人事の現場 #︎1
「他の会社の人事って、どういう仕事しているの…? 」そんな素朴な「知りたい」をお届けするため、DIO編集部がさまざまな企業の人事部に突撃インタビューする連載企画です!
「何個も社内ルールを作ったり、請求書をせっついたり。頑張ってはいるんだけど、社内からは疎まれがち…」
人事、総務、経理などの管理部門に所属している人は、一度はこんな思いを抱いたことはありませんか? WEBコンサルタントを手がける株式会社プリンシプルの「People Group」は、そんなネガティブな管理部門に対するイメージを覆す、新たな管理部門のスタイルを構築しています。その活動内容や大切にしているポリシーなどをチームメンバーに伺いました。
サファリパークにいるような気分になる会社
― 本日は「People Group」の活動についてお伺いしたいと思います!まず、このグループはどういうグループなのでしょうか?
(下司)あまり聞きなれない名称かもしれませんが、いわゆる管理部門に相当するグループで、人事、総務、経理などの業務を総合的に行っています。管理部門と言うと、どうしても「ルールを作って、ひたすら管理、管理、管理」ってイメージですよね。でも本来であれば、社内の人間と良い関係を築き、良い働き方をしてもらうための部署のはずです。
(有馬)そうした考え方を忘れないように、「People Group」という名称で表現しました。
― 従来の管理部門という言葉が持つイメージから、よりアクティブなイメージを表現しているのですね。
(下司)はい。プリンシプルの企業文化として「主体性」をすごく大切にしているので、管理部門にもそうした文化を反映させています。
(有馬)プリンシプルは他にも「ボーダレス」という文化をすごく大事にしていて、その象徴として、日本を含めて7カ国の人が働く多国籍企業でもあるんです。だから、「ボーダレスな組織」の実現も私たちが目指すことでもあります。
(下司)社長もシリコンバレーにいることが多くて、リモート経営するレベルまできてしまっています。
― リモート経営! それは、すごくボーダレスですね。
(有馬)モニター付きのロボットが社内にあって、会議をするときはそのロボットを通して参加するんですよ。ちなみに、ロボットにはTシャツを着せてます(笑)。
(下司)多国籍なので、会議では中国語が飛び交っていたりして本当にボーダレス。感覚としてはサファリパークにいるような気分ですね。

― そんな中で、People Groupの皆さんはどのような活動をされているのでしょうか?
(有馬)毎日行っているのが朝会の運営サポートです。毎朝15分、ランダムでチームに分かれ、テーマに沿ってメンバー全員が1分間のスピーチを行うというものです。テーマは曜日ごとに分かれていて、月、水、金曜日が「企業理念」について。火曜日が「人を褒める」、木曜日が「会社を改善するアイデア」です。それぞれのテーマで、自分の考えや思いを1分間、タイマーで計って発表しています。
(下司)何に関心を持っているか、何に取り組み、結果はどうだったか、といった話を部署を入り乱れて行うんですね。社内のコミュニケーションを活性化する目的で、創業以来続けています。細かいやり方やテーマは都度我々が考えたり、社員からの意見を拾ったりしながら調整しています。
(有馬)朝会はずっと続けていますが、今でも社員からはいろんなフィードバックが出てきます。皆さん、主体性がある人たちばかりなので。社員は60人ほどですが、中には主体性が高過ぎて、社内設備を自分でカスタマイズしてしまう人とかもいて…。
― え、どのようにカスタマイズしているのですか?
(有馬)先ほどお話ししたように、社内ではいろんな言語が飛び交っていまして、気付いたら朝会用に同時通訳のシステムが開発されて、設置されていたことがあったんです。多分、誰かには声を掛けていたとは思いますが、驚きました。
(阿久原)我々が使う社内の管理システムも他のメンバーが作ってくれることがありました。「請求書が期限内に揃わない」って相談をしていたら、請求書の発行をリマインドするシステムをエンジニアの方がサッと作ってくれたんです。こちらがシステム上で「処理済み」としないと、ずっとリマインドが送られるシステムです。これは今でもかなり有効活用されていて、すごく助かっていますね。

― そのような主体性の高さはどのように生まれているのでしょうか?
(有馬)1つは「褒める文化」があるからだと思います。Slackに「Thank you Good Job」というチャンネルを作っていて、そこに良い行動をした人を褒めるメッセージを投稿しています。「同時通訳ツールをつくってくれてありがとう」とか。
(阿久原)私も、リマインドシステムを作ってくれた社員に対しては「ありがとう」と投稿しました。
(下司)あとプリンシプルでは「7つの習慣」(キングベアー出版)が課題図書になっていて、そこに書かれている相互依存という考え方を大切にしてもらっています。これは「自立した人間同士が、相互に依存し合う状態が組織として最も高い成果を出す」という考え方です。それから、主体性のあるプリンシプルの文化に合わない方は採用の時点でお断りしているのも大きいと思います。
(有馬)結構、能力の高い方からの応募もあるので「もったいない…」と思うこともあるのですが。何よりも文化に合うかどうか、を最重要項目の一つとしています。
(下司)ですので、面談の際に、文化に合うかどうかは何度も質問を繰り返して判断しています。そうして、選ばれて入社した後に、先ほどお話しした朝会で企業理念や行動指針について会話をする。このように、文化づくりはかなり徹底して、戦略的に行っています。

オフィス環境の整備にも日々奮闘
― なるほど。文化づくりは採用からすでに始まっている、ということですね。阿久原さんは最近入社されたということですが、People Groupで働いてみてどうですか?
(阿久原)以前の会社と全然雰囲気が違うので、最初はとても戸惑いました。上下関係もなくてフラットですし、帰る時間も自主性に任されています。以前働いていた会社は、始業の1時間30分前に集まって一斉にスタートして、終業も同じタイミング。業種や業務内容的にそうせざるを得ない部分もあったのですが、ここまで個々人の自主性に任されているのは驚きでした。
(下司)部長、課長という役職はありますが、だからと言って偉いというわけではありませんから。あくまで、「人と人」として接している。創業当初からある価値観です。
(有馬)社長も「さん」付けですしね。

― そこにもボーダレスな文化が反映されているんですね。最近、社内にアロマを導入したと伺ったのですが、それもPeople Groupが導入したのですか?
(有馬)そうです。wevoxのアンケートで疲労感が強いと書かれていたので、オフィスに取り入れてみました。結構好評で、もう1個入れてほしいという声も出ています。オフィス環境についても、我々People Groupがいろいろとトライをしていて、最近の課題はオフィスに流す音楽ですね。
(阿久原)スマートスピーカーの「Amazon Echo Spot」を設置して音楽を流しているんですけど、うまく作動しないときがあるんですよね。
(有馬)wi-fiが不安定になって、止まっちゃうんですよ。毎回「Alexa」って呼びに行かなきゃいけない(笑)。あと、どういう音楽がいいかも迷いますよね。基本的には近くにいる人が自分で好きな音楽を流しているんですけど、人によってはノリノリな音楽が好きだったり、そもそも音楽流してほしくない、っていう人もいたりするので。
(下司)特にオフィス環境は最大公約数を取って判断するのは難しいところはあると思うのですが、我々の判断基準としては「大きなクレームがなければOK」としています。

― 最適なオフィス環境づくりは永遠の課題とも言えますものね。
(有馬)とにかくトライしてみる、っていうことを大事にしています。何がいいかはやってみないと分からない。やってみて、みんなの意見を聞いて、改善するか、やめるか判断する。「PDCA」だと遅いので「DO、SEE、DO、SEE」のサイクルで早くまわしています。
うまくいかなかったこととしては、卓球台はイマイチでしたね。
(下司)卓球台のスペースの真下の企業様に足音が響いてしまいまして…。
(有馬)みんな負けず嫌いが多いので、真剣に卓球をしてしまった結果…外部的要因ですが失敗でした…。

― オフィス環境や様々な社内向けの施策に対する意見はどのようにキャッチアップしていますか?
(有馬)朝会はそういった意味でも活用されています。あとは、月に1回マネージャーとの1on1、3カ月に1回社長との1on1を行っています。それからさらに、半年に1回日帰り合宿、1年に1回宿泊で合宿、月に1回ランチ会もやっていますね。さらに、平日18時以降は、カフェスペースが、アルコールOKのプリンシプル Barになっています。
― かなり、コミュニケーションの機会が多いんですね。
(下司)はい、コミュニケーション量はかなり多いと思います。そうした場で、我々も社員から意見を拾っています。朝会、ランチ会と朝、昼という時間帯でのコミュニケーションが多いのは特徴ではないでしょうか。
(有馬)私は子育てもしているので、朝や昼に他の社員と密なコミュニケーションが取れるのはありがたいですね。飲み会だけが仕事以外のコミュニケーションの場になってしまうと参加できないことが多いですから。様々なアイデアがこれらのコミュニケーションから生まれ、実現されてきています。
(下司)その効果もあってか、プリンシプルにはコンサルタントやエンジニアなど様々な職種の部署がありますが、妙な部署間対立がないんですよ。私は他の企業の人事コンサルタントを経験したこともあるのですが、部署間で摩擦が起きて、すごく無駄な時間を使っている企業を多く見てきました。プリンシプルは日頃から部署間を超えてコミュニケーションを取っているので、考えが違ったとしても、なぜそういう考えに至ったのかという背景を理解している。だから、相手の意見を汲み取った上で、建設的なコミュニケーションができているように感じます。
(有馬)部署間のつながりの強さで象徴的なのが、「プリンシプラー to プリンシプラー」という自分の趣味や特技をプレゼンし合うイベントです。月に2回、金曜日に30分の時間を取っているのですが、その時間になると、特に呼びかけなくてもみんな自然と集まってくるんですよね。発表者のパーソナリティを違った角度で知ることもできますし、発表者からすればプレゼンの練習にもなるので、みんな積極的に参加しています。

― どういうプレゼンがされているんですか?
(下司)私は以前、織田信長について発表しました。信長って破壊者みたいなイメージがありますけど、実は違って…。信長は、実は将軍にこまめに連絡を取るような性格であったとか、印象以上に人に対して気を使う性格でもあった、なんていう話をしました。
(阿久原)マインドフルネスの話をしてくださったかたもいて、すごく面白かったですね。あとマイレージの上手なため方や裏技とか。
― すごく幅広いですね(笑)。
(有馬)それから、勉強好きな人が多いので、シリコンバレーのマーケターが現地からライブで情報を教えてくれる「Lunch & Learn」を月に1回やっています。「R8アカデミー」という勉強会も定期的に開催していて、これは外部からゲストスピーカーを招くこともあるんですよ。

人事ポリシーで社員との適切な関係性を築く
―コミュニケーション施策も多いですし、勉強会などの成長支援施策も数多くやられていますね。これだけの数の施策を行う上で、大切にしているポイントはありますか?
(有馬)一番大切にしているのは「継続性」です。「Lunch & Learn」は3年、「R8アカデミー」は4年続いています。社長とも、絶対に途中で止めないようにしようとは言っていました。続けていれば、人を巻き込みやすくなりますから。続けるためにはいいコンテンツであることも大事ですし、People Groupがあまり前に出過ぎないようにすることも心掛けています。
(下司)我々が前に出過ぎると強制感が出てしまいますから。我々はあくまで活動の大枠を作るだけで、あとは部署にどういう内容にするか、誰をゲストで呼ぶかといったことは任せるようにしています。
― 管理部門、特に人事は他の社員との距離感の取り方に悩む人も多くいます。People Groupではどのように適切な距離感を取っているのでしょうか?
(下司)我々は人事ポリシーというのを作っていて、それを他の社員との関係づくりの判断基準にしています。何か新しい施策をやるときや社員から意見が上がってきて判断しなければいけないときは、このポリシーに立ち返るようにしています。
(阿久原)こうしたフレームワークがあると判断がしやすいですね。ブレない判断ができている、という自信にもつながっています。

― なるほど。確かに、これまでお伺いしたことも、全てこのポリシーに準じていますね。すごく戦略的かつアクティブに仕事をされている印象ですが、苦労していることとかはないのでしょうか?
(下司)主体性の高いメンバーが揃っていますし、我々も自由にやってもらうようにしているので、その反面、事務処理に必要な書類が遅れるといったことは起きやすいです。自由にやってもらう一方で、そうした会社経営に必要な業務を取りこぼさせない、という管理部門としての大事な機能も当然忘れてはいけません。
(阿久原)書類が遅れていたら、こっちで仮に書類を作っておいて「間違っていたら訂正してください」と先にわたすような工夫もしていますね。その方がお互いにやりとりが早いですから。でも、あまりそれが常態化してしまってはいけないので、繰り返さないように同時に注意もしています。
― なるほど。来ない書類をただ待つだけじゃなくて、メンバーに対して積極的にアプローチをしているんですね。
(有馬)他に努力している点は、個々のパーソナリティをできるだけ深く把握することです。私は入社直後のオリエンテーションを担当しているのですが、その場でできる限り、プライベートも含めていろいろ質問をして人となりを把握しようとしています。そうした地道な努力は惜しまないようにしていますね。
(下司)冒頭に言いましたが、本当に個々人が主体性を持って働いているサファリパークみたいな会社ですから。それぞれの個性を活かせるように、我々がサポートしなきゃいけないな、とは常々思っています。そうして、「ボーダレスな組織」を作っていけるように、これからもPeople Groupのメンバーみんなで頑張っていきたいです。
― People Groupの取り組みやスタンスは、管理部門で働く多くの人の刺激になるはずです。本日は貴重なお話をありがとうございました!
