見るようにしています。褒めることを意識してから、チームの雰囲気も明るくなったように思います。

(ラフォーン)エティティンさんのように部下に気さくに声をかけたり、サポートに入ったり、褒めたり、というマネージャーはミャンマーではまだまだ少ないと思います。私がもし「間に合わない」とメンバーから言われたら、怒ってしまうかもしれません。エティティンさんは、メンバーに寄り添いながらすごく頑張ってくれていると感じています。

― そうしたチームの状態は、全体的なエンゲージメントスコアにも反映されています。メンバーはとても働きやすいと感じているようですね。

(ラフォーン)最初は、wevoxのアンケートも嫌がっていたんですよ。「仕事が忙しいのに、なんでこんなことしなきゃいけないだ」って。でも、メンバーたちの声を聞いた上で、エティティンさんが頑張ってチームと向き合った結果「この会社は自分たちを大事に考えてくれているんだ」ということが伝わったようです。今は、みんな嬉しがってアンケートに答えています。

― エティティンさんはマネジメントの仕方などはどのように学んでいったのでしょうか?

(エティティン)勉強をしたわけではないのですが、日本で働いていたときにしてもらって嬉しかったことをそのままメンバーにもしています。リーダーが自らサポートに入ったり、メンバーを褒めたり、といったことは日本で実際にしてもらったことです。

(ラフォーン)エティティンさんの国際経験が、マネジメントにも生かされていますね。エティティンさんの努力もあって、エンゲージメントが高まりメンバーも喜んでいます。ただ、会社全体を経営的な視点で見ている私としては新たな悩みも生まれてきています。

ミドルマネージャーを育成するのは難しい

― なんでしょうか?

(ラフォーン)会社の生産性拡大にはまだつなげられていないのでは、と感じているんです。1つの要因としては、メンバーが困ったとき、すぐにエティティンさんに頼ってしまう、ということが考えられます。現状は、エティティンさんがいないと、仕事が回らないということもあります。

― ミドルマネージャー層を育成する悩みは、日本でも最近よく聞きます。

(ラフォーン)はい、第2のエティティンさんを育てる難しさは感じていますね。メンバー間での協力をもっと生み出せるような工夫も必要になりそうです。

― エンゲージメントの高さを生産性に結びつけるために、さらなる施策が必要な段階にきているということでしょうか。

(ラフォーン)そうですね。みんな、会社のことは前よりも好きになったと言ってくれています。「自分の仕事が会社のためになるんだ」と実感してくれているようです。だからこそ、そうした思いを生産性や会社の利益に結びつけることも必要になってくるのかな、と感じています。

― 日本でもエンゲージメントという概念はまだ広がり始めたばかりで、生産性と結びつけるために悩んでいる経営者やマネージャーがいます。

(ラフォーン)そうなんですね。「社員の幸せと会社としての幸せが同じ方向を向いていないのでは?」と最近は考えています。エンゲージメントという指標をもっと有効的に活用して、どうすれば社員と会社の幸せを同じ方向に向けられるのか考えながら、これからも色々と挑戦していきたいと考えています。

― 遠く離れたミャンマーという地でも、同じような悩みを持ち、組織づくりに励んでいる人たちがいる、という事実は日本の人たちにも刺激になるはずです。本日は率直なお話をいただきありがとうございました。