INTERVIEWEE

株式会社セクションエイト 人事部 小山真奈美氏

前職はホテルのフロントにて勤務。2016年7月セクションエイト人事部に中途入社。

株式会社セクションエイト PR広報宣伝部 笠井彩花氏

2018年度新卒生として入社後、パブリックスタンドに配属。クリエイターとして活躍中。

人事の現場 #2

「他の会社の人事って、どういう仕事しているの…? 」そんな素朴な「知りたい」をお届けするため、DIO編集部がさまざまな企業の人事部に突撃インタビューする連載企画です!

新卒社員をいかに定着させるか。人事にとって重要なミッションであり、悩みのタネでもあります。「相席屋」や「パブリックスタンド」などを手がけるセクションエイトも新卒社員の定着に大きな課題を抱いていました。危機感を募らせた人事部の小山さんは、2018年度からあの手この手で新卒社員のフォロー施策を実行。昨年度は入社半年で24%の離職率だったところ、2018年度では6%の離職率に抑えることに成功しています。新卒社員に「この会社に入って良かったと感じてもらいたい」と奮闘する小山さんの取り組みと思いを聞きました。

離職率を大幅に低下させた4つの施策

ー 人手不足が叫ばれる中、特に飲食業界は厳しい環境に身を置いています。そんな中で、セクションエイトでも昨年まで新卒社員の離職率が課題でした。

(小山)はい。居酒屋業態には週末のピークタイム時の対応などどうしてもハードな側面があり、そこにギャップを感じて入社後すぐに辞めてしまう人が多い傾向にあります。人事としてうまくフォローできなかったことに後悔の念がありました。

ー さらに、異動で人事部のメンバーが変わり、昨年までの人材定着の厳しさを知っている人が小山さん1人になってしまった。

(小山)上司もいなくなってしまい、後輩も別部署に…。頼れる人がいなくなって、「自分でやるしかない」という状況でした。そこで、自分でさまざまな人材定着施策を調べたり、人材コンサルタント会社のアールナインさんと何度も打ち合わせをしながら2018年度新卒社員の受け入れ方法を考えていきました。

ー 結果的には、現在(取材は8月中旬)までで、昨年に比べて離職率が大幅に低下しています。昨年度は入社半年で24%の離職率だったところ、2018年度では6%。劇的な改善と言えますが、どのような施策を打ったのでしょうか?

(小山)大小いろいろな施策を行っていますが、大きくは4つ。「入社前の体験入店」「適性診断」「メンター制度の改善」「エンゲージメントスコアの計測」です。

ー では、4つの施策について詳しくお聞かせください。

施策1:「入社前の体験入店」でギャップをなくす

ー まずは、入社前の体験入店について教えてください。

(小山)入社前の体験入店は離職の大きな要因だった「入社後のギャップ」を減らすための取り組みとして、今年度からスタートしました。内定を出した学生に3日間、相席屋にて日勤と週末夜勤を体験してもらう試みです。

入社前の学生に、体験入店の趣旨と参加できない場合は内定を取り消す可能性がある、という連絡を入れました。

ー 全員参加したのでしょうか?

(小山)いえ、連絡を受けた段階で辞退を申し出た人が数名いました。さらに、体験入店後に「ギャップを感じた」という理由で何人か辞退しています。本来、会社が自ら内定者を減らすようなことをするのはありえないかもしれません。しかし、入社後にギャップを感じてすぐに退社するのは、我々にとっても退職する人にとっても不幸でしかない。

ー いったんは内定を出すけど、改めて「一番厳しい夜勤帯の店舗」を体験してもらって、ギャップをなくす。それでも入社をする人は離職する可能性が低いのでは、という狙いですね。

(小山)そうです。体験してもらうのは、水曜日、木曜日の日勤と金曜日の夜勤帯。内定者が1人ずつ、バラバラに店舗に入ります。金曜日の夜は最も混むので、内定者はほとんど放置状態です。そこで何かできるかどうか、は問題ではなくそうした雰囲気を知ってもらいたかったのです。

結果的には、入社後のギャップは減ったように感じます。それに、新卒社員の結束力も高まったようですね。

ー 結束力というのは?

(小山)同じ体験をした、ということで一体感が生まれました。それまでは、セクションエイトの店舗でアルバイトを経験した社員としていない社員でどうしても意識の違いがあった。「自分はアルバイトであの厳しい時間を体験してるけど、君はしてないじゃん」という意識が徐々にすれ違いを生んでしまうこともあったんです。

しかし今年は、3日間のピークタイムを乗り越えた「共通体験」があるので、入社直後のコミュニケーションもスムーズに行われたように感じています。笠井さん、どうですか?

(笠井)私は相席屋で働くのは初めてだったので、入社前にピークタイムの雰囲気を感じられたのは良かったです。心の準備もできましたし、小山さんが言うように、同期との会話の入り口にもなりコミュニケーションが取りやすかったですね。

施策2:適性診断の結果を参考に研修グループを決める

ー 続いて、今年度から入社後研修の際に「適性診断」を行ったそうですね。これはどういった狙いで行ったのでしょうか?

(小山)研修を行うグループ分けを適性診断の結果をもとに考えました。これまでは、研修時のグループはランダムだったので、組み合わせによってはディスコミュニケーションが発生することもあったんですね。

ー 先ほどアルバイト経験者と未経験者との間で溝が起きやすい、という話もありました。

(小山)はい、そうしたバックグラウンドからくるコミュニケーション不全もありましたし、単純にパーソナリティが合わない例もありました。それが原因で、会社に馴染めず退社することもあったんです。

ー せっかく入社したのに、研修時のグループ分け1つで人間関係がうまく構築できず、退社を選択するのは残念ですよね。

(小山)新卒社員はただでさえ不安を抱えやすく、些細なことでもメンタルに大きな影響を受けやすい。だから、研修時のグループ分けもしっかりと相性などを考慮した上で決めようと、適性診断を行いました。新卒社員にも「適性診断の結果をもとに研修グループを決める」ということは事前に伝えています。ムードメーカータイプを散らすなど、コミュニケーションが活性化されるように心掛けました。

施策3:メンター担当者を若手からベテランに変更

ー メンター制度は、昨年までも取り入れていたものを少しやり方を変えたそうですね。

(小山)昨年までは年齢の近い入社2~3年目の社員がメンターを担当していたのですが、うまく機能していなかったんです。そもそも、メンターというものが何を求められているのか、我々も社員に対してちゃんと伝えられていなかった。そこで、今年からメンターを経験豊富なマネージャー層に担当してもらうようにしました。

ー メンターはどのような割り振っているのでしょうか?

(小山)研修時に各グループにメンターを1人付けて、研修期間中にいろいろとアドバイスをしてもらいました。経験豊富なメンバーばかりなので、仕事に対するアドバイスも的確に行えますし、初めての社会人生活に対する不安なども相談できます。

研修が終わり、配属された後もメンターが店舗に来てコミュニケーションを取ったりしています。工夫した点としては、直属の上司をメンターにしないということです。例えば、相席屋に配属された社員には、相席屋以外の業態や本社勤務の上長がメンターに付いています。

ー なるほど、斜めの関係を作ったんですね。

(小山)一度、店舗に配属されるとその業態に関する部署だけの関係性になりがちです。他の部署や本社との繋がりがどうしても薄れてしまう。だから、配属前に斜めの関係を作っておくことで、相談先の窓口を増やしたかった狙いがあります。

(笠井)これは、すごく心強いですね。直属の上長以外に相談できる相手が同じ会社にいるのは、安心感に繋がります。

(小山)今年はさらに、1年を通してベストメンターを決めようと考えているんです。これによって、新卒社員がメンターに何を求めているのか、どういう行動が適切なのかを我々も知ることができます。

施策4:エンゲージメントスコアの計測で効率的に面談を実施

(小山)エンゲージメントスコアの計測も今年から始めた取り組みです。ツールは「wevox」を使っていて、2週間に1度測定しています。今は新卒社員だけにアンケートは実施しています。

これまでも悩みを抱えている社員がいないか、店舗を回ってヒヤリングをしていたのですが、相席屋だけで全国に約60店舗あるので、ピンポイントで悩みを抱えている社員と会話をするのが難しかった。

久しぶりに会話したと思ったら「退職しようと思います」…なんてこともありました。

ー エンゲージメントスコアという指標があれば、数値が下がった人から優先して会いに行く、という判断ができます。

(小山)効率は断然上がりましたね。それに「数値が下がっている理由を聞く」という目的意識を持って社員と向き合えるので、より精度の高い面談ができます。

新卒社員はまだ精神的に安定していない人が多く、数値が変動しやすい。数値が下がったタイミングですぐに店舗に行って少し話を聞くだけで、次の計測時にはスコアが上がったりするんです。入社1年目は良くも悪くも周りからの影響を受けやすい、本当に繊細な時期なんだと改めて実感しました。

新卒社員が初めて交わした「異例の契約」とは?

ー 新卒社員の笠井さんはセクションエイトに入社して4カ月です。心境はどうですか?

(笠井)小山さんが話してくれたように、いろいろとフォローをしてくれて、ありがたいなと思っています。同期の連帯感も強くて、バラバラの場所で働いていますが、LINEグループを作ってみんなで連絡を取り合ったりしています。エンゲージメントスコアの計測も、これが当たり前なんだ、と思っていたんですが、今年から始まったんですね。

(小山)そうですよ!これまでは、日報という形で毎日フリー記入してもらっていたんです。人事としてはその日報が貴重な情報源だったんですけど、やはり社員の負担が大きいようでうまく機能しなくなっていました。

ー 笠井さんの代から日報を書かなくてよくなったそうですよ。

(笠井)知らなかったです(笑)。

(小山)それから、笠井さんは新卒で初めての副業OKの限定社員で雇用契約を結んでいるんですよ。

ー へえ! そんなんですね。それはどういう経緯で?

(笠井)実は私、学生時代から漫画家としての仕事をしていたんですね。それで、セクションエイトの内定が決まったとき、就職して漫画家の道は諦めようかと悩んでいたんです。そんなときにセクションエイトでは副業OK、勤務時間も融通が効く限定社員制度がある、ということを知ったんです。

(小山)ある日急に、入社前の笠井さんから電話がかかってきたんですよ。「ああ、内定辞退か…」と思って話をしていたら「漫画家としての仕事もしたいので、限定社員で雇用していただけますか?」と聞かれたんです。「トップにすぐ確認します!」と電話を切って(笑)、創業者で今は会長の横山淳司にすぐ話をしにいきました。

ー 横山さんはなんとおっしゃったんですか?

(小山)「いいんじゃん」と、即決です(笑)。元々は新卒向けには考えていたかった制度なのですが、笠井さんで初めて新卒の限定社員が誕生しました。

(笠井)そんなことがあったんですね(笑)。

ー 異例の契約だったわけですね。

(小山)はい。でも、よく考えれば飲食店で働く人って他に何か夢を持って追い続けている人が多いんですよね。セクションエイトとしては、今後新卒だろうが、ベテランだろうが夢を追う人を応援していけるような会社になるといいな、と思ったんです。だから、今後は新卒にも適用して、もっと多様な人に来てほしいですね。

ー 笠井さんは今はセクションエイトで働きながら、漫画も描いているということですか?

(笠井)はい。基本的には仕事が終わった後に執筆活動をしていますが、休憩中にタブレットでちょっと描き進めることもあります(笑)。

(小山)笠井さんは広報部として店舗のPR業務を担当しているのですが、イラストを使って販促物を作ったりと副業が活かされることもあります。

(笠井)この会社での経験を漫画のストーリーの参考にすることもあります。

ー へえ!まさに、win-winの関係ですね。同期の面々はどう思っているんでしょうか?

(笠井)ありがたいことに、同期もこうした働き方を認めてくれて、応援してくれています。

「セクションエイトで働いて良かった」と胸を張れるように

ー 関係性の良さがうかがえるエピソードですね。

(笠井)その裏には小山さんの努力もあったんだな、と今日話を聞いて知りました。

(小山)本当に? ありがとう(笑)。

ー 2018年度新卒社員の一体感を見る限り、今年から始めた施策がどれもうまく機能しているのではないでしょうか?

(小山)そうだと嬉しいですね。最近では、エンゲージメントスコアの数値をもとに、メンターに面談に行ってもらったり、個々の施策が連動し始めています。今年1年の取り組みを活かして、来年以降のフォローに繋げていきたいです。

ー 本日の取材を通して、小山さんから人事の仕事に対する並々ならぬ熱意が伝わってきました。

(小山)せっかく入社した会社なので「セクションエイトで働いて良かった」と思ってもらいたい一心で、日々の仕事に打ち込んでいます。今日は新卒社員の話でしたが、すべての社員に対してそう思っています。

その結果、退職を選択するのであれば、それはそれで構わない。嫌な思いをして辞めていく人を見るのが、人事としては一番辛いですから。これからも「セクションエイトで働いて良かった」と社員が胸を張って思えるよう頑張っていきたいです。

ー 新卒社員の定着は多くの企業が悩むところ。小山さんの真摯な取り組みは多くの人事にとって参考になると思います。本日は貴重なお話をありがとうございました!