【1on1】熟練マネージャーが語る3フェイズで進める1on1

LECTURER

トレンドマイクロ株式会社 エンタープライズSE本部 
エンタープライズCSM部 ラインマネージャー
加藤浩一郎氏

実施ポイント

私はマネージャー職について以降、10年近く1on1を続けてきました。その中で、チーム状態によって1on1の目的ややり方も少しずつカスタマイズしています。今回は、どのチーム状態でも共通する1on1の方法を3つのフェイズに分けてお話ししたいと思います。

基本としては、月に1回1時間、必ず会議室(隔離された空間。見えてもいいけど、聞こえないように)で行っています。そして、最終的な1on1の目標は「本人が次に何をしたいか、自ら考え、具体的な行動を移せるようにする」ということのみに置いています。

 

フェイズ1 人となりを理解し合う

目的:立ち上げ直後のチームにおいて、メンバーと自分の人となり、価値観、具体的なスキルや経験を速やかに理解しコミュニケーションの土台を構築

これは、初回のみ、多くても2回目ぐらいまでで行う1on1で、まずはお互いの人となりを理解し合うことからスタートさせます。

ポイントは詳細な業務の話は聞かないで、これまでの職務経歴やスキルなどにフォーカスすること。聞くと言っても自由に喋ってもらうのも難しいので、自分がインタビューする気分で会話を進めていきます。これまでの「武勇伝」を語ってもらうと、場が盛り上がりますし、その人の特性や人となりが見えてきやすいです。

そうして相手の得意なこと、スキルを聞きながら、相手を尊重している旨を伝えます。その人のこれまでのキャリア、スキルを活かして、チームに向かい合ってもらうためです。自分が持っていないスキルや経験をしたことがある人であれば、素直にリスペクトの思いを表現しましょう。

相手が好むようであればプライベートの話も積極的にしても構いません。聞き出したことから、紹介できる案件、場や人があれば軽く話題に出してあげると良いでしょう。

相手にもよりますが、合間に時代感が出るようなエピソードを挟むと会話が円滑に進む場合があります。自分のこれまでの経験からは遠いことをやってきた人だな、と感じる相手でも自らの経験を対岸の景色として語ることで、程よい距離感を作ることができます。

このフェイズを経ないで、いきなり実務的な話ばかりしてしまうと、その人がやりたいこと、好むことを把握する機を逃してしまうこともあります。最初の1on1では、人となりをまず知ることから始めると良いでしょう。

 

フェイズ2 具体的な業務のキャッチアップ

目的:具体的な業務のキャッチアップで支援者としての立場を確立する

2回目以降の1on1では、とにかく業務上の取り組み、課題について具体的な事例を掘り起こしていきます。そして、課題に対する対応策を本人に聞いたり、アイデアをこちらから提供したりします。そうすることで、支援者としての立場を確立していくのです。フェイズ2は長くて3カ月ぐらいで、あまり長く続けないようにしましょう。

この際、課題に対する対応策の引き出しは持っているものはすべて出しておくといいでしょう。可能な限り、これまでの経験から話せる具体的な事例と合わせて見せておきます。

こうした会話を通して、マネージャーをうまく使ってもらう感覚、これまで変えられなかったことを変えられる実感を持ってもらうことが重要です。できるだけ、このフェイズの中で何か実行できそうなアクションを見つけて、実際に次の1on1までに解決してフィードバックすることを目指してください。これは、何よりも最優先して、スピード感を持って取り組みましょう。

 

フェイズ3 今後どうしていきたいか、をじっくり話していく

目的:現在の取り組みを終えた後に何をして、どうなっていきたいかを明確化する

フェイズ3からは、今後のメンバーのキャリア形成、成長の方向性について議題を絞って話をしていきます。私は、日々の業務の進捗などは1on1の場ではなく、別の場で済ませ、1on1では「これから先、どうしていきたいか」についてだけを話すようにしています。

具体的には相手の業務の習熟度に合わせて、課の中の小チーム、課全体、部門、本部レベル、全く別のファンクションレベルと様々な外的な視点からの変化、潮流、イベントをインプットしてきます。例えば、過去にメンバーと同等のスキルを持った人が、どういう部署でどういう活躍をして評価されたか、といったロールモデルを話していくのです。

そうした話を小出しにしながら、表情などの反応、これまでの相手の思考の傾向も含め、どういったインプットが相手の興味を引くか探っていきます。回を重ねるごとに、相手の興味関心のあるインプット精度を高められると良いでしょう。

そして、具体的にアサインできる、あるいは可能性のあるプロジェクトがあったらその話を振って、相手の興味関心の幅を広げながら、気づきを待ちます。

最終的に、本人の口から「次はこういうステップに踏みたい」という意志が表明されれば、1on1の目的は果たせたも同然です。

このように、私はメンバーが自ら「次、こういうことをしたい」と言えるように1on1の場を活用しています。と言っても、このやり方をすぐに編み出したわけではありません。以前は、業務の進捗確認をして、最後に「これからどうしたい?」と聞いていくスタイルをとっていました。でも、それだけをしていてもなかなかメンバーから次に何をやりたいか、という話が出てこなかったんですね。

長期的な目線で考えると、直近の業務進捗よりも今後どうしていきたいか、というキャリアの考え方や成長の方向性の方が大事なはず。そうしたことを自ら考え、選択していけるようになるにはどうすればいいか。そう考え続けた末、この1on1のやり方にたどり着きました。

過去の自分への戒めとして、「次、どうしたい?」とひたすら聞くのは、愚策だと思っています。判断材料が少ない中で、人は次にどうしたいかという考えは持てないものですから。特に規模が大きく、システムがしっかりした会社だと、自らの意思でキャリアを選択するという発想が抜けてしまいがちです。

ですから、私はフェイズ3からは特に期限は設けていません。メンバーから「次、こうしたい」と話してもらうのを、インプットしながら待ち続けています。回ごとの連続性は特に重視していないので、議事録も特に取っていません。1年、長くて2年かかる時もありますが、1on1を続ける中でほとんどの人が自らの意思で次に何をやりたいかを話してくれました。その結果、これまでのメンバーの中には、違う部署へ移って活躍してキャリアアップした人もいます。

ずっと続けていると「インプットをいっぱいしているのに、なかなか自分の意思を語ってくれない」と歯がゆい思いをする人も出てくるかもしれません。でも、じっと待ってください。私が常に心の中に留めているのは「押してダメなら引いてみな。聞いてダメなら、アイデア、事例、機会を出してみな」です。

ABOUT COMPANY企業情報

トレンドマイクロ株式会社

主な事業:コンピュータ及びインターネット用セキュリティ関連製品・サービスの開発・販売
設立年月日:1989年10月24日
従業員数:5,970名

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