飲食店経営にとって重要な人材であるアルバイト。カスタムサラダ専門店の「クリスプ・サラダワークス」を運営する株式会社クリスプでは、アルバイトに対して様々な手厚いサポートを行っています。その成果もあり、サラダはもちろん質の高い接客も評判を呼び、2014年のオープン以来順調に店舗を拡大。都内に7店舗を構えるまで成長しました。そんなクリスプのアルバイトに対する取り組みについて、代表の宮野浩史さんに話を伺いました。

経営側がアルバイトに”期待”しないでどうする?

「クリスプ・サラダワークス」は順調に店舗を拡大して成長していますね。

はい、おかげさまで2018年7月には青山店をオープンして、7店舗目となりました。今後も店舗を増やしていく予定です。

― クリスプではその成長を支えるアルバイトに対して、かなり手厚いサポートをしていると伺いました。

クリスプではアルバイトのことを”パートナー”と呼び、様々なサポートを行っています。店舗で一番お客様と接するのはパートナーのみなさんです。彼・彼女らが楽しんで働けていないのでは、お客様にいい接客もできないですよね。だから、クリスプ・サラダワークスを立ち上げたときから、いろいろとパートナーに対する取り組みは行っています。

― 宮野さんがアルバイトに対して強い思いを持ったきっかけは何でしょうか?

以前、全国チェーンの飲食店で働いていたときの体験がもとになっています。その飲食店では多くの学生アルバイトが働いていたのですが、なかなか仕事を覚えない子がいたんですね。でも話を聞くと名門大学に通ってる子だと分かった。「なんで、地頭はいいはずなのに、仕事覚えないんだろう?」という疑問がずっとありました。考えた結果、シンプルに「この職場が楽しくないんだな」っていう結論に至ったんです。

― せっかく能力はあるのに、それを活かせていなかったんですね。

経営側も「まあ、アルバイトはこんなもんだろう」っていうスタンスだったんです。要するに期待してないんですよね、アルバイトに。だから、アルバイトも手を抜いてしまう。そういうお店にはしたくないという思いが強くて、クリスプ・サラダワークスはアルバイトが楽しく働ける場所にしたかったんです。

― なるほど。楽しく働ける場所にするために、どのような取り組みをしているのでしょうか?

「ファンミーティング」というものを2カ月に1回開催しています。これは、各店舗ごとに開催していて、アルバイト、社員を含めたスタッフが全員集まってミーティングを行うものです。原則全員集まるので、その時間だけ店舗を閉めるか、他の店舗のスタッフに入ってもらうなどして開催しています。

 ― 何をするのでしょうか?

クリスプに関連するクイズやチームビルディングのゲームをしています。ラフな感じで、ピザを食べながら実施するときもあるんですよ。スタッフ間でコミュニケーションを取ったり、会社に対するエンゲージメントを高めることを目的としています。

― 何人ぐらい参加するのでしょう?

店舗ごとなので20~30人ぐらいですね。学生であればテスト期間中で来られないこともありますが、毎回ほぼ全員参加しています。他には「サマーフェスティバル」と言って、毎年夏に全店舗のスタッフが集まってバーベキューをするイベントを行っています。

― 全員ですか?

全員参加です。今年は店舗が増えたので2回に分けて行う予定です。費用は全て会社が負担。そこでも、店舗対抗のクイズ大会をやったりしてるんです。「店長の口癖は?」みたいなお題で、チームビルディングに関わるクイズを出すんです。優勝した店舗には高級和牛をプレゼントするなどして、毎年盛り上がりますよ。

あとは、クリスマスにアルバイト全員にグッズをプレゼントしています。去年はオリジナルのネックストラップをプレゼントしました。どれも創業当初から行っているものです。

ハッピーを作る役職「PH=パートナーハピネス」の存在

― これらの施策は、どのように思い付いているのでしょうか?

「PH」という役割のスタッフが頑張ってくれています。PHとは「パートナーハピネス」の略で、文字通りパートナーをハッピーにするのが役割です。

施策を考える上で「楽しんでもらうには何をすればいいだろう」という視点は大切にしていますね。イベントにかけた経費の分、お金を渡せばいいじゃんっていうものではないんですよ。アルバイトのみなさんの心に響く施策じゃないと意味がない。

例えば、仕事が忙しかった日の帰り際に店長から「おつかれさま」ってメモが貼られた”ブラックサンダー”を渡されるだけでも嬉しかったりするじゃないですか。原点にあるのはそうした心に響くコミュニケーション。それを会社としての仕組みで行っているのが、ファンミーティングであったりクリスマスプレゼントなんです。

― 「パートナーハピネス」はいいネーミングですね。

サイボウズさんの感動課(社員を感動させることだけを目標にした課)の存在を知って感銘を受けて、参考にしました。今は1人の男性社員が店舗スタッフとの兼任で担当しています。イベントの実行だけでなく各店舗の社員の意見を集約して施策の調整を行ったりしています。

― 店舗スタッフとの兼任には何か意図があるのですか?

PH専属にしてしまうと店舗で働いている社員と少し距離ができてしまうので、お店でも働いてもらっています。「アルバイトとのコミュニケーションはPHが考えてくれるんでしょ」という他人まかせの風潮ができてしまってはいけませんから。「あくまで社員とアルバイトのコミュニケーションをサポートする役割なんですよ」というスタンスを示すためにも兼任にしています。ただ、今後人数が増えてきた場合は専属にするかもしれません。

― 店舗で働く社員のみなさんはアルバイトに対する人事施策はどう感じているのでしょうか? 定期的にイベントを行うために店舗業務を調整したり、大変な部分もあるかと思います。

なぜアルバイトに対してこれほど多くの施策を行っているのか、という理由は何度も、泥臭く説明して理解を得るようにしていますね。

理解をしてもらう上でいつも話しているのが「CRISP WAY」という3つの行動指針です。2つ目の「笑顔を広げる。」という部分を特に話します。

― どのような話をするのでしょう?

「店舗で直接お客様と接して、笑顔を広げるのはアルバイトのみなさんの役割。そのアルバイトを笑顔にするのが、社員の役割ですよ」という言い方はよくしていますね。全ては「お客様の笑顔」に繋がっているんだよ、ということを理解してもらうようにしています。

アルバイトにも経営理念を理解してもらうことの意味

社員に対する納得感を生み出すためにも、行動指針は大切ですね。

この「CRSIP WAY」はアルバイトにも説明しているんですよ。アルバイトは店舗に入る前に、必ず全員本社で3時間の研修を行うんですね。そこでは、業務マニュアル的な話は一切しないで「クリスプはこういう会社で、経営理念や行動指針はこうで、そもそも経営理念ってこういうもので」というような話をします。

― へえ! 学生からしたら新鮮ですよね。でも、3時間って長くないですか…?

そこは、クイズ形式で話をしたり、ディスカッションを挟んだりして飽きないような工夫はしています。学生からすれば経営のちょっとした勉強にもなるでしょうし、時給は発生しているので「これで時給もらえるならラッキー!」という感覚で参加してくれる人も多いです(笑)。でも、終わった後はみんな満足してくれますし、モチベーションが高い状態で仕事を初めてくれますね。

― アルバイトの人たちからすればこれだけ手厚くサポートしてくれるのは、嬉しいでしょうね。

 人材不足の時代ではありますが、おかげさまでクリスプはアルバイト採用に関しては比較的良好な状態です。アルバイトが率先して自ら友達を誘ってくれることもあります。就職活動でもクリスプでのアルバイト経験が役に立った、という声も聞きます。

― 今後の課題はありますか?

長くいるアルバイトと新しく入ったアルバイトとの、意識のギャップがどうしても出てきてしまうのが課題ですね。「以前の方がこぢんまりとしていてよかった」という声をベテランのアルバイトから聞いたこともあります。長くいてくれる人たちに対するフォローは考えていかないといけないですね。

毎年3月に「パートナー感謝祭」というものを行っているんですね。これは勤続年数に応じてプレゼントをお渡しするもので、1年目、2年目、3年目とそれぞれオリジナルのグッズを用意しています。今年は3年目の人にTシャツをプレゼントしました。

これからさらに店舗を拡大して1,000人、2,000人となっていくとして、新しく入るアルバイトの割合が多くなり、今働いているアルバイトはどんどんマイノリティになる。新しく入ってくる人の気持ち、長く残ってくれている人の気持ち、どちらも大切にしていかなければいけません。そういう先を見据えた考え方を持って、規模を拡大していく必要があるのだと思います。

― 店舗拡大についてお聞かせください。

 今後もますます店舗は拡大していきたいと思っています。そのためにはアルバイトに楽しく働いてもらう一方で、売り上げを伸ばす仕組みも作っていかなければいけません。それは、私含め社員が努力しなければいけないことですね。パートナーが楽しく働きながら、高い生産性を実現できるよう、これからも頑張っていきます。