INTERVIEWEE

株式会社プレコフーズ 代表取締役社長 髙波幸夫氏

1958年東京都出身。米国ブルックスカレッジ卒。1983年(有)鳥利商店入社、1994年に(株)プレコフーズに組織変更、代表取締役就任。『食の楽しみと笑顔の創造企業』をスローガンに、次々と事業を拡大。
現在は、(株)プレコフーズを旗艦企業として、食肉・冷凍加工食品部門の(株)プレコエムユニット、水産部門の(株)プレコエフユニット、青果部門の(株)プレコヴィユニット、サニタリー部門の(株)プレコサニオ、飲食店BS事業部門の(株)プレコダイニングラボとプレコグループを形成。2015年、外食産業記者会主催「外食アワード2014」を受賞。「カンブリア宮殿」を初め取材多数。

生鮮三品の総合食品卸として年商182億円を誇る株式会社プレコフーズ。食肉を中心として、鮮魚、野菜の生鮮三品と冷食加工食品を「注文1,000円から」、「午前1時までのご注文で即日納品」する食品卸を中核に、サニタリー事業など飲食店経営をサポートする事業を手がけています。顧客数は首都圏2万軒超。顧客の9割以上は個人店で、国内最高クラスの衛生管理システムを備え、小口注文やミリ単位でのカット加工など細やかな要望にも徹底的に応える姿勢で顧客の信頼を獲得し着実に顧客を増やし続けています。

代表取締役社長の髙波幸夫さんは、創業当時から社員とのコミュニケーションを重視。経営理念の一つに「社員の笑顔を創造する」と掲げ、様々な人事施策を実施してきました。しかし、会社の規模が年々大きくなり、社員の声を聞く機会が減っていることに危機感も抱いていたそうです。

ある日、エンゲージメントスコアを計測する「wevox」の存在を知った髙波さんはさっそくトライアルを実施。その結果は決して満足のいくものではありませんでした。

なぜ満足いかなかったのか、そしてこれからどう改善していくのか?これまでの人事施策を振り返りながら「社員の笑顔を創造する」ための組織づくりへの決意を語っていただきました。

エンゲージメントスコアに感じたギャップ

本日の取材は、wevoxのトライアル結果を見て、改めて髙波さんご自身の言葉で「組織づくり」への思いを語りたい、と打診いただいたことから実現しました。そもそも、wevoxのトライアルを実施しようと思ったのはなぜでしょうか?

あるメルマガでwevoxを知ったのがきっかけです。1,000人規模の会社になって、社員の声を十分に聞けていないことに危機感もありました。そこで、エンゲージメントスコアを計測して、社員の状態を把握できるwevoxを試しに使ってみることにしました。

従業員数が1,000人近い規模の企業の社長が自らトライアルを検討するのは非常に珍しいことです。実際にトライアルの結果を見ていかがでしたか?

支援行動や人間関係といった項目は比較的高スコアでした。これは、各セクションの管理者がしっかりと状況を把握し、気配りをしてくれている証拠です。しかし、健康面やワークライフバランス、待遇面に関するスコアは、より一層の改善の必要性を感じました。

ご自身のイメージとギャップはありましたか?

少なからずありましたね。というのも、待遇面に関してはこの2年間でかなり改善してきたと私の中では思っていたからです。

具体的に、どのように改善してきたのでしょうか?

まず、2年前に一般社員の給料を3万円ベースアップしました。当時は600人ぐらいの社員数なので、年間2億円の人件費増の決断をしています。

それから役職者の所得も上げました。例えば、係長はいくら以上、部長はいくら以上と、今までの給与水準よりも高い水準ラインを設置しました。

かなり、大きな決断ですね。

はい、人件費なので一度上げたら下げられませんし、毎年の固定費として必要になってきます。経営者としては大きな決断でしたが、会社の成長と共に社員の生活の質の向上を目指そうと考えた上で決めました。

その他には?

子育て支援策にも注力して、子供1人あたり1万円の手当をつける制度を作りました。人数制限は設けていません。子育て支援策を知って、子どもの未来も考えてくれる会社だとプレコフーズに入ってくれる社員も出てきました。

健康、ワークライフバランスに関する施策は行ったのでしょうか?

はい、昨年度に全社員の休日出勤を1カ月に2日間減らす社命を出しました。

お客様はできるだけ毎日生鮮食品を持ってきてほしいでしょうけれど、社員には休みが必要ですから、これまでも日曜日・祝日は休みというのは貫いてきました。

この改革により、現場職、営業職の社員の休日出勤は原則2日以内とし、事務職の社員は原則休日出勤禁止。さらに、休日出勤手当分の給与を補填したうえで、不足する労働時間分を補充するために新たに約2億円の人件費増となりましたが、10%の増員を行いました。

一方でプレコフーズは発注を受けてから迅速に発送する対応力が個人飲食店の好評を得て、売り上げを伸ばしていますね。

ここが難しいところで、顧客対応のクオリティを落とさず、休日を増やさなければいけません。ですから、新たに増員した社員への教育にも一層力を注ぐよう指示を出し、現場の上長たちもそれによく従ってくれました。

人件費に関わる改善をこの2年でかなり行っていますね。

給与と所得アップ、子育て支援策、休日の増加、これら4つの施策のためにこの2年間で4億円以上人件費がアップしています。でも、これらの施策のおかげで必要人員を順調に採用できるようになりました。昨年新たに2つの大きな物流センターを作って人を増やさなければいけない時期だったので、大変助かりました。

ただ、採用には効果がありましたが、社員のエンゲージメントスコアは思ったよりも低かったですね。

”大きな木”をみんなで育てよう

なかなか受け止めがたい現実だとは思います。

そうですね。でも、受け止めなければいけない現実です。これが、社員の正直な声なんでしょう。待遇改善や実質的な休日増加を行っているのだけれど、社員の希望はもっと高いところにある。それを、wevoxの結果から感じました。

特に待遇面への希望は、望めば望むほどきりがないものですが、エンゲージメントを高めるためにより多くの希望に応えていかなければいけないと思います。

これから先の改善策としては何を考えているのでしょうか?

インターネットで営業支援を行えるシステムの構築を行いました。これは業務効率化のための施策で、大きな資金を投入しています。きっと、健康面やワークライフバランスにも大きく寄与してくれるでしょう。

それから、wevoxの実践的な導入も進めていきます。トライアルでの結果を改善していくには、定期的にスコアを測って、社員の声を集める必要がありますから。

業務効率の仕組みづくりとエンゲージメントスコアの向上がこれからの組織づくりの柱になっていくわけですね。

そうです。ただ、社員にも理解してほしいと思っているのは、待遇面の改善を行ったり、人事施策を行ったりするには、どうしても利益が必要だということです。

これは、私がよくする話なのですが、会社というのは1本の大きな木なんですね。木を大きくした結果、果実がたくさん実る。この果実が利益です。実りが多くならないと、社員の待遇改善もままならない、ということです。

『みんなで木を大きくして、実りを増やし、その果実をみんなで分けあって、今年よりも来年、来年よりも再来年と、より豊かな生活にしていこう』

こうした精神を社員全員に持ってほしいと思っています。

経営理念の1つに「社員の笑顔を創造する」というものがありますね。

24年前、両親のお店を引き継いで、プレコフーズを創業した時に掲げたものです。もともと私は社員とのコミュニケーションを大切にして経営を行ってきたという自負があります。社員の誕生日に自腹で5,000円プレゼントしたりしてたんですよ。すべての社員の誕生日に「いつもありがとう」と言って手渡ししていました。

それは、素直に嬉しいですよね。

今は、形を変えて福利厚生施設のベネフィットを利用できる制度として残しています。でも残念ながら、使わない社員もいるので、また誕生日祝いに戻そうかなとも考えています(笑)。

あとは、社員の奥様あるいは旦那様の誕生日にメッセージを添えてフラワーボックスを届けています。これは8年ほど前から始めています。ダンディな黒いケースに入って届くんですよ。喜んでくれる人が多いようです。

待遇面の改善だけでなく、社員とのコミュニケーションを積極的に図ろうとしているんですね。

そうですね。そもそもプレコフーズは家族経営の小さな商店から始まっています。社員が少ないときは全員とコミュニケーションが取りやすく、誰がどんな気持ちで働いていて、どれくらいの技術を持っていて、何にやりがいを感じているか、把握できていました。

それが事業拠点が複数になると、徐々に分からなくなってきた。ピラミッド型の組織にして管理しなければならないと思い、組織体系を変えていきました。それでも一人ひとりの社員の気持ちは知りたいじゃないですか。だから、社員一人ひとりと3ヶ月ぐらいかけて食事に行っていた時期もありました。

自分の声で伝えるのが、一番熱量がある

この24年間で1,000人近い規模にまで成長しました。

今でも一人ひとりの気持ちを知りたいという思いはありつつも、すべてを把握するのは現実的ではありません。だから今後はwevoxを活用して社員の声を真摯に聞いていきたいと思っています。

トライアルを行って、多くのコメントを社員からもらいました。辛辣なコメントもありましたし、一方で建設的に組織改善について提案をしてくれるコメントもありました。それら、100%全てに、とは簡単には言えませんが、重要度の高いものから順次対応していきたいと思っています。

それから、誤解をもとにしたコメントもあって経営側の意図が正確に伝わっていないこともある、という気づきもありました。

人事施策の良し悪し以前に、そもそも人事施策の意図が伝わっていない、ということもあるのでしょうか。

あると思います。そこは、経営側がもっと分かりやすく情報発信をする必要があるでしょう。どういう経緯があって、どういう人事施策を行っているのか。人事総務部と協力しながら、きちんと自分の声で発信していく必要があると感じています。

ご自身の声で。

この会社の歴史を一番知っているのは私ですから。別の誰かに語ってもらうよりも、自分で話したほうが伝わる熱量も違うはずです。だから、自分で話すべきだと考えています。

今年入社した社員にとっては、これまで話した施策は当たり前なんですよね。当たり前だと思っている状態で、さらに高い要望をしたくなるかもしれない。そうなったとき、まずは会社の歴史、経緯を知ってもらうことは大事だと思います。その上で、さらに要望があれば真摯に受け止め、対応を考えるつもりです。

髙波さんの組織づくりに対する並々ならぬ思いを感じます。今でこそ、働き方改革の流れもあり、社員を大切にする経営は注目を浴びていますが、24年前はこうした風潮はなかったはずです。社員を大切にしたいという思いの原点はどこにあるのでしょうか?

多くの人にとって、同じ会社の社員って、家族よりも多くの会話を交わす存在なんですよ。朝、家を出る時はたいがいバタバタしてるので、家族とゆっくり会話はできませんよね。夜、家に帰っても食事をしてお風呂に入って…。もちろん会話はするのでしょうけど、それほど多くの時間は取らないでしょう。2時間も話さないのではないでしょうか。

それに比べて、会社にはもっと長い時間います。

それほど、多くの時間を共有する存在なんです、同じ会社の人間というのは。だったら、私と働いていて楽しかったと思えるほうが絶対にその人の人生は幸せじゃないですか。髙波といてよかったと思ってもらえないような経営は、私はノー。「社員の笑顔を創造する」という理念は、この気持ちからきているかな…。

― 24年前から社員のエンゲージメントを追い続けているとも言えます。

これからも、エンゲージメントスコアを参考にしつつ、今よりもっと「社員の笑顔を創造する」会社にしていきます。それと同時に、みんなで大きな木を育てていく。どちらか一方だけでもダメなので、バランスを取りながら、少しずつ改善していきたいです。