概要
サイバーエージェントでは、チャレンジをしたい人に多くの機会を提供するためにキャリア機会の提供を目的とした制度を複数取り入れています。
1つ目が、社内ヘッドハンター制度。
これは、どこの部署にも属さない社内専門のヘッドハンターがおり、フラットな視点で、社内部署間の異動をサポートする制度です。現在(2018年10月)3人ほどヘッドハンターがいます。
この制度を活用して、毎年150~200件程度の異動が実現しています。
2つ目が、キャリアチャレンジ制度です。
新たなキャリアに挑戦したい人を社内公募するもので、毎年120件ほど応募があり、約50%の60件の異動が実現しています。
社内公募は「キャリバー」という社内向けの求人情報サイトを使って行っています。キャリバーには各部署のメンバーの写真やどのような仕事をしていて、どんな人が欲しいか、といった情報が記載されています。その情報を見ながら、異動したい部署があれば、キャリアチャレンジ制度を使って、自ら手を上げて異動希望を提出します。
このキャリバーは社内ヘッドハンターが異動を支援するときにも活用しています。
3つ目が、FA制度。
これは、エンジニア向けに用意された制度で、2年に1回FA権を行使して、異動ができるというものですFA権の行使タイミングがきたら、人事部から連絡が入るようになっています。
FA制度に関しては本人の意見を重視しています。ポジション的に異動しづらい人も中にはいますので、そうした人たちをサポートする制度です。数ヶ月に1~2件ほど異動が実現しています。
実施ポイント
1.個人のプラスと会社のプラスの両立で考える
社内ヘッドハンターが異動を勧めるのは、個人にとっても、会社の業績にとってもプラスになる場合のみです。どちらか一方のメリットだけのために異動を支援することはありません。キャリアチャレンジ制度を承認する際も同じ考え方です。
ポイントは“部署単位のプラス”ではなく、会社全体のプラスになるかどうかで判断することです。部署単位で考えてしまうと、デメリットが生じる部署が出た場合に不公平だという感情がどうしても芽生えてしまいます。そこで「会社全体にとってのプラスなんだ」と説明できれば、短期的にマイナスが生じる異動元にも納得してもらいやすくなります。
2.事業部役員にコンセンサスを取る
異動については事業部役員に事前にコンセンサスを取るようにしています。
特にマネージャークラスの異動は多くの人間が関わります。関係者への説明を行う際に、役員の承認が降りているかどうか、で話しやすさもずいぶん変わるので。
3.リーダーが抜けることを怖がらない
各種のキャリア支援制度では、マネージャー層の異動も起きます。
「チームメンバーへの影響は大丈夫なのか?」と心配する人もいるかと思いますが、13年以上これらのキャリア支援制度を運用してきた経験で申し上げるとほとんどのケースで「問題ない」と考えています。
マネージャーが異動するということは、他のメンバーにマネージャーになるチャンスが回ってくることに繋がります。新しいマネージャーが奮起して、業績が伸びることも少なくありません。
実際、私が営業責任者から人事本部長になる時に「私が抜けて、業績が落ちるんじゃないか」とすごく不安に感じていたのですが、蓋を開けてみたら新しい責任者のもとで業績が伸びたんです。
もちろん、致命的な異動になりそうと判断される場合は、半年先に延ばす、といったこともあります。
それから、抜けた部署にはヘッドハンターをつけて、新しいマネージャーを入れるか場合はそのサポートをすることもあります。サイバーエージェントは各種制度により人材が常に動いているので、抜けたチームに他のマネージャーを配置する、といったことも柔軟に対応できます。だから、社内の人材は常に動いている状態を作れるのが理想だと思います。
こうした制度を取り入れた初期の頃は調整に苦労するかもしれませんが、長年続けていけば、常に社内で人が流れている状態が生まれるので、継続することも大切でしょう。
効果、成果
異動で人が抜けた部署の業績が伸びる、ということはこの十数年の中でよく目にしてきました。個人の働きがいにもつながり、会社の業績にもつながるキャリア支援制度を運用できれば、組織力を高めることにつながると思います。